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匿名
無効

「Domani」(イタリア語で 明日)
Letra : Cátulo Castillo (1906-75)
Música : Carlos Viván (1903-71)

酒場の灯り
リアチュエロ河の霧は
空の下で拡がり
青白い縮緬のよう
酒場のテーブルでは
慰めも無く 悲しみの重さに
ドン・ジョバンニが泣いている
アコーディオンを聴きながら
遠く聞こえるその繰り返す音色は
絶望に変わり 棘になる
殺しはしないが傷つける
惨い不運の棘になる
そして繰り返し告げるのは
明日は娘が帰って来ると
海に向かって飛び去った
嘘つきな蝶々のような娘が

明日!
娘が帰って来ると
遠い
過ぎ去った悪夢
哀れなドン・ジョバンニは繰り返す
明日あの可愛い娘が帰って来ると
悪酔いさせるグラスの中に
いつも空しく響くのは
明日!
酒が言わせる嘘なのだ

だけどそれは無駄なこと
希望の欠片も残ってはいない
ドン・ジョバンニの悲しみに
ざらつくような苦しみが住み着くだけ
そして 年月の霧の中には
そして やがて来る死の影の中には
海のかなたから帰って来る
泣き声のような歌がある

その声は 霧が連れて来た帆船からのもの
遥か遠くの見捨てられた古い港からのもの
ドン・ジョバンニをぼうっとさせる木霊
哀れな娘が帰って来ると叫ぶ時
その娘の姿を消してしまう酒

邦訳:大澤 寛

Cantilena : ゆっくりした抒情的な旋律、 (詩などの)繰り返し
Despenar : とどめを刺す、 絶望させる