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匿名により5年、 10ヶ月前に更新されました。
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匿名
無効「Entrá nomás」(さあ 入れよ)
Letra : Francisco Bastardi (1883-1976)
Música : Juan Rezzano (1895-1979)さあ入れよ せっかく帰って来たんだから
ここで何も気を遣うことは無いさ
何も変わってないだろう
みんな以前(もと)のとおりだよ
そうだろう たくさんの夢の後から
お前が飛んで出て行ったときに
再たお前に会いたいと願う
心を二つ残して行ったんだよ俺の優しいお袋はなあ
いつもお前のことを尋ねていたよ
お前をとても懐かしがって
どうしてここに居ないんだって
俺は お袋を騙して
お前が居ないのは 体の具合が悪くて
俺から離れて居るんだと言ったもんだそうなんだ お前は夢に駆られて
もっと自由になりたくて そんな
夢を追う暮らしをしたんだ
だけど やっと賢い世間に教えられて
再たお前は現実に世の中に戻って来たんだ
さあ入れよ せっかく帰って来たんだから
見たところ 判ったようだな
家庭(いえ)の暮らしほど良いものはないってことが
安心しろよ 俺の胸に住処を造ったら良い
そして同じ屋根の下で
再た二人で夢が見られる邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Entre copa y copa」(酔いの合間に)
Letra : Héctor Marcó (1906-87)
Música : Ángel D’Agostino (1900-91) + Alfredo Attadía (1914-82)俺は根っから踊り好き
年季は*ホポの時代から
派手な踵の靴を履き
通りすがりの女には
甘いお世辞を投げかける俺は根っから踊り好き
ナイフのように魅力的
サロンに足を踏み入れるとき
輝いて見える仲間の中で好きなミロンガの音(ね)に任せ
俺はこうして日を暮らす
酔いの合間に踊りつつ女よお前の黒い肌
お前の唇(くち)の火のような
お前と心を通わすと
俺のこの身は焦がされる*jopo:1900年代初期の男性のヘア・スタイルのひとつ。前髪を垂らす。
邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Entre curdas」 (酔いどれ仲間)
Letra : Aldo Queirolo (1926-75)
Música : Roberto Morel (1906-91) + Carlos Mayel (1913-84)
(各節の番号は便宜上訳者が付けたもの)
1
昨夜は居酒屋*0“ラ・マロマ”は休み
名うての飲んべえのカルモナが
死んでお通夜が開かれた
貧しい長屋の貧しい通夜に
年金暮らしの酔いどれたちが
棺桶撫でつつ別れの涙
安いワインをがぶ飲みしながら
2
蝿が一匹入って来ていて
知らぬ顔して飛んでいたのが
仏の鼻にとまろうとした
それに気付いたロカタリアタ
悪い野郎で痩せこけた
仏の鼻の蝿を見て
ぴしゃりとやったものだから
カルモナ(ほとけ)も棺桶(おけ)もびっくり仰天
3
しかし棺桶(おけ)には何事も無く
涙を浮かべた*1グラピーニが
仏の近くの椅子に腰掛け
祈りの言葉を捧げてた
その傍らで*2バタラスが
何かを話しかけようとした
一方で肝の座った*3マメルトは
先の尖った短刀で
バタラスを串刺しにしたいと思ってた
悪い目つきで見られたので
4
そして床屋の*4カルベテは
仏の顔の髭を見て
己(おのれ)の生業(なりわい)思い出し
仏の前髪近くまで
すっかり剃ってやりました
そこへ*5フィルレテ顔を出す
どこかのドンちゃん騒ぎから
バンドネオンを小脇に抱え
連れの女(こ)たちは安価(やす)っぽそう
酔いどれ仲間と女たちとで
その場は華やぐ*6.ミロンガに
5
踊りの好きなレネときたら
酔っ払いだと間違えて
コーヒーを出してやろうとし
仏をすっかり驚かす
メレナと*7ヤカレはトランプの賭け
そして間抜けなベンベヌートは
ここの長屋の管理人
長いシャツ着て困り果て
*8 32番地へ駆け込んだ
たちまちこの場に現れた
お巡りさんは警察(さつ)の車に
酔いどれたちを送り込む
ガラビートと*9チチャロンは
ワインのお陰で正体が無く
新米のお巡りさんは仕方なく
証言させる必要があり
仏を逮捕連行した
邦訳:大澤 寛
*0.Maroma : maroma馬鹿騒ぎ、大騒動
*1.Grapini : 強い蒸留酒grapaからgrapino/aという形容詞“常習的な酒飲みの”を名詞化。
*2.Bataraz : 古い1ペソ紙幣batarazから。
*3.Mamerto : 形容詞mamerto/a うすのろな、馬鹿な
*4.Calvete : calvete禿げの、髪の薄い
