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「En esta tarde gris」 (この暗い午後に)
Letra : José María Contursi (1911-72)
Música : Mariano Mores (1918-2016)
(作詞のJosé María Contursi と作曲のMariano Mores もまた黄金コンビ binomio de oro である。 J.M.Contursi自身の恋愛遍歴4部作ともいうべきものがこの曲と「Cristal」「Grisel」それに「Cada vez que me recuerdes」であり、いずれもM.Mores の作曲)
泣きたくなるぜ この暗い午後に
雨の音が お前のことを告げている
俺が悪いのだ 自分を責めるしかない
俺のせいで もう決して お前!
決して お前に会えないことへ
目を閉じると お前が見える 昨日のことのように
繰り返し 俺の愛を求めて震えるお前
そして今 お前の声が 俺に帰って来る
この暗い午後に
来てよ
いつも悲しそうにお前は俺に言ったものだ
こんな孤独に
私の心は耐えられない
来てよ
そして 私の苦しみを憐れんでよ
もう私は疲れたのだから あなたを思って泣くことにも
悩むことにも 待つことにも
そしていつも 心に向かって
独りごとを言うのにも
来てよ
こんなにあなたが好きなんだから
今日 もし来てくれなかったら
私は泣いて 涙で息が詰まるわ
駄目だわ
こんな生き方は出来ない
私の中に 呪いのように刻まれた
この愛を連れては
俺には判らなかった お前が絶望していることが
別の愛を求めて 俺は陽気にお前から離れた
そしてこんなに離れて暮らして
俺の過ちに気が付いたとき
どれほど孤独で悲しくなることかを
目を閉じると お前が見える 昨日のことのように
繰り返し 俺の愛を求めて震えるお前
そして今 お前の声が 私の中で血を流す
この暗い午後に
邦訳:大澤 寛
“多分最もセンチメンタルなタンゴの詩人”(Holacio Salas 「El tango, guía definitiva」 から)と言われるJosé María Contursi は俗語・ルンファルドを使わなかった。1943年からの国語浄化運動の一環としてタンゴの歌詞にも検閲がかけられた。このことが俗語を使わずに格調の高い歌詞の書ける、教養のある作詞家たちを生んだとも言える。
なお自身の恋愛・不倫の対象であったSusana Gricel Vigano とは後に結婚している。