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「Discepolín」 (ディセポリン)
Letra : Homero Manzi (1907-51)
Música : Aníbal Troilo (1914-75)
凍るような大理石の上の メディアルーナ* の屑
隅っこで食べている非常識な女がひとり
君のミューズは血を流していて その女は朝食をとっている
夜明けは許しはしないし非情だ
結局 誰が責任をとる?
こんなグロテスクな人生の
真っ赤な血で汚された心の
世が明ける前に 二人とも泣き出す前に
君と俺は出かけよう
*medialuna:朝食に食べる半月型の甘いパン クロワッサンに似ているが通常はやや固くて甘い
君の長い間の倦怠は知っている
幸福の代償が高くつくのも分かる
そして どのタンゴを聴いても君を感じる
君の とてつもない才能と 直感する力と
君の隠された苦い涙と
君の青白い道化師の仮面と
そして君が作る詩と歌に花開く
君のあの悲しげな微笑みと
人々は悲しみを多く抱えて君に近寄る
君は半ば震えながら その悲しみにそっと触れる
他人の傷が 君自身の傷であるかのように痛む
あの男は運が無かった この女は愛が無かった
楽団が出す騒音に合わせ フロアーは混んでいる
電灯の下で おが屑で出来た人形たちが抱き合う
あいつらが踊ってるのが見えるだろう?
お祭り騒ぎをしてるのが分かるだろう?
さあ行こう 何もかも辛いから なあディセポリン
邦訳:大澤 寛
Presentir : 予感する・予知する、 胸騒ぎがする・虫が知らせる
Nariz : 嗅覚、 直感・直感力・勘
Careta : 仮面・マスク
Clown : = payaso
Arrimarse : 近づく、 寄りかかる・もたれる
Aserrín : おが屑 aserrar : 鋸で切る aserradero : 製材所
Homero Manzi (1907nov.11-1951may.3)
Enrique Santos Discépolo (1901mar.27-1951dic.23)
Aníbal Troilo (1914jul.11-1975may.18)
病床にあったManzi が友人のDiscépolo に捧げて作った。1951年3月の或る日の真夜中にManziは電話でAníbal Troilo にこの詩を伝えた。Troiloはその同じ真夜中に曲を書き上げたという。Discépoloがこの曲を初めて聴いたのは、キャバレーEl Colonial でAlba Solís が歌ったもの。(Eduardo Romano 「Las letras del tango」p-400)