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「La abandoné y no sabía」 (愛していたのに気が付かないで)
Letra y música : José Canet (1915-84)
金と銀 セレナーデとファンダンゴを混ぜ合わせて
バンドネオンの音色であやされて
このタンゴは生まれた
俺の運が尽きる 恐ろしいこの世で
俺が悩むのを眺めるために生まれたのだ
このタンゴを聴くとき 踊りに行くとき
俺は死を身近に感じる
そうなのだ だから今夜は心が俺を責める
俺はあの娘(こ)を捨てたのだ なのに
あの娘を愛していたのに気が付いていなかった
あの娘が去(い)ってしまってから 信じる心は挫けて
死んで行く 死んで行く
俺はあの娘(こ)を捨てたのだ なのに
俺の心が俺を騙していたのに気がついていなかった
そして今 あの娘を探しに来て 見付けられない
あの娘の愛なしに俺は何処へ行くのか?
バイオリンの嘆きに乗せて 踊り手たちは
吐息を洩らす
誰もが 連れと一緒に 古い悲しみを
次々と思い出す
不運な俺もまた 俺の腕にあの娘を抱けないという
ひどい苦しみを嘆くのだ
今 あの娘に会いたい 口付けがしたい
疲れた心を受け留めて欲しい
しかしそんな願いは無駄なこと もうそれは無理なのだ
俺は影の中で 夢を見るだけだ
邦訳:大澤 寛
amasar : こねる・練る、 パン生地をこねる、 雑多なものを取りまとめる・ひとつにする
fandango : l.p. 大騒ぎ・大混乱、 (中南米)どんちゃん騒ぎ
reproche : 非難・叱責、 非難・叱責の表現
truncar : 切り取る・奪う・削除する、 削除する・未完に終わらせる、 挫く・挫折させる
a pedazos : caerse a pedazos = l.p. ぼろぼろになる、 疲れ果てる