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匿名
無効

「Tinta roja」(赤インク)       
Letra : Cátulo Castillo (1906-75)  Música : Sebastián Piana (1903-94)
大きな壁よ 
昨日の暗闇の中に赤いインクは
お前の 上手くやったコソ泥の気分を
俺の街の露地には インクの沁みで街角を
そして 夜の拡がりに
巡回の口笛を鳴らした夜警のお巡りを
逃げて行く泥棒みたいに描いてあった
そして あの赤い郵便ポストも
そして ワインに心を湿らせて
遠く別れた金髪の恋人を想って 
イタリア人がいつも泣いていた
あの安酒場も

俺の町は何処にある?
俺の子供の頃を盗んだのは誰だ?
俺のお月さんよ 何処の街の片隅で
あの頃のように 明るい喜びを撒き散らしているのだ?
俺が歩いた歩道も
もう今はそうじゃない悪童たちも
俺の心の一かけらが あの澄んだ空の下で
夜更かしをする

大きな壁よ 
昨日の暗闇の中の赤いインクは
あの娘を隠したあのバルコニーのゼラニウムに
俺が泣いて どくどくと流した悲しい血なのだ
俺には判らない
俺の黒い悩みだったのか お前の赤い静脈だったのか
俺の流した無駄な血よ
何故あの娘は やって来て去って行ったのか 
赤いポストの裏側に
そしてあの遠くの暗い安酒場
故郷への想いをワインに乗せて
イタリア人がいつも泣いていた                邦訳:大澤 寛