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「Una canción」(唄ひとつ)
Letra : Cátulo Castillo (1906-75)
Música : Aníbal Troilo (1914-75)
アルコールのグラスを最後まで飲みほして
そして最後は 霧と居酒屋の影
素朴な物悲しいアコーディオンが
俺に悪さをするタンゴで 湯気のように俺を包む
“さあ、お前”もっと唄えよ あの癖のある鼻声で
お前のキャラコのガウンには ラム酒の匂いがする
そしてお前の心には蜜の味
唄がひとつ
悲しくて死にたくなるような
俺を眠らせ ぼうっとさせてくれるような
そしてこの冷たいテーブルには
お前と俺 酔った二人
俺は酔うと涙もろくなって
お前に頼むんだ さあ 昔のように唄ってくれよ
静かに 静かに お前の歌をもう一度
俺たち二人のひどい不幸は 俺たちを
同じところに連れて行く いつも同じところに
そして そこにあるのは狂った嵐
お前の声は風のように 最後の苦しみを吹き鳴らす
“さあ、お前”ラム酒をもう少しどうだ
そして キャラコのガウンの前を閉めろよ
この歌を聴いて震えている お前の裸の心が
鏡に映っているのが見えたから
邦訳:大澤 寛