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大澤寛のタンゴ訳詞集

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    この欄はNTA会員の大澤寛が翻訳したタンゴの歌詞集です。

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    「A la luz del candil」 (街灯(ランプ)の灯影で)(1927)
    Letra : Julio Navarrine Letra : Carlos Vicente Geroni Flores
    失礼しやす 署長さん
    ひでえ恰好でやって来やして
    あっしは他所(よそ)もんで ロサリオに流れ着いたんでさあ
    紐で縛って 大変なものを持っておりやす
    ひょっとして署長さん あっしをずるい奴だと思ってやしませんか
    あっしは 根っからのガウチョでさあ
    酔っ払いでも 悪党でもありやせん
    署長さん あっしは罪人なんでさあ

    お巡査(まわり)さん あっしを捕まえて
    縄をかけてくだせえ
    あっしは罪人でも
    神さまには許して貰えるでやんしょう

    あっしは善良(おとな)しいクリオージョ*でやんした            * criollo:中南米生まれのヨーロッパ人
    名前はアルベルト・アレーナスと言いやす
    署長さん あいつらはあっしを裏切りやがったんでさあ
    そんであっしは 二人とも殺っちまったんだ
    あっしの女(すけ)は尻軽で
    友達(だちこう)はしみったれた野郎だった
    あっしが他所へ行ってた時に
    あの不実な女があっしを馬鹿(こけ)にしやがった
    その証拠は 
    その証拠は袋に詰めて持って来やした
    女の髪の毛と 男の心臓を

    待ってくだせえ お巡査(まわり)さん あっしは暴れたりしねえから
    世間(みんな)に本当のことを知って貰いてえんだ
    その夜は暗かった 狼の喉の中みてえに
    見てたのは ただひとつ 街灯(ランプ)の光だけでやんした
    全部が 殆んど何も無しに ただ暗い中で抱き合ってやがった
    後はその二人が倒れて あっしが舌打ちをして
    そんで 署長さん 驚かないでくだせえ
    あっしのナイフの先に 死体が二つあったんでさあ
    お巡査(まわり)さん あっしを捕まえて
    縄をかけてくだせえ
    あっしは罪人でも
    神さまには許して貰えるでやんしょう

    邦訳:大澤 寛

     この歌詞には言葉の “d” の音を脱落させている箇所がある。話者=主人公のやくざ風というか都会的教養の低さを表す表現。 順に挙げれば entrazao = entrazado, entripao = entripado, boca’e lobo = boca de lobo
    さらに bueno を gueno としている。  印刷時にウムラウト記号を付ける

    entrazado = trazado (チリ、アルゼンチンで)
    traza = 2.容貌・外観、  様子・気配
             con bien o mal se aplica a la persona de buena o mala traza
    entripado : (ラ米)= (ぐっと堪えた)怒り・憤怒、 隠しごと
    entripar(ラ米)= 怒らせる・不快にさせる
    matrero : 1.ずるい・抜け目の無い・悪賢い  2.(ラ米)逃走中の、 放浪の
    a carta cabal = 完全に・完全な、完璧に・完璧な
               un hombre honrado a carta cabal 根っからの正直者
    cuatrero : 1.馬・牛泥棒  2.(ラ米)悪党、 出鱈目をいう人間、  裏切りの・不実な
    sotreta = m y f 1.老馬・駄馬  2.老いぼれ、 ろくでなし、役立たず
    retobarse = 反抗する、 文句を言う、 強情を張る
    facón : (ガウチョが携行する)短刀・匕首

    匿名
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    「A media luz」 (薄明りで)(1925)
    Letra : Carlos César Lenzi Música : Edgardo Donato

    コリエンテス街の348番よ
    2階なの エレベーターがあって       2階は普通は3階のことを指す 1階がplanta baja 2階がprimer piso
    門番は居ないし お隣も居ないの
    部屋の中は カクテルと恋
    マプレで揃えた調度品                       Maple はブエノスアイレスの高級百貨店の名前
    ピアノ ドアマットにナイトテーブル
    電話は すぐ取れるわ
    蓄音器は 私の華やかだった頃の
    古いタンゴを泣いて聴かせてくれる
    猫が置いてあるけど 磁器(やきもの)なの
    恋の時に鳴いたりしないようにね