*5.Firulete : firulete 余計なもの・人、余分な飾り、おまけ、ぐずぐずした言い回し
*6.このミロンガは“踊る場所”
*7.Yacaré : yacaré わに
*8.近くの交番の番地? *9.Chicharrón : chicharron 豚の臓物、もつ焼き匿名
無効「Esta noche de copas」(盃を重ねる今宵)(1958)
Letra : José María Contursi (1922-72)
Música : Juan Carlos Howard (1912-86)
盃(グラス)を重ねる今宵は 仲間(とも)よ
俺は泣き出したくなるのだよ
俺の悩みに咬みついて
この場で俺を傷(いた)ぶるタンゴ
アルコールでは逃げられぬ
あの娘(こ)の瞳(め)からも 孤独(さびしさ)からも
盃を重ねる今宵は 仲間よ
泣き出したくて ぼんやりしている俺を咎めているのだよ
過ぎてしまった物事と
門辺で俺に憐れみ請うた
あの娘の声が一緒になって
俺は知らなかったのだ
歳月(とし)が流れて過ぎた後も
俺の過ちに気が付く術(すべ)を
そして今 俺はあの娘が懐かしい
この上もなく懐かしい
誓うぜ
俺は あの娘を探しに行くのだ
狂ったもののようになって
少しずつ* わが身をすり減らしながら *de a poco : (中南米)=poco a poco, lentamente少しずつ・ゆっくりと
あの娘に巡り会うまでは仲間(きみ)たちの夜を 苦いものにしたくはない
だけど 何もかもが俺より強い
何百本の短剣が 俺の愛*と心の傷を *sentimiento : (複数形で)愛情・恋心
切り裂くのだ
あの娘は 俺の暮らしに安らぎをくれた
あの娘の愛は どれほど沢山の物事を俺に教えてくれたことか
あの娘の傍に戻れたら
その瞳に口付けが出来たら
許しを請うことが出来たらと思う 邦訳:大澤 寛匿名
無効「Esta noche me emborracho」(今宵我れ酔い痴れて)
Letra y música : Enrique Santos Discépolo (1901-51)
(“今宵我れ酔い痴れて”というこのタイトルもまた先人の名訳のひとつ)
夜明けにあいつがキャバレーを出てくるのを見かけたぜ
独りで 疲れ果てて 傷ついて
喉の下には痩せ細ったうなじと
しゃれたドレスの襟ぐりが見えたよ
足を引き摺って 小娘みたいに髪を染めて
身体の線に媚びるような衣装(ふく)を着やがって
使い古した革のジャケットを
格好つけて見せびらかしてるのは
羽をむしられた雄鶏みたいに見えたぜ
あんなあいつを見るに忍びなくて
俺は逃げたんだ 泣くといけねえからな考えてみると10年前のあいつが 俺を狂わせる女だった
俺が人を裏切りさえするほど あいつは綺麗だった
今はぼろぼろになっちまってるけど
俺の誇りを捨てさせるほどの 甘い関係だったんだ
あいつに眼が眩んで 年寄りの女からパンを奪うこともした
俺は 卑しいたかり屋になり下がったんだ
あいつがいなくなったときは 俺には一人の友達も無く
膝まづいて物乞いをするような
意気地の無いひどい暮らしをしたもんだ
夢にも思わなかったぜ あいつに
“安らかに眠れよ”と言いたくなるような
残酷な出会いが今日あるなんて
聞いてくれよ 自殺するのでないのなら
そんな馬鹿げたことのために この俺が生きてるなんて
年月はひどい落とし前をつけるもんだ
愛した相手のうらぶれた姿を見せるなんて今日あいつを見たのは 俺にはかなり堪えたんだ
これ以上考えると 毒に当てられて死んじまうぜ
今夜は 俺はしっかり酔っ払うんだ
呑むぜ しっかり呑むんだ 物を考えないようになる 邦訳:大澤 寛匿名
無効「Esta noche」(今夜)
Letra : Lito Bayardo (1905-86)
Música : Carlos Marcucchi (1903-57)今夜
それもいうなら真夜中になったら
仲間たちよ 俺は 俺の心の悲しみを祝おう
杯を挙げよう
あの世にも美しい瞳の持ち主に 俺の人生に 俺の夢に
愛の無い暮らしという考えを埋め殺したいから俺はあいつを思い出したくない
もう俺は全てを失くしたのに
あいつを想って泣くことがあるんだ
このことはもう何度も言ったが
そのたびに 俺を罰するかのように
俺の前にあいつは現れる
そして暗闇の奥から俺を見て 俺を打ちのめす
俺の心の奥ではあいつを求めているのだから
どうすれば良いかなあ 仲間たちよ
俺があいつを忘れられずに しかも俺の人生から
あいつを放り出すには何年もの間 あいつを愛して あいつの傍に居たが
あいつを失うのにはわずかな時間しか要らなかった
俺にはもう 一滴の愛の涙も無い
仲間たちよ 君たちは証人なのだ
今夜俺が 愛の無い暮らしを酒に葬りに来ることの邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Estrella」(エストレージャ 女性の名前)
Letra y música : Roberto Cassinelli (1921-95)+ Cholo Hernández (1923-?)
