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返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

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匿名
無効

「Che, bandoneón」(なあ バンドネオンよ)
Letra : Homero Manzi (1907-51)    
Música : Aníbal Troilo (1914-75)
なあ バンドネオンよ
お前の音色の怪しい魅力が
他人(ひと)の悩みを憐れんでいる
眠たげなお前の蛇腹を抱きしめると
悩みつかれた心に辿り着く
エステルシータもミミも ニノンと同じように
貧しい衣装の運命を脱ぎ捨てて
お終いにレーヨンの死衣装を着た
お前の葬送(とむらい)の唄に合わせて

バンドネオンよ
今日は馬鹿騒ぎの夜だから
お前に本当のことを告げよう
グラスを重ね 嘆きを繰り返し たくさんのタンゴと
酒の狂気と苦さにとり憑かれて
バンドネオンよ
どうしてそんなにあの娘を呼ぶのだ?
心が愛想尽かしをしているのが判らないのか?
あの娘は夜毎帰ってくる お前の嘆き節の唄になって
なあ バンドネオンよ

お前の唄は 終わらなかった愛と
いつか二人で夢見た空 それに
愛することの嵐の中に 懸命に身を沈めた
兄弟のような友 そして
時々理由(わけ)も無く我々を襲う あの押さえ難い
泣きたい気持ち そしてさらに
心が何処を彷徨うのか 無理に思い出させる酒なのだ 
なあ バンドネオンよ

(注)“orsai” (orsayとも書く) はサッカー用語で英語の off side のこと。
ここでは“道に外れた”“何処に居るのか判らない”といった意味。
(邦訳:大澤 寛)