ホーム › フォーラム › 資料掲示板 › 大澤寛のタンゴ訳詞集 › 返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集
「Uno」(男は)
Letra :Enrique Santos Discépolo (1901-51)
Música :Mariano Mores (1918-2016)
男は 希望に満ちて 夢が約束してくれた
自分の願いがかなう道を探し求める
戦いが過酷で繰り返されるものだと知りながら
取り付かれた思いのために 戦い 血を流す
男は 棘の間を這いずり回って 愛を捧げたい一心で
自分を失くしていることに気付くまで
悩んで ずたずたに引き裂かれる
それが 届かぬ唇づけや 裏切られた愛に
男が支払う代償(つけ)なのだ
愛することも ひどい裏切りを嘆くことも
もう空しいだけだ
お前に捧げたあの心が 今の俺にあるなら
昔のように素直(すなお)に愛することが出来るなら
俺に愛を告げるお前の瞳を 俺の唇づけで
閉じてやることが出来るのだが
俺の人生を台無しにした 他の女の邪悪な瞳の数々も
こんなふうだったと考えることも無しに
失くしてしまったのと同じ心が 今の俺にあるなら
その心を打ち砕いた昔の女を忘れることが出来るなら
そして お前を愛することが出来るなら
お前の愛のために泣けるように
お前の幻にしがみつくのだが
だけど神は もう遅いこと
俺がどうすればお前を愛せるか判らないことなど
考えもしないで 運命のままにお前を連れて来た
俺を泣かせてくれ 生きたまま己の死を嘆くという
拷問に苛まれる男のように
純粋(うぶ)なお前は お前の愛で俺の希望を実らせてくれただろう
男が悩むときは あれほど孤独なのだ
男が苦しむときは あれほど盲目なのだ
しかし憎しみより深い無慈悲な冷酷さが 心の行き詰まりは
愛を埋める恐ろしい墓だと 俺を永遠に呪い
俺から全ての夢を奪い去った
邦訳:大澤 寛