貧しい街区(まち)の 町角の
玄関の付いた或る家に
その頃住んでた女の子
皆が噂をしたものだ
来る夜も来る夜も その女の子
街区(まち)を離れて 出て行って
ブロンズ色の朝やけが
眠りと仕事を混ぜる頃
戻って来ていたものだったあの女の子
皆が噂をしたものだ
いつも夜明けに帰って来るのを
皆は見かけたものだから
あの女の子
眼差しの 青い甘さの中に
苦い詩(ポエム)を秘(ひそ)めていた
エストレージャ 希望と忘却の
嘘とシャンパンの匂いをさせた
夜明けの空の下
エストレージャ
噂をした人たちは 誰もが皆
或る夜 あの子を思って泣いた
あの玄関のある家でその時になって あの子のことを良く思い
同情する気持ちに包まれた
“あんな子” にした人生に
理由(わけ)を見つけることまでも
そして皆は 多かれ少なかれ打ち明けた
間違えて居たかも知れないと
そして 何時ものように街区(まち)全体が
その時になって 噂を止めた
邦訳:大澤 寛匿名
無効「Fangal」(泥濘(ぬかるみ))
E.S.Discépolo が中断した詩・曲をHomero & Virgilio Expósito 兄弟が補作・完成したあの女が沼地の縁を 変な角度でよろけながら
よろけながらやって来るのを見た
床は煉瓦で貯水槽があり伸びた葡萄のつるがからまる
安アパートで生まれた哀れな女
誰かが女にバナナを投げ 仕方なく女は罠に掛かった
あの女がやって来るの見たその時
俺は床に寝転がって女を捕まえた俺は馬鹿者だった
それが自慢になることだと思い込んだのだ
トマトを花だと思い込んだ馬鹿者
そして今も馬鹿者だ
あの女の愛を救ったと思うほどの
あの女こそが俺の悩みを
一撃で打ち砕いてくれたのだから
ご覧の通り もう俺は
見捨てられて泥のような暮らしに戻った
何ということだ!
