ホーム › フォーラム › 資料掲示板 › 大澤寛のタンゴ訳詞集 › 返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集
「Amarras」 (1944)(もやい綱)
Letra y Música : Carlos Marchisio(不明) + Carmelo Santiago (!915-93)
俺はさ迷い歩いてる
Recova の寒い空の下
嘆き苦しむ影のよう
どんなに思い返しても
何も残らぬ俺の身は
岸に繋がれ濡れそぼつ
石炭運びの船のよう
俺も過去(むかし)に繋がれて
錨下ろした船なのだ
俺の身をあの娘(こ)が繋いだもやい綱
獣の爪か 鉤爪か
二度と帰らぬあの頃を
嘆いて俺は夢見てる
二度と帰らぬ唇づけを
岸に繋がれそのままに
もう船出することのない
石炭運びの船が俺
もう愛されぬと気が付いて
俺が失くした唇づけは
慄く俺には悩みの責め苦
今の俺には何もなく
ひたすら思い知ることは
悩み躓き 不幸が待つ
奈落へ転げ落ちたこと
ひたすら思い知ることは
お前が告げたさよならは
俺を嘲る苦しみで
いつも足元について来る
お前はもはや戻らぬと
知りつつ俺はさ迷い歩く
Recova 辺りをあてもなく
遠く旅立つ理由(わけ)を探して
こうして俺は憑き物を落とし
お前から離れて 死ねるだろう
それでもお前の思い出は
過去(むかし)に繋がれ生きている
俺を鎖につなぐのだ
錨を下ろした船は俺
苦しみを終わらせるのも
不幸な運命(さだめ)に別れるのも
死ぬことだけと判ってる
深い憂いに包まれて
暗くて寒い夜を行く
俺の身をあの娘(こ)が繋いだもやい綱
獣の爪か 鉤爪か
酷い嘆きに包まれて
慰めなどは何もなく
わびしい心を道連れに
俺は独りで去ってゆく
岸に繋がれそのままに
もう船出することのない
石炭運びの船が俺
邦訳:大澤 寛