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返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

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匿名
無効

「Cuesta abajo」(下り坂)1934
Letra : Alfredo Le Pera (1904-35)   Música : Carlos Gardel (1890-1935)
若かったことの恥と もう若くはない悲しみを
この世で引きずって来た俺だけれど
帽子の鍔で隠しきれない涙があふれるのを
こらえ切れなかったことが幾度もある

運命に打ちひしがれる非人のように
道を彷徨(さまよ)った俺だけれど
怠け者だった 目が眩んでいた俺だけれど
今 世間に判って欲しいことが一つだけある
愛するという勇気の価値(ねうち)だ

俺には 愛することが人生そのものだった
春の太陽のように 俺の希望であり情熱だった
俺にはいつも判っていた
俺の哀れな心が抱いた密かな喜びは 
全くこの世に受け容れられないことが

今はもう 人生の下り坂だが
俺は捨て去ることが出来ないでいる
昔の夢の数々を
俺は夢に見る 懐かしい昔を
泣きながら想う 二度と還らぬあの頃を

あの女の跡を追いながら
苦しみの酒を浴びるほど呑んだ
だけど 誰も判ってはくれなかった
俺が何もかも放り出しても
心のかけらをいつも グラスに残して来たことを

今はもう ひとり淋しく打ちひしがれて
人生の下り坂だが 言いたいことがある
俺に語りかける女の愛が偽りでも
あの女のあの輝(ひか)る目のためになら 何時でも
もっと愛を与えただろうと                     邦訳:大澤 寛