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「Alma en pena」 (1928)(悩む心)
Letra : Francisco García Jiménez (1899-1983)
Música : Anselmo Alfredo Aieta (1896-1964)
時は過ぎたけれど
それでもあの娘(こ)の思い出も
優しさも消えない
あの娘の手紙が残っているから
泣きながら何度も読んで
汚れて色があせた手紙が
そうだ 俺はあの娘に忘れられた!
そして今 あの娘の家の前で
満足気なあの娘の声を聞いている
あの娘の笑顔を思い浮かべている
そして あの娘が他の男に
嘘をつくのを聞いている
俺についたのと同じ嘘を
心よ 苦しみに迷う心よ
あの娘の家の門に近づいて
泣いてあの娘に請い希うのだ
なあ お前を気楽にしている忘れる術(すべ)のかけらを
俺に呉れとお前に求めても 勘弁しろよ
お前は俺に愛を教え 俺は愛を知った
愛を知ってしまったことで 愛に殺されることも
そして お前を憎むことまで学ぼうとしている俺だが
只ひとつ学び切れないのは お前を忘れることだけだ
再た聞こえるあの娘の声は
昔は俺のものだった
だけど今日 あの娘の家のバルコニーの下で
倒れて死んでゆく
哀れな俺の心が聞くのは
空しい木霊だけなのだ
俺が悪態ついたあの声が 今 別の男に
恋の栄光を約束しているのが聞こえる
俺は眼を閉じる
俺の心が拾い上げるのは
愛の施しものだ 邦訳:大澤 寛