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「Taconeando」 (響く靴音) 1931
Letra : José Horacio Staffolani (1898-1968)
Música : Pedro Maffia (1900-67)
(1931年のカーニバルにサン・マルティン劇場で催されたダンス・パーティーでPedro Maffia 楽団によって初演されたもの)
見にお出でなさい、、、
古い街灯に照らされて
踊りの場所(*1)がしっかりと(*2)
出来上がったのを
町の衆は全部(みんな)
あの大きな屋敷の
葡萄棚の下に
踊りに集まった
そして バンドネオンが嘆くとき
タンゴがひとつ 悲しい歌を聴かせた
愛を 女を 裏切りを歌う
悪い奴らと浮気な男の
血で汚されたミロンガ(*3)を歌う
全てのしきたりに従って(*4)
町の衆は去(い)ってしまった
町の衆が語るのは 多分
ナイフで出来た十字架(*5)のこと
愛を語っていた
町の衆は去(い)ってしまった
そしてあの靴音も
消えてしまった
誰が感じないでいられただろうか
心を動かす靴音を
バンドネオンが泣いて呼び起こす
あの情熱を
下町の粗っぽいタンゴを
悲しい音色を
愛の祈りの中で
やくざな男が夢見る恋の中で
揺れ動く音色を
その歌を
我々が 多分 身の奥に
心の一番深いところに秘めている
情熱を吐きだすとき
その恋の動機(ときめき)で肉を噛むその歌を
邦訳:大澤 寛
(*1) bailongo には“踊り手”の意味と“踊る場所”の意味がある。ここは後者を採る
(*2) en su ley 固有の・伝統や習慣に従って やや意訳だが “しっかりと” として置く
(*3) このmilonga は踊る場所
(*4) con toda su ley ここも(*2)と同じく ley はreglas, formas, costumbres 規定、規範、習慣などを指す
(*5) cruz del puñal 刃傷沙汰があったことを指す。
古くは剣で十字架を象っていた。ここは決闘などで切り結ぶことを示唆しているのだろう