嘘でも良いから俺があの女を救ったのだと
言ってくれたらなあ名もない男がこう言った
哀れな女はもがいていた
とっくに泥沼に埋もれてもがいていた
男はバーのテーブルで
二日酔いと貧乏暮らしの合間に
ひどく強いジンを飲んでいた
誰かがバナナを投げても 馬鹿な男は撥ねつけた
そしてあの女がやってくるのを見た途端
男は床に転がって女にしがみついた邦訳:大澤 寛
Fangal(資料)
(E.S.Discépolo が中断した詩・曲をHomero + Virgilio Expósito 兄弟が補作・完成した)
fangal/fangar : ぬかるみ・泥地
escuadra : 1.定規・直角定規 falsa escuadra 角度定規
ladearse :1.体を曲げる・反らす、傾く 2.よける・身をかわす
aljibe: 1.給水用タンク・貯水槽=cisterna 3. (ラ米)井戸・泉
parral : 葡萄棚、延びた葡萄のつる
pisar la banana : (l.p.) caer en una trampa que se le ha tendido
decúbito : (医)平臥、臥位
dorsal : 背部の・背中の、裏の
gil : (lunfa.))tonto / ingenuo / otario (esp.) gilí = jilí 馬鹿・頓馬
tomate : (l.p.) metáf. por “cabeza” ここは素直に野菜のトマト
trompadas : 衝突・打撃・鉢合わせ
mugre : 垢・襟垢・汚れ
tirado : (l.p.) pobre, sin medios, sin recursos, abandonado
engrupir : (l) engañar, mentir
cusifai : (l.p.) coso, tipo, sujeto innominado
retozar : 1.(子供などが)戯れる・はしゃぎ回る 2.(男女が)いちゃつく
malandra : (l.p.) 1.maleante, delincuente 2.persona de mal vivir
prenderse : (l.p.) 1.tomar parte en algo, decidida y entusiastamente
2.abrazar una causa con convencimiento y disposición
3.aferrarse(しがみつく・固執する・執着する) a una idea, un sentimiento o a una persona
4.darse a algo (没頭する・溺れる・耽る)匿名
無効「Farol」 (街灯)
Letra : Homero Expósito (1918-87) Música : Virgilio Expósito (1924-97)お銭(かね)の苦労を抱える家が
沢山ある下町に
タンゴみたいに歌われる伝説がある
人情味のある下町の
そこでは遠くから時計が
午前(あさ)の2時を告げる
働きに出る者たちの下町
街灯が一つと想い出が詰まった町角街灯よ
今は 沢山の物が見える
街灯よ
もう昔と同じではなくなった
影が
お前に見られるのを避けて
俺の住む短い通り*の半分を *cortada = calle corta y generalmente angosta (短くて大抵は狭い通り)
余計にもの悲しいものにする
お前の灯りは
タンゴをポケットに入れて
光りと輝きを失くして行った
そして今は十字架になったその下町には
夥しい数の働く者たちの夢を詰めた空が
残っている
そこでは風がカリエゴ*の親しみやすい詩を *下記注参照
口ずさんでいる
そして遠くで時計が 午前(あさ)の2時を告げる時
下町は 街灯に繰り返し語りかけながら 眠る街灯よ と
邦訳:大澤 寛
(注)
カリエゴ:Evaristo Carriego (1883-1912)
詩人。タンゴの作詞はひとつもしなかったが、下町の日常生活を描く詩の創始者としてタンゴの歴史の中に地歩を築いている。
この意味で、1930年に彼の伝記を書いたボルヘス(Jorge Luis Borges)の指摘によれば、“ブエノスアイレスの貧しい下町を観察する第一人者、即ち発見者・発明者”であった。カリエゴは1908年に“異端のミサ”(Misas herejes)を発表、そして死後1年経ってバルセローナで発見された“下町の歌”(Canción del barrio)がある。カリエゴの作品は多くのタンゴの作詞家たちに影響を与えたが、中でもオメロ・マンシ(Homero Manzi 1907-1951)に対しては、マンシが作詞したタンゴ“Viejo ciego”(盲目の老人)や“El último organito”(最後のオルガニート)が、この道の先輩カリエゴに直接捧げる形の献辞であることに見られるとおり、特別なものがある。(Horacio Salas “El tango, una guía definitiva” p-63 より)匿名
無効「Fayuto」(裏切り者)
Letra y música : Rafael Ventura (1899-1965)裏切り者! 言い訳を持って来るなよ
知ってるぞ お前が どうやって偉くなったか
喋りまくって 潜り込む場所を見つけたんだな
そして お前を大事にしてくれる仲間を騙したな
裏切り者! お前は 運のいい裏切り者だ
裏切り者! お前がしたことを思い出すと
裏切り者! 俺の胸の中で 何かが叫び出す
お前は 名前を隠して卑劣なことをした
俺は決して忘れはしないあの娘の愛のためなら 俺は命を投げ出す気でいた
あの娘の愛は 俺の傷を癒してくれた
それなのにお前は 陰に隠れて
お前に何でもしてやろうとしていた男を
理由もなしに騙したな
俺はお前を 仲間として大事にしていた
俺は 考えもしなかったな
苦しみから守ってやる振りをして
お前が 俺のあの娘に向かって
俺は刑務所(ムショ)の匂いのする腐った身体(からだ)だと言おうとは裏切り者! お前は 名を名乗らない裏切り者だ
裏切り者! 自分は男だと意気込んでるが
女にもなれない!
