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「Volver」(帰郷)
Letra : Alfredo Le Pera (1904-35)
Música : Carlos Gardel (1890-1935)
俺が帰る道を
ずっと教えてくれている
遠くの星の瞬きが見える
俺が過ごした苦しみの時を
ほの白く照らした
あの同じ星たちだ
俺は帰りたくなかったのだが
人はいつも 初めて恋をした場所に帰るものだ
静かな街角 からかう様な星たちの眼差しの下で
木魂が俺に話してくれた
“あの娘(こ)の命はお前のもの あの娘(こ)の愛はお前のもの”
あの星たちは今 俺が帰って来るのを 冷たく眺めている
俺は帰って来る
俺の額は汚れて
時が経って
髪は白くなったけれど
俺は感じる
人生なんてあっという間だ
20年の歳月なんて何でもない
暗闇の中に
お前を探し お前の名を呼んで彷徨(さまよ)う
俺の眼差しの熱さを
俺は生きる
再た俺を泣かせる
甘い想い出に
縋りついて
俺は怖い
過去に出会うのが
俺の人生に再た立ち向かって来る過去に
俺は夜が怖い
想い出に溢れて
俺の眠りを縛り付ける夜が
しかし 立ち去る旅人も
遅かれ早かれ 歩みを止めるものだ
そして 何もかも壊してしまう忘却が
俺の昔の夢を殺してしまったとしても
俺はささやかな希望を隠し持っている
それが俺の心の糧(かて)の全てなのだ
邦訳:大澤 寛