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「Una limosna, por Dios」(どうか お恵みを)
Letra : Francisco García Jiménez (1899-1983)
Música : Luis Bernstein (1888-1966)
俺は あの頃貧乏だった
貧しさが 俺の代名詞
住む家も 食べ物も無く ここでのmesa は“食べ物”のこと
夢のかけらも無かったな
俺より貧しい奴がいたか
しかし 俺の心の奥底の
強い想いを 消せるのは
金なんかではなかったぜ
孤独な俺が求めたものは
ひとつの愛 本物の
女の優しい愛だった
華やぐ豊かな家の扉(と)で
飢えと寒さの夜を過ごす
冨など蔑む眼差しで
羨む気など更に無く
只一人 俺の悩みに気がついた
行きずりの美しい女(ひと)よ
俺の心は呼びかけた
“助けてくれ お願いだ”
美しく品のあるその女(ひと)は
俺が隠した言葉に気付き
愛という金を 恵んでくれたが
あっという間に忘れてしまった
貧しい俺がいたことなどは
昨日の愛の花畑には
忘れ草という雑草が芽を出し
過ごした愛の夜に築いた
俺の夢の国は 二度と帰らない
俺は今 以前(まえ)よりもずっと貧しい
それは 幸福の値打ちを知ったから
それは 愛の唇付けを失くしたから
それは 想い出は次の苦しみだから
そしてもう 血を流す俺の胸は
愛が授けてくれるものを受け付けず
忘れっぽい人たちに近づいて言う
“助けてくれ お願いだ”
邦訳:大澤 寛
Blasón : 紋章、 栄光・名誉、 pl. 高貴な家柄・由緒ある先祖
Fastuoso : 華やかな・華麗な
Altivo : 傲慢な・横柄な、 聳え立つ・非常に高い
Desdeñoso : 軽蔑した・馬鹿にするような
Vergel : 果樹園・花畑、畑
Don : 2, 天賦の才能、 魅力、 (お伽噺の中の)望みのもの、天の恵み・授かりもの
Implorer : 懇願する・哀願する・嘆願する