    何もかも 薄明りの中に
    恋は魔術師なんだから
    唇付けは薄明りの中で
    二人とも 薄明りの中に
    何もかも 薄明りの中に
    夕暮れの 部屋の中の
    とても柔らかなビロード
    薄明りの中の恋

    フンカル局の1224番よ 気楽に電話してね
    午後なら お茶とケーキね                              masa (南米で)小さいケーキ
    夜は タンゴと歌よ
    日曜日には お茶とダンスで
    月曜日は 散らかしてるの
    小さな部屋に何でもあるわ
    大きなクッションも 長椅子(カウチ)も
    何でもあるわ コカインもよ!      Hay de todo como en botica あらゆるものが揃っている   cocó はコカイン
    絨毯(じゅうたん)は音を立てないし
    恋の食事も出来ている          poner mesa “食卓の準備をする”  mesa puesta で“準備が出来ている”

    何もかも 薄明りの中に
    恋は魔術師なんだから
    唇付けは薄明りの中で
    二人とも 薄明りの中に
    何もかも 薄明りの中に
    夕暮れの部屋の中の
    とても柔らかなビロード
    薄明りの中の恋

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「A mis manos」(俺の両手に)(1955) (ミロンガ)
    Letra : Julio Camilloni                   Música : Alfredo Gobbi

    盲いて(めし)生まれた俺の手は 狂える夢をあやしつつ
    その手で天に触れるのは 果たせぬことと知りもせず
    俺には開くことの無い 開かぬ扉を打ち叩く
    既にあの娘(こ)は遠く去り 俺は盲いた物貰い

    俺の両手はふたつの炎 そして只管(ひたすら)燃え尽きた
    あの娘は氷の立ち像(すがた) そのつれなさに俺の手は
    打ちひしがれた俺の手は ただ思い出に縋り付き
    水気失くして石のよう

    哀れ盲いた俺の手の 思い違いの数々よ
    一人の友の両の手に 我が手預けて胸騒ぎ
    悪い予感は当たるもの 俺の不実な両の手は
    拳(こぶし)握れば鉄のよう 鉄の拳が向かうのは
    遠いあの娘の顔でなく 拳は俺に打ちかかる

    哀れ盲いた俺の手の 思い違いの数々よ
    不幸に仕える兵卒の 俺には黒い喪の腕輪
    母に去られた俺の手よ 母を留めることをせず
    俺の両手の過ちの 最たるものはこれなのだ
    見す見す母を去らせつつ その過ちにいつまでも
    気付くことなどありもせず
    哀れ盲いた俺の手の 思い違いの数々よ

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「A su memoria」 (あなたの想い出に)(1931)
    Letra : Homero Manzi Música : Antonio Sureda

    今日 想い出の中から戻って来ますね 母さん
    過去(むかし)の薄暗がりに包まれて
    私が 楽しい時間の中に忘れかけていた日々の
    懐かしさを連れて

    そして あなたの愛が もう失くしたあなたの愛が
    裏切りの無い 只一つの愛だと知って
    私の挫けた心は あなたを思って泣くのです
    忘却の彼方に あなたの許しの言葉を
    探すのです

    私が犯した過ちの
    悲しい沈黙の中に
    あなたの歌声が響きます
    あなたの足音が聞こえます
    そして私は あなたが
    か弱い 優しいあなたが
    私の孤独の苦しさを癒そうと
    戻って来るのを感じます

    そして不思議な奇跡が起きて
    子供になった私は
    生きているあなたの愛を
    取り戻すのです
    あなたの髪の匂い
    瞳の輝き
    あなたの慰めの暖かさ
    呟く声

    来て下さい いつも 来て下さい
    私の不幸を慰めに
    私が行き詰まって 光りを求めるとき
    私の心が 強くあなたを呼ぶとき
    あなたが来てくれるのが判ります
    祝福の手を差し伸べて
    穏やかな唇付けの中に
    許しを籠めて
    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Al pie de la Santa Cruz」 (1933) (十字架に膝まづいて)
    Letra : Mario Batistella Música : Enrique Delfino

