default logo

返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

ホーム フォーラム 資料掲示板 大澤寛のタンゴ訳詞集 返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

匿名
無効

「El pescante」(御者台)1934
Letra : Homero Manzi (1907-51)
Música : Sebastián Piana (1903-94)

夜を 速足で駆ける 黒っぽい2頭立て
嘲るような 見せびらかしの一鞭くれて
虚勢を張った灰色の服*が馬車に乗り       *de gris 当時陸軍の制服の灰色がもてはやされたという
コンスティトゥシオン通りの敷石道を行く
左手の手綱に繋がれて
人に馴れない赤毛の駒がおとなしくなった
その赤毛の駒のように 沢山の女たち*が               *prendaここでは妻、伴侶、女性の意
その男に求められて 鐙(あぶみ)*の下でおとなしくなった         *この行は難解だがfreno=controlと解せる

さあ行こう!
影と思い出を背負って
さあ行こう!
過去を横切って
さあ行こう!
ゆっくりした歩調(あしどり)で
さあ行こう!
忘れられた時に向かう道を
古い いつもの通りのやり方で
多分 何処かの町角で
レネが呼んでいるから
俺は情事(いろごと)のなかで
愛とスイセ*に狂ったのだから  *suissé : 1800年代末から1900年に向かって流行したカクテル  アブサンがベース

午後を 痩せた馬がゆっくりと歩く
疲れた平手打ちで奮い立つことも無く
最後の見せびらかしは上手く行かずに
カジャオ通りの太陽の下を
色褪せた鍔広帽子は
もう古い歌を口笛に乗せることも無い
愛も その男の心の馬車に乗る旅人も
もう居ないのだから
(H.Manzi の詩の中では難解なもののひとつとされる)           邦訳:大澤 寛