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「La cantina」(小さな酒場)
Letra : Cátulo Castillo (1906-75) Música : Aníbal Troilo (1914-75)
月に染められて銀色のリアチュエロ川に
海から戻った船がひとつ
空の甘さのかけらと
一掴みの塩の香りを連れて
風に流されて消えた燕は
何処の遠い街をさまようのだろう
とある酒場の曇ったガラスの影で
グラスの酒に不安を紛らせて
酒場よ
イタリア人のアコ弾きが
小さく小さく弾いて
お前を呼ぶたびに 泣いてくれよな
酒場よ
そこは暮らしのひとかけら
そこにお前は隠れていた
俺の手のくぼみの影に
静かにお前を呼ぶ俺の手の
蝶がひとつ飛び立って
俺の唇に置いて行った そう
俺の唇に置いて行った
塩辛い海の味を
もやい綱に月は沈んで
タンゴが悲しい詩(うた)を泣く
少し風が出て水面(みなも)が泡立つ中を
お前の声が木霊してくる
イタリアの船の*タランテッラが聞こえて *イタリア南部のテンポの速い踊り(の音楽)
酒場は賑やかになったけれど 俺には
お前の思い出が灰色の衣装を着けて
遠くで泣いているのが分かる 邦訳:大澤 寛