    ストライキが宣言された
    人々は飢えている
    仕事は辛く
    労賃は安い
    血を流す騒乱の中で
    雇う側を守る法律は
    一人の男を逮捕する

    男の親たちは知らない
    男に罪の宣告があったのを
    哀れな男の妻が 親たちを思って
    嘘をついているから
    奇跡が起きれば
    男は無罪になるだろう
    そして男の家に 昨日の幸せが
    戻って来るだろう

    その一方で
    キリスト像の足元で
    悲しみにくれる老いた母親が
    泣きながらキリストに訴える
    “あなたのその聖い傷にかけて
    私の悩みと苦しみにかけて
    私たちの息子にお情けを
    主よ 息子をお守りください” と

    そして老いたる父親も 祈ることさえ出来ずに
    老いた妻と共に 震える声で訴える 
    “私らは これほどの苦しみを受けるような
    どんな悪いことを あなたにしましたか” と
    老いた妻は言う
    “主よ 息子をお守りください” と

    男は足を縛られて
    囚人を運ぶ船に乗る
    男の妻はそれを見て
    叫び出したくなる
    腕に抱かれた幼子は
    泣きながら叫ぶ
    “パパを返して”
    繋いだロープが解(ほど)かれて
    船が岸を離れる時
    最後の綱が大きく揺れた
    呪われた船が視界から消えて
    哀れな男の妻は
    気を失って倒れる

    邦訳:大澤 寛

    jornal : 日給・日当
    entrevero : 混乱・入り乱れ、 乱闘、 騎馬戦
    llaga : 潰瘍、傷、外傷、創傷   (心の)傷、痛手
    a la par : 一緒に、同時に
    engrillado : engrillar = 足かせをはめる、自由を奪う、拘束する
    planchada : (海)浮き桟橋、船に乗るために岸壁・地面などから船に掛ける橋  
    amarra : (海)船舶用のロープ、 係留綱、 もやい綱
    cabo = cordel (海)綱・ロープ

    匿名
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    Amar y callar (1972)(愛と沈黙)
    Letra y Música : Nelly Omar + José Canet

    いつまでも俺の命はお前のもの
    いつまでも俺の命はお前にやる
    そんなことは出来っこないと言われても
    いつまでも俺の命はお前にやる
    海辺に唇づける波のように
    花に唇づける微風(そよかぜ)のように
    お前が何処へ行こうと
    俺は必ずお前を愛して 
    お前の悩みを和らげよう

    お節介な誰かが お前に
    俺を愛しているのかと尋ねたら
    口では違うと言えよ 俺なんかを愛してはいないと
    だけど心の中では繰り返してくれ 愛していると
    だけど心の中では繰り返してくれ 愛していると

    こうした愛のもつれの中へ 二人はいつも
    二人の間の秘密を隠し持って行った
    俺が悩んでいるかいないかを 誰にも知られないように
    惚れているのが誰なのかを 誰にも知られないように
    心の奥にしっかりと隠しているのが とても素敵なことだから
    お前に対するこの俺の愛を
    深い悩みであるこの俺の愛を

    邦訳:大澤 寛

    この歌は「Que nadie sepa mi sufrir」(知られたくない私の悩み)に何となく似ている気がする。

    匿名
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    「Afiches」(1955)(ポスター)
    Letra : Homero Expósito                 Música : Atilio Stampone

    ポスターの中で 残酷に
    宣伝文句が威張り散らす ポスターの中で 残酷に
    紙で出来たポスターが千切れている中に  
    夢が売られている
    心が投げ売りされている
    そしてお前が現れる
    青春の最後の欠片(かけら)を売りに
    俺にもう一度十字架を掛けに!
    ポスターの中で 残酷に お前は笑っている!
    何処かの片隅でピストル自殺でもしたくなる

    注1:Fetiche は1.(未開人が崇拝する)物神 2.御守り・マスコット 3.(医学用語)フェティッシュだが、ここではそのポスター(恐らく昔愛した女性が淫らな姿態を見せている)が主人公の男性のフェティシズム(物神信仰)の対象となっているのだろう。
    注2:Balear : 「ル」ではなく辞書的には1.(南米)撃つ・射撃する・射殺する 2.(中米)騙す・ぺてんに掛
    けるの意味がある。ここではピストルで自殺する意味に使われている

