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「Amurado」 (1927)(捨てられた男)
Letra : José De Grandis Música : Pedro Maffia + Pedro Laurenz
ふと見れば 俺のベッドは荒れている
その部屋にある小さな絵は 想い出の中に残るだけ
古い衣装と古傷と そして苦しむ俺の心
あの娘(こ)はここから出て行った
残っているのはこれだけだ
今でも俺を苦しめる
とても寂しい昼下がり 荷物を纏め 俺を捨て
出て行くあの娘を見つめては
俺は何にも言わなんだ 恨みつらみは言わなんだ
みな終わった!と思ってた
今もし俺を見るならば
俺は白髪で年老いて
暗い孤独のせいだろう
余りに醜(ひど)い気まぐれが
俺を襲って来るからだ
俺が安らぎ求めては
安い酒場へ向かうのは
注1fulero はfeo と同じ意味で“醜い”“ひどい”
注2berretín はラプラタで“熱中”“頑固”“気まぐれ”
俺の持つ苦い不幸を知っている
小さな部屋よ驚くな 俺の独り言に驚くな
それほどに俺の悩みは深いのだ
あの娘の愛も慰めも 優しさも俺には無いのなら
この年齢(とし)の俺に何が残る
俺の人生はあの娘の愛にあるのなら
苦しみ悩み声も無く 幾夜彷徨(さまよ)い歩いても
想い出してる昔には 女も夢もあったのだ
酔ってることは判ってる ひどい恥だと言うことも
それでも俺は連れて行く 哀れな俺の心を
もっと深い酔いの中へ
邦訳:大澤 寛
タンゴには女に捨てられて嘆き、酒に憂さを晴らす男の歌が圧倒的に多い。このカテゴリーはこれからどんどん出てくる。