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「El adiós」 (別れの言葉) (1937)
Letra : Virgilio San Clemente (1905-77)
Música : Maruja Pacheco Huergo (1916-83)
光が薄れて影になる午後に
私たちは あっさりと*別れた * buenamente : ここでは“あっさりと”の意
お前は私の深い悲しみを知らず
お前が立ち去るのに 二人とも笑っていた
お前が行くのを見て
私の哀れな声は悲しみに震え
幸せの夢は 別れの言葉に消えた
空は私には暗くなった
私の心は くぐもった声で 空しく
夜に向かって 苦しみを吐き出した
深くて重い 沈黙だけが
私の心で泣いていた
時が過ぎても
お前はいつも 私の中に生きている
私たちが一緒に仲良く笑うのを見ていた野原が
私に尋ねる お前を忘れることで癒されたかと
そして 風の中に お前を探して
私の嘆きが 谺になって消えてゆく
一方でお前は 遠くで 誰かの腕の中で
誰かの唇付けを受けて その虜になっている
そして人は私に言う お前は決して戻らないと
再た春が来て 野原が色づくとき
もう一度悩みと懐かしい思い出が
私の心に満ちてくる
鳥の囀りが辺りに拡がって
空は明るさを増す
だけど私の心は 影の中に生きて
悲しみは翼になって お前を呼びに行く
私の心は くぐもった*声で 空しく * velado/a : voz velada くぐもった声
月に苦しみを告げるだろう
そしてまた 私の心には 深くて重い沈黙が
泣きながら残るだろう
邦訳: 大澤 寛