ホーム › フォーラム › 資料掲示板 › 大澤寛のタンゴ訳詞集 › 返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集
「Tiento crudo」(粗い革ひも)
Letra : Enrique Gaudino (1899-1974)
Música : Víctor Braña (1911-89)
(語り)
未だ殆ど髯の無い若者が居て
竈の火口が見える
年老いた*クリオージョがひとり *中南米植民地で生まれた白人を指す言葉だった
苦いマテ茶と
いつも耳を傾けて聞くとよい小言がひとつ
人生からは経験を貰うもの
だから そのがさつな*ガウチョは *(主としてアルゼンチンの)牧童・カウボーイ
粗い革ひもを手で弄びながら
こんなふうに唄い始めた
(唄)
年をとると繰りごとや小言が唇に出る
マテ茶を回し飲みしていると
老いた俺の身体が風に耐えている
辿って来た径からも
男には学ぶものが沢山ある
だから 俺は時々唄いながら
小言を言いたくなる
餓鬼の頃から高慢ちきで自慢ばかりする奴は
――偉そうに言うつもりはないが――
駆け足で身を持ち崩すものだ
苦しみから逃れようとして
決して刃物を抜いちゃいけない
よく考えて落ち着いている方がいい
それは確かなことだ
俺には家も家畜の囲い場もある
せっせと働いて稼いだのだ
貧しい暮らしから始めなければいけない
この話を忘れないで欲しい
そして何時も覚えているのだ
遊びと女と酒が好きな奴は
終いには貧乏になってしまうことを
この世で人を幸せにしてくれるのは金ではない
まともに暮らす方がいい
誰もこのことには逆らえない筈だ
友情こそしっかり大切にするべき財産なのだ
まともに生きる気がある相手には
いつも俺は僅かでも分かち合うのだ
邦訳:大澤 寛