    夜は仕切りの扉に
    隈のある肌を描く
    絵筆を使って
    空気を湿らせ
    それで春を造り出す
    ¿それがどうした?
    お前の物は残っていても お前はいない
    なにやらお前は もう皆のためのものだ
    ショーウインドウの中の裸体画みたいに
    お前の傍で俺は働いた お前のために
    嘘じゃない そして俺はお前を失った

    俺はお前に家庭(しょたい)を作った
    いつも貧しかったが 俺はお前に家庭(しょたい)を作った!
    懸命に働いて 笑うこともなくなった
    お前のために働いて
    お前のために血を流し
    その果ての現実は 喉を砂で擦(こす)って
    詰まらせて叫ぶことも出来なくする
    俺はお前に家庭(しょたい)を作った それは愛の過ちだった!
    何処かの片隅でピストル自殺でもしたくなる
    邦訳:大澤 寛              

    Afiche :(南米)ポスター = cartel
    Cartel :(経済行為のカルテルはcártel)cártel de precios
    Fetiche : 1.(未開人が崇拝する)物神 2.御守り・マスコット 
    3.(医学)フェティッシュ   fetichismo fetichista
     ここではそのポスター(恐らく昔愛した女性が淫らな姿態を見せている)が主人公の男性のフェティシズム(物神信仰)の対象となっている
    Jirón : (衣服の)切れはし・襤褸  (小さな)断片
    Balear : 「ル」ではなく辞書的には1.(南米)撃つ・射撃する・射殺する 
    2.(中米)騙す・ぺてんに掛ける
     ここでは自殺する意味に使われている
    Cancel : 1.(風雨を防ぐための)雨戸・内扉、 2.ついたて・仕切り
    Ojera : 目の下の隈
    Pincel : 絵筆、絵の具刷け
    Vidriera : ガラス戸・ガラス窓  (南米)ショーウインドウ=escaparate
    Restregar : ごしごしこする・こすり洗いする

    匿名
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    「Ahora no me conocés」 (1941)(もう俺が判らないだろう)
    Letra : Carlos Giampe Música : Armando Baliotti

    お前は生まれた町を捨てた
    遠い夢を追って
    その町には お前を愛する人たちが
    未だ居ることを考えもしないで
    そして俺は耐えている
    お前無しで生きることの苦しさ!
    旅に出て野垂れ死にでもするか!
    俺は旅立った 俺たち二人の
    悪い噂を町に残して
    これが お前が俺に払わせるツケだ!

    お前はもう俺が判らんだろう
    お前の不実のせいで 昔の俺は消えたのだ!
    お前は俺の心を挫いたけれど
    決して忘れることはないだろう
    俺たち二人の若い日のことを
    何時かお前は 俺にした悪い仕打ちの全てを
    悔んで泣くだろう!
    俺は 休むことなくお前を探した
    愛のために ひたすら
    お前はもう俺が判らんだろう

    人の心を弄(もてあそ)ぶものではないのだ!
    お前が俺にしているように!
    嫌な顔をするなよ
    お前を探したのは 俺の迷いだ
    そしてお前を見付けたのは 俺の罪だ
    俺には判らんな お前が俺を見て
    どうしてそんな驚く振りが出来るのか
    俺は お前に会うことをずっと夢見ていた
    お前が通りがかるのを見て お前の笑い声を聞いた
    そして俺の夢は粉々になった!
    邦訳:大澤 寛

    Constancia : ここではpaciencia の意
    Presencia : ここでは容姿・外見

    匿名
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    「Acquaforte」(銅版画)(1931)
    Letra : Juan Carlos Marmbio Catán (1895-1973)
    Música : Horacio Pettorosi (1896-1960)

    真夜中だ キャバレーが目を覚ます
    女と花とシャンパンに埋もれて
    タンゴのリズムに乗って暮すものたちの
    終わりのない そして悲しい祭りが始まる
    40年*の人生が 俺を縛り付けている *cuarenta años は必ずしもきっちりと数えた40年ではない。
    髪は白く 心は老いて cuarenta には“多くの”の意味がある。(注1)
    昔憧れて見たものを 今では苦しんで見る

