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「Dicen que dicen」 (聞いた話だが)
Letra : Alberto Ballesteros (1892-1931) Música : Enrique Delfino (1895-1967)
こっちへ来なよ もっと近くに 心配はいらないって
はら見ろよ 拳骨を握り締めたりはしてないから
俺は只 お前に話をひとつしたいだけなんだ
俺には関わりの無かった*或る恋人同士の話を *balconear はbalcón (バルコニー)から見ている=高みの
聞いた話だが 女が一人いたんだ 見物をする=関心はあるが手を出さない
全く良い女だ お前がそうだったような
その女は ある暴れん坊の若者の自慢の種だった
その若者は心底は優しい奴だった 俺がそうだったような
その話では 恋人同士の二人は
輝くような愛の巣で暮らしていた
町の人たちは言う その若者はその女を
精一杯愛していたと 俺がお前にそうしたように
しかし或る晩 仕事があって
その優しい若者は家を留守にしたんだ
そしてあの女は 性質(たち)の悪い愛に狂って
その若者を裏切った
聞いた話だが その時から
心を憎しみで燃やして
その優しい若者は 草の根を分けるように
女を探した 俺がそうしたように
そして運命がまさに 若者がその女を見付けるように仕向けた時
俺が今 お前を見付けたように
若者は その不実な女の首に手をまわした
俺が今 そうするように
放っておいて下さい お隣さん 誰も呼ばないで
心配しないで 俺は刃物を持ったりはしていない
俺はあいつに 話をひとつしたかったんだ
だけど 怒りでどうしようもなくなったんだ
聞いた話ですが お隣さん
死んだ女は 全く良い女だった
その女は ある暴れん坊の若者の自慢の種だった
その若者は心底は優しい奴だった 俺がそうだったように
邦訳:大澤 寛
少々怖い歌詞。「A la luz del candil」 もそのひとつ。