女は毒を撒き散らしても 少なくとも女だということで許される
お前は最低だ!
口が達者で 卑怯な
ひょっとして何時か死ぬときでも
裏切り者! 息が絶えるまで お前は嘘をつく
男の誇りで運命と勝負はしないのだから邦訳:大澤 寛
Derecho : (中南米)幸運な・幸せな・嬉しい
Canallada : 下劣な・恥ずべき行為、ならず者の仕業、いたずら a: canallasco / a
Bálsamo : 2) 慰め
Agazaparse : (隠れるために)かがむ、潜む、隠れる
Resabio : 1)悪癖・悪習、2)(不快な・嫌な)後味匿名
無効「Flor de Lino」 (亜麻の花)1946
Letra : Homero Expósito (1918-87) Música : Héctor Stamponi (1916-97)あの娘(こ)は 私の唇付けを待ちながら
空しく 夜を摘み取っていた
だけど私は 匂い立つ大地の
大きな唇付けを夢見ていた
亜麻の花よ* *恋人を亜麻の花=Flor de Lino と呼んでいるもの
何と不思議な運命が
亜麻の花咲く道を塞いだ* *truncar = (一部を)削除する、挫折させる、切り取る・刈り取る
あの娘は あの小道で私を待ちながら
夜を摘み取っていた
とても恥ずかしそうに
新しい服を着た子供のように
どんなに 物事が過ぎて行ったことか
そんな物事が それでも今 執拗(しつこ)く
私の孤独の夜に戻って来る私は あの娘が花開くのを見た
太陽の恵みのアルゼンチンの野原の亜麻のように
もしあの娘の気持ちが判っていたら
私の小屋*は愛に満ちていただろう *rancho = (ラ米)粗末な・質素な家、貧民街
私は あの娘が花開くのを見た だけど或る日
私からあの娘を連れ去った黒い*足跡 *mandinga = (ラ米)黒人の、 悪魔・いたずらっ子、老練な・老獪な・
亜麻の花は去(い)ってしまった ずるい人間
そして今 野原は花盛り
何たることだ!* 俺にはあの娘の愛が無い *malhaya = くそ! こん畜生!木の扉がある そこを通って思い出が
家*に戻って来る *querencia = (文語)家・故郷
あの娘を愛することをしなかった後悔が
いつもその扉を開けているから
亜麻の花よ
あの星に お前が見える
私の孤独の足跡を
照らしてくれる星にあの娘は 私を待ちながら 夜を摘み取っていた
私が今 あの娘を待つように
あの娘は 沢山の希望を持って
貧しいガウチョが 村に辿り着くように
もう居ない花よ お前の思い出は
それでもなお 執拗(しつこ)く追いかけて来る
私の孤独の夜を邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Flores del alma」 (心の花)
Letra : Lito Bayardo (1905-86) + Alfredo Lucero (n/d)
Música :Juan Larenza (1911-80)幸運が微笑んだ夜の想い出が
俺の心に 再た花を咲かせる
時が流れて 消えた想い出が
もう一度蘇る様な気がする
遠い昔の あの夜と同じように
これが俺の 苦い孤独なのだ
青い月が 空から私を照らす
もう俺が決して会うことの無い もう一つの白い月のように“私を忘れたいのなら 放っておいて”
別れの朝に お前は言った
“判ってるでしょう あなたが好きだし これからもそうだわ
あなたにあげた私の愛は あなたのものよ
あなたの他に誰もこんなには愛さなかったわ
愛の心をあなたにあげたの
判ってるわ 私の心が もうずっとあなたを失くしたことを
何もかもが ちょっとした夢だったんだから”こんな風に お前は俺を責めたものだ
俺がずっと お前の悩みが判っていたのも知らずに
そうだな お前が俺に愛をくれたとき
俺は別の愛に魅かれていたのだ
お前も今なら判るだろう? 何故俺が別れなければいけなかったかを
判るだろう? 俺の 別れの苦しさが
時が経って お前はひょっとしたら俺を忘れたかも知れない
だけど 俺は違う 決して!邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Frente a una copa」 (グラスを前に)
Letra : Elías Santiago Wainer (n/d) Música : Francisco Amor (1906-72)朝から晩まで飲みながら
世を過ごしているこの俺は