    唇付けに浸る哀れな酒場の女たちが
    驚いて不審げに俺を見る
    もう判らないのだ
    孤独な 老いた 目に輝きのない俺のことが
    人生は過ぎて行く

    ルルーをシャンパンで酔わせるのに
    金を費ういやらしい老人が 
    パンをもう一切れ買えるように
    給料を上げてくれと頼む使用人には断った
    そして俺が若い頃に“モンマルトルの女王”だった
    あの惨めな花売りの老女が 
    微笑みながら俺に菫を勧めてくれる
    多分俺の孤独が癒されるように

    俺は人生を考える
    母親は嘆き 子供たちは彷徨(うろつ)き歩く
    住む場所も食べるものも無く
    “ラ・プレンサ*”を売って2ペソを稼ぐ     *La Prensa : 新聞の名
    みんななんて悲しいことか
    泣きたくなる
    邦訳:大澤 寛

    注1:cuarenta años me encadenan “40年の歳月=人生が俺を縛り付けている”という表現での“40年”はタンゴの歌詞によく出てくる。必ずしもきっちり40年の歳月や年齢を指すのではなく漠然と“長い年月”を意味していることが多い。タイトルの邦訳は「銅版画」(エッチング)として置いたが歌詞の内容は“昔の女”のカテゴリー。しかし昔の女との巡り合いだけではない。時代は1929年の世界恐慌後の不景気の頃。歌詞の最後の部分に不景気の影響を直に受ける庶民の嘆きが歌われる。

    注2 : この曲は1930-31年頃に Marambio Catán と Horacio Pettorosi がイタリアのミラノにあるキャバレー Excelsior で出会って作られたものだという。当時のムソリーニ政権はファシズムに反対する勢力・思想を排除していた。この曲も“退廃的”だとされたのだろう。当局に対しては“アルゼンチンタンゴ”なのだという説明・釈明を行ったらしい。しかしタイトルはイタリア語のままでテノール歌手の Gino Franci によってデビューされている。
    (Eduardo Romano 編「Las Letras del Tango」などから)

    testa : 頭・額  頭脳・知力
    guita : (ル) dinero, centavo

    Sobre Marambio Catan y “Acquaforte” .
    Enrique Cadicamo ha escrito sobre la forma en que el guitarrista Horacio Pettorossi habría vendido en Paris su tango “Bandoneón arrabalero” por 1.000 francos a Juan Bautista “Bachicha” Deambrogio , quien a su vez confió los versos a Pascual Contursi .
    Idéntica situación se habría producido con Juan Carlos Marambio Catan a quien el guitarrista le permitió coparticipar en la autoria de su célebre obra “Acquaforte” en la que Marambio nunca intervino .     (Radiotango Rosario から)

    匿名
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    「Acquaforte」(銅版画)(1931)
    Letra : Juan Carlos Marmbio Catán (1895-1973)
    Música : Horacio Pettorosi (1896-1960)

    真夜中だ キャバレーが目を覚ます
    女と花とシャンパンに埋もれて
    タンゴのリズムに乗って暮すものたちの
    終わりのない そして悲しい祭りが始まる
    40年*の人生が 俺を縛り付けている *cuarenta años は必ずしもきっちりと数えた40年ではない。
    髪は白く 心は老いて cuarenta には“多くの”の意味がある。(注1)
    昔憧れて見たものを 今では苦しんで見る

    唇付けに浸る哀れな酒場の女たちが
    驚いて不審げに俺を見る
    もう判らないのだ
    孤独な 老いた 目に輝きのない俺のことが
    人生は過ぎて行く

    ルルーをシャンパンで酔わせるのに
    金を費ういやらしい老人が 
    パンをもう一切れ買えるように
    給料を上げてくれと頼む使用人には断った
    そして俺が若い頃に“モンマルトルの女王”だった
    あの惨めな花売りの老女が 
    微笑みながら俺に菫を勧めてくれる
    多分俺の孤独が癒されるように

