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匿名
無効

「Anoche」 (1952) (昨夜)
Letra : Cátulo Castillo (1906-75) Música : Armando Pontier (1917-83)

昨夜(ゆうべ) なあお前
昨夜 お前を見たぜ
気楽そうに 別の愛人(おとこ)と
幸せそうに通りがかるのを
フロントグラスを通して
金*にあかせた衣装(ふく)を着た 金髪のお前を *metal : (口語)金・銭 = el vil metal
通り掛ったお前の車が 俺にはね掛けたんだ
お前の泥沼の夜と雨を
昨夜(ゆうべ) なあお前
昨夜 お前を見たぜ
象牙色のお前の肌が 何と蒼かったことか!
荒んだ生活(くらし)が 
お前の足元に忍び寄る度に!
毛皮に包まれた お前の心が
気遣って震えているのが 俺には判る

俺は歩道の縁*に居たんだ      *cordón : (南米)歩道の縁石
絶望(やけ)になって!
頭はぼんやりして
ぼろぼろになって!
象牙色のお前の肌が 何と蒼かったことか!
普通ではない 焦(じ)れるような蒼さ!
昨夜 多分
昨夜 なあお前
ようやく俺は判った
お前の不幸と 
生きること 死ぬことの意味が
夢を騙しながら ミンク*の毛皮と車に                     *visón : ミンク、 ミンクの毛皮
お前を売った夢を!
夜になり 部屋の片隅で泣きながら
夜が心に語りかけるときに
昨夜(ゆうべ) なあお前
昨夜 お前を見たぜ                                        邦訳:大澤 寛