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「Ilusión marina」(海の夢)
Letra y música : Gerónimo Sureda (1906-64) + Antonio Sureda (1904-51)
灯台守の老人の娘は あの淋しさが生んだ王女様(プリンセス)
漁師たちは娘に 愛をこめて告げたものだ
この海の 一番綺麗な 一番白い真珠だと
水夫たちが歌ったのは この娘のためだった
愛に飢えて 静かな海を渡る水夫たちが
優しさをこめた唄で いつも娘に告げたものだ
灯台よりも 太陽よりも その娘の瞳は輝いていると
そして あの水夫たちの甘い言葉を聞き
娘は 喜んで微笑んだものだ
みんなが希望を持てるように
気立てのいい娘で みんなを愛していたから
水夫たちの歌にある夢は その娘の心に
喜びをあふれさせたものだ
そして そんな場所(ところ)で一人になると その娘もまた
女の子たちが皆そうするように 夢を紡いだ
或る日 舵をなくして宛てもなく
航海を続けていた船のキャプテンが
灯台で 輝くように美しい娘を見たという
そして 心の船の行く先を その娘の瞳に決めたのだ
すると その美しい海の王女様(プリンセス)は
情熱(こころ)をこめて 愛の仕草をそのキャプテンに与えたのだ
そして今 あの荒くれの漁師たちは嘆いて
海の一番綺麗な真珠を 愛が奪い去ったと言う
船首(へさき)で声を合わせて 荒くれた唄を歌う
海の狼*たちは もう来ない *“Lobo marino” は“アシカ”のことだが、ここでは海の狼として置く
灯台は 深い悲しみに沈み
狼たちの心の嘆きは深まる
そして 暗い悲しい夜には
灯台の灯りが そうした船を見つけると
あの娘のつぶらな瞳を思い出し
時には涙ぐむものたちもいる 邦訳:大澤 寛