    俺は人生を考える
    母親は嘆き 子供たちは彷徨(うろつ)き歩く
    住む場所も食べるものも無く
    “ラ・プレンサ*”を売って2ペソを稼ぐ           *La Prensa : 新聞の名
    みんななんて悲しいことか
    泣きたくなる
    邦訳:大澤 寛

    注1:cuarenta años me encadenan “40年の歳月=人生が俺を縛り付けている”という表現での“40年”はタンゴの歌詞によく出てくる。必ずしもきっちり40年の歳月や年齢を指すのではなく漠然と“長い年月”を意味していることが多い。タイトルの邦訳は「銅版画」(エッチング)として置いたが歌詞の内容は“昔の女”のカテゴリー。しかし昔の女との巡り合いだけではない。時代は1929年の世界恐慌後の不景気の頃。歌詞の最後の部分に不景気の影響を直に受ける庶民の嘆きが歌われる。

    注2 : この曲は1930-31年頃に Marambio Catán と Horacio Pettorosi がイタリアのミラノにあるキャバレー Excelsior で出会って作られたものだという。当時のムソリーニ政権はファシズムに反対する勢力・思想を排除していた。この曲も“退廃的”だとされたのだろう。当局に対しては“アルゼンチンタンゴ”なのだという説明・釈明を行ったらしい。しかしタイトルはイタリア語のままでテノール歌手の Gino Franci によってデビューされている。
    (Eduardo Romano 編「Las Letras del Tango」などから)

    Sobre Marambio Catan y “Acquaforte” . (Radiotango Rosario から)
    Enrique Cadicamo ha escrito sobre la forma en que el guitarrista Horacio Pettorossi habría vendido en Paris su tango “Bandoneón arrabalero” por 1.000 francos a Juan Bautista “Bachicha” Deambrogio , quien a su vez confió los versos a Pascual Contursi .   Idéntica situación se habría producido con Juan Carlos Marambio Catan a quien el guitarrista le permitió coparticipar en la autoria de su célebre obra “Acquaforte” en la que Marambio nunca intervino .     
    ギタリストのH.Pettorosiが自作のタンゴ ”Bandoneón arrabalero” をパリで ”Bachicha” Deambrogio に1000フランで売りつけ、Deambrogio は作詩を Pascual Contursi の手にゆだねたことをE.Cadícamo が書いている。 似たようなことが「Acquaforte」に関してもJ.C.Marambio Catán とH.Pettorosi の間に起きていたのだろう。PettorossiがCatánにこの作品の共作者(*共同作曲者)になろうと持ちかけたがMarambio Catán は決してその話には乗らなかった。
    *(注)恐らく“共同作曲者にするから幾らか払え”という話だったのではないか?
    なお「Cien tangos fundamentales」(Óscar del Priore + Irene Amchástegui)の「Bandoneón arrabalero」の項にCadícamo の話として紹介されている。

    testa : 頭・額  頭脳・知力
    guita : (ル) dinero, centavo

    匿名
    無効

    「Adiós, Argentina」 (1930)(さらば、アルゼンチン)
    Música : G.H.Matos Rodríguez (1897-1948)                  
    Letra : Fernán Silva Valdés (1887-1975)
    別れる時にも優しい故郷よ
    別れに震える俺の命を
    お前に残して行く
    俺は 移民のように
    永久に去って行くのだ
    別の土地を探しに
    別の太陽を求めて
    心の底から 辛いものだ
    身を刺されるみたいに
    萎れた花を 鉢に残して行くのは
    パンパの埃っぽい風が
    俺の女を汚した
    さらばだ アルゼンチンよ
    俺の愛を残して行くぜ
    俺の心は あの娘(こ)の心と
    結ばれていたのだ
    俺の真っ直ぐな愛の結び目で
    しかし ガウチョは男だ 誇り高い男だ
    そんな結び目は 一撃で壊した
    ”もう他の男に匂いを移した花を
    何のために愛するのだ?”
    俺は あの娘の替わりにギターを抱いて行く
    ギターには色の付いた帯が巻いてある
    ギターの胴を撫でるとき
    あの娘を思い出しながら 
    俺は眼を閉じる
    さらばだ 俺たちを守ってくれた古い小屋よ
    いつも午後になると
    俺はあの娘に会いに行ったものだ
    あんな楽しみは 何一つ残ってはいない
    さらばだ アルゼンチンよ
    打ちひしがれて 俺は行く                                    
    邦訳:大澤 寛
    Hondo : (ス)2.心の底から
    Ajar : 1.(~を)しわくちゃ・くしゃくしゃにする  2.台無しにする・汚す・損なう  3.やつれさせる
    Estar prendido : うっとりした・心を奪われた
    Altanero : 尊大な・横柄な
    Reventar : 破裂・爆発させる、 叩き壊す・打ちのめす  2.悩ませる・うるさがらせる
    De un tirón : 一度で・一気に
    Cobijar : 保護する・かばう・匿う、 (考えを)抱く、 隠す・覆う

