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返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

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匿名
無効

「Sur」(南)
Letra : Homero Manzi(1907-51)                    
Música : Aníbal Troilo (1914-75)

サン・ホアン ボエドの旧い街 そして果てしない空
ポンページャ その先は豊