操り人形と同じこと
俺の理性(こころ)を蝕んで
殺してしまう酒を前にして
消えることない苦しみに疲れ
忘れたいとの思いが募る
来る日も来る日もこの俺を
馬鹿げたことに誘い込む
あの暗い影を忘れたい俺の哀れな親たちは
子供の俺を金に酔わせ*
若い日の俺は唄と踊りの
夢に酔わされ
死ぬほど惚れた女から
歓びに酔わされた
そして今その女を失った思いに
酒でも癒せぬ心の傷が拡がる
*luz (ル)お金、 ポーカーなどの賭け金・賭け札
人は言う どうして悲しむのかと
俺から逃げようが俺を助けに来ようが
あんな不実な女に構わなければ
人生は楽しくてどうでもいいものだと*
グラスを前に時々ぼんやりしていると
再たあの女の瞳が見える
唇には変わらぬ微笑みも
そんなものたちをガラスに投げつけ粉々にすれば
あの女の幻も消え去ってゆく
*corto (ル)= cortina 少ないこと・取るに足りないこと邦訳:大澤 寛
匿名
無効「Frente al mar」 (海に向かって)
Letra : Rodolfo Taboada (1914-87) Música : Mariano Mores (1918-2016)海に向かい
神に向かって
夜と苦しみに濡れて
俺の声は
最後の別れに震える海に向かい
神に向かって
俺はお前に頼むのだ
これだけは言ってくれ 何故俺を咎めるのか海に向かい
神に向かって
俺は訊ねるのだ もしかして与えることは罪なのか
与え続けることは 愛することの他は求めずに判らない
何が起きたのか
判らない
何故 愛の灯りが消えたのかただ判るのは
お前が去(い)ってしまうこと
そして風が お前の替わりに
叫ぶようだ “もう決して”*1 と *1nunca más : 将来(繰り返して)起きそうなことへの極めて強い否定の表現判らない
何が起きたのか
判らない
何故 愛の灯りが消えたのかただ判るのは
お前が去(い)ってしまうこと
そして風が お前の替わりに
叫ぶようだ “もう決して” と判ったぜ
判ったぜ もう決して*2 *2 : ここは“もう決して会わない・愛さない”と言うことだと判ったの意
もう決して邦訳:大澤 寛
Empapar : 1.~をーに浸す・浸み込ませる empapar la gasa de/en alcohol
2. ずぶ濡れにする La lluvia empapó sus vestidos.
3 拭き取る empapar el agua del suelo con trapo
Empaparse : 1. 浸み込む・ずぶ濡れになる La tierra se empapa de agua.
2. ~に詳しい・傾倒している José se empapa en marxismo.匿名
無効「Fuelle」 (蛇腹=バンドネオン)
Letra : Homero Manzi (1907-51) Música : Charlo (1906-90)あの娘(こ)が来た時 お前は笑い
あの娘が去(い)ったら お前は泣いた
お前の指のボタン*1の中に *1 teclado : ピアノなら“鍵盤”。バンドネオンの指で押すボタン
まるで隠れているように
なあ 俺の兄弟 バンドネオンよ
俺の命が全部あるお前の感情(こころ)の欠片(かけら)と一緒(とも)に
暗い炎が隠れてる
あの娘の不在と
俺の愛の 暗い炎が
あの娘(こ)が来た時 お前は笑い
あの娘が去(い)ったら お前は泣いたバンドネオンよ*2 *2 fuelle :ふいご、(カメラ・かばん・車両の連結部などの)蛇腹、バンドネオン
悲しみをばら撒かないでくれよ
バンドネオンよ
お前の嘆きは俺を苦しめるから
さあ さあ
分別を失くしちゃいけないよ
さあ さあ
もうすっかり判ってるのだから
どうしようも無いってことがさ
あの娘はもう居ないんだ 俺たちの傍には
お前と俺は置いて行かれたのさ
消えた想い出の片隅に
バンドネオンよ
悲しみをばら撒かないでくれよ
さあ さあ
忘れようぜあの娘が来た時は 水晶みたいで
あの娘が去って お前の声に恨みが籠もる
俺はお前の箱(ケース)のなかに
不実なあの娘を閉じ込めた
そして お前の青い膝掛けを
棺を覆う布にした
これがそのカードの城の物語さ
お前の心地よい調べに合わせて作った城の
バンドネオンよ
あの娘が来た時は 愛の結晶(かたまり)みたいで
あの娘が去ったら お前の声に恨みが籠もる邦訳:大澤 寛
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