    匿名
    無効

    「Adiós, marinero」(1946 ?)(さよなら、船乗りさん)
    Letra : Reynaldo Yiso (1915-78)                   
    Música : Arturo Hércules Gallucci (1909-78)
    たった一人で泣いているお前を港に残して
    あの日俺は船出した
    去(い)かなきゃいけないと心に感じたからだ
    お前を嘆かせるのは辛かった
    お前の白いハンカチは 鳩のように
    冷たい午後の霧に消えた
    そして今日 何処の港に着いても アルゼンチン娘よ
    お前の悲しみが蘇る お前の声が戻ってくる

    さよなら 船乗りさん さよなら
    決して忘れないわ あなたの愛を
    私を幸せにしてくれた愛を
    海がその愛を奪うの
    この暗い午後に 
    さよなら 船乗りさん さよなら
    何時でもあなたの声を聴くわ
    広い海の果てから 
    私を慰めに来てくれる声を
    船乗りさん さよなら

    多分今でも お前の青い目は
    暗い遠くを眺めて 涙で濡れるだろう
    お前に夢をくれたあの船乗りを
    海が連れて来るのを待ち焦がれながら
    だけど俺の運命は 俺を風に任せて
    日毎 次の波止場に連れて行く 
    決して俺を待たないでくれ アルゼンチン娘よ
    何処の港に着いても お前の声がする

    邦訳:大澤 寛
    船乗りたち、海、港そして港の酒場とそこで働く看板娘を歌うタンゴは数多い。
    「Amarras」(もやい綱)「Aquella cantina de la rivera」(あの海辺の酒場)「Domani」(明日)「El barco María」(マリア号)「La cantina」(小さな酒場)「Mañana zarpa un barco」(明日は船出)等など。
    Revivir : vt. (~を) 生き返らせる、思い出させる、蘇らせる、再度体験する
    Arrullar : arrullo = 子守り歌
        寝かしつける・あやす (l.p) (優しい言葉で)喜ばせる、言い寄る、いちゃつく
    Muelle : 波止場・埠頭 2.ばね、ぜんまい ad.1)柔らかい、ふわふわの 2) 享楽的な、
       遊蕩的な、気楽な・安易な vida muelle

    匿名
    無効

    「Adiós, Nonino」 (1959)(さよなら 父さん)
    Letra : Eladia Blázquez (1931-2005)
    Música : Ástor Piazzolla (1921-92)
    瞬く星のひとつから
    俺に“来いよ”という合図
    永遠の光に導かれて
    呼ばれたら 俺は行く
    あの男の子を探しに                        
    死んで俺から離れて行った子
    俺は親父もその子も失くした
    “ここへ来いよ” と言われたら
    俺は生まれ変わるだろう 何故なら、、、
    注:ese niño “あの男の子” は語り手=ピアソラを指す
    注:Nonino はイタリア語で “祖父” (スペイン語のabuelo) のことだがピアソラは父親を “Nonino” という愛称で呼んでいた。

    俺は 親父が粘土をこねて作った国に根付いた根っこなのだから
    俺は 俺という種を蒔いてくれた あのイタリア人の血と皮膚なのだから   
    さよなら 父さん  あなたの居ない道のりはひどく長いだろう
    苦しさ 悲しみ  テーブルとパンと
    そして俺の訣別(わかれ)  ¡ああ 俺の訣別だ! あなたの愛と あなたのタバコと あなたの酒との
    ¿誰なのだ?  父さん あなた連れ去り 俺から 情け容赦なく 半身を奪ったのは
    多分 いつか或る日 俺も後ろを振り向きながら
    あなたと同じように “さよなら これが最後だ” と言うだろう

    注:el tano aquel “あのイタリア人” は父親のこと。tano はイタリア人=italiano の愛称 (蔑称であることもある)。
    ピアソラの家系はイタリア人。

    (語り)
    そして今 俺の親父は一本の木になり
    光になり 風になり 川になった
    そして俺は滝の流れになって 親父に取って代わるのだ
    親父の挑戦(たたかい)を 俺の中に受け継いで
    俺は親父の血を受け継ぐ 親父が見える
    そして俺の声には 紛れもない親父の木霊が聞こえる
    あの時 虚ろに響いた声
    俺が親父に さよなら  さよなら父さん と言った時
    注:sonar al hueco は “虚ろに響く”
    俺は 親父が粘土をこねて作った国に生えた根なのだから
    俺は 俺に種を蒔いてくれた あのイタリア人の血と肌なのだから
    さよなら 父さん 俺の行く道に あなたの太陽を残してくれた
    怯えを知らぬあなたの情熱を あなたの愛の信念を
    そしてあの熱意   ¡ああ あなたのあの熱意! 行く道に希望の種を蒔くための
    俺は あなたの甘い蜜 そして今 あなたを思って泣く涙 父さん
    多分 俺の命の糸が切れる日に
    あなたに会って 知るだろう 終わりなんて無いことを

    注:panal は “甘い蜜” と訳したが “蜂が蜜を作る場所” のこと。比喩的に “蜜” “砂糖菓子” さらに “可愛がる対象” “寵愛の対象” を指す。
    注:gota de sal は “涙” のこと.
    邦訳:大澤 寛

    Acudir : (呼ばれて・いるべきところに)行く・駆けつける
    Amasar : こねる・練る  amasar el pan
    Arcilla : 粘土
    Suplantar : (不当に)~に取って代わる・なりすます
    Ardor : calor, pasión
    Sonar al hueco : 虚ろに響く

    匿名
    無効

    「Adiós, muchachos」 (1927)(さらば 仲間たち)
    Letra : César Felipe Vedani Música : Julio César Sanders

    さようなら 仲間たちよ 俺の人生の友らよ
    あの頃の 懐かしい悪仲間よ
    俺に 引き下がる順番(とき)が来たんだ
    あの楽しかった若い頃に 別れなければならない
    さようなら 仲間たちよ もう行くぜ 諦めたよ
    誰も 運命には逆らえない*1       
    俺には どんちゃん騒ぎは全て終わったんだ
    俺の身体は病んでいて もう持たない
    心に浮かんで来るぜ*2
    あの頃の想い出が
    お袋の傍に居て楽しかった昔の 
    あの優しいお袋の
    それに あんなに愛した
    俺の あの娘(こ)の
    みんな覚えてるだろう 綺麗だったよ
    女神よりもなあ
    俺は愛に酔い痴れて
    心を捧げたものだった
    だけど 神は あの娘の魅力に
    やきもちを焼いて
    俺を悲しみに沈めて
    あの娘を俺から奪い去った
    神は一番偉い裁判官だ
    神に抗えるものはいない
    俺は神の掟に
    従うのに慣れたよ
    だから神は命令を発して 俺の人生を粉々にして
    お袋も そしてあの娘も
    俺から奪ったんだ
    俺は この世の別れに
    心から ふた筋の涙を流そう
    決して俺を忘れなかった
    あの懐かしい悪仲間のために
    そしてその他の友人たちに
    最後の別れを告げるとき
    心を籠めた祝福を送ろう
    邦訳:大澤 寛

    *1 tallar : ここでは「支配する・決定権を持つ」の意。 対象が運命・状況などの場合女性単数定冠詞la を用いることが多い。
    *2 acudir : 「駆けつける」の意味だが、ここでは「(次々と)浮かんで来る」。

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