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匿名
無効

「Amargura」 (1934)(苦い思い出)
Letra : Alfredo Le Pera (1904-1935)                   
Música : Carlos Gardel (1890-35)

あの娘(こ)が笑う唇が 容赦なく俺に付き纏う 
あの残酷な思い出が 眠れぬ俺を待ち伏せる
俺のこの目で見たものは カーネーションの赤色の
あの娘(こ)の赤い唇が 彼に捧げた唇(くち)付けだ

狂気を運ぶ風が吹き 俺の心を通り過ぎ
苦しみに 打ちのめされたこの俺は
復讐したいと思ったが 俺の両手は打ち震え
心は両手を押し留め 笑うあの娘の唇を
殺すことなど出来なんだ

つかの間のあの娘の愛が
俺の幸運(つき)の全てだった
俺の喜びを野原や月に告げた
あの娘を愛する喜びを
あの娘を信じる喜びを
今日俺が歩く足跡には
涙と嘆きがあるばかり

苦しんで 打ちひしがれて 俺の古傷が血を流す
もう一杯飲もう 俺は忘れたい
だけど 愛と幻滅のこの深い傷は
しぶとい雑草のように根こそぎにするのは難しい

グラスの底から あの娘の面影が俺に付き纏う
いつも変わらぬあの娘の笑いは 俺を咎めているようだ
浮気で情の無い あの娘の唇が 俺を鎖に繋ぎとめる
あの恩知らずがグラスの中で 死ぬまで俺を揶揄(わら)っている

邦訳:大澤 寛