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「Abuelito」 (お祖父ちゃん) (1926)
Letra : Eduardo Salvador Trongé (1893-1946)
Música : Carlos Ponciano Cabral (1887-1960) y Alberto Nicolás Laporte (n/d)
もう飲まないでくれよ お祖父さん 酒はやめてくれ
もう飲まないでくれよ お祖父ちゃんよ 辛いから
近所の人が 祭りの時に
このテーブルにやって来たぜ 俺たちを慰めに
もう飲まないでくれよ そしてあの話をして欲しい
好きな娘(こ)が生きていた頃の話をさ
あんたの椅子の傍に寄って 俺は 今度は何も言わずに
静かにして 聴くからさ
そして 俺の頼みを聞き入れて
可哀そうな祖父は
俺を火の傍に座らせ 悲しみをこらえて
こんなふうに話し始めた
戸を閉めて 灯りも消してくれ
暗がりから わしのあの娘(こ)がやって来るから
あの娘(こ)は或る日 もう随分昔のことだが
わしの心に 喪服を着せたんだ
お前に判るかな
黒い瞳(め)の 颯爽としたクリオージャ*だったよ
微笑(にこにこ)して 甘ったれで
色が白くて 優しくて 喋るのが好きな
ああ わしの想い出の中の
花咲く愛のカーネーション
*criollo/a は普通“南欧出身の父母を持つラ米生まれの男女”を指すが、ここでは“土地っ子 の意味だからそのままクリオージャとして置く
お前に判るかな
わしが どれほどあの娘(こ)を愛したか
二人で どれほど愛し合いながら 塒(いえ)を作ったか
しかし或る夜 運命の手は あの娘(こ)を
わしの手元から 神様の許へ連れて行った** **斜線部分には別の歌詞がある
わしは 今では 歳月に打ちのめされ
老いて 疲れて 傷ついてる
死が待ち伏せているし
死にたい気にもなっている
判っただろう 孫よ
この辛い話を この世でわしは隠してきた
こんなふうに 或る夜 俺の可哀そうな祖父は
悲しく 辛く 俺を泣かせたんだ
邦訳:大澤 寛
** Mas ella, cruel, destrozando mi alma, un día,
con mi mejor compañero me engañó.
だけど あの娘は酷いことに 或る日 私の心を粉々にして
私の一番の親友と一緒に 私を裏切ったんだよ
Altivo : 傲慢な・横柄な、 高い・聳え立つ
Risueño : 微笑む・にこにこした・楽しげな、 有望な・期待の持てる、 楽しい・和やかな
Tez : 顔面・顔の皮膚、 顔色
Acecho : acechar = 待ち伏せる、 観察する・注意して見る・見張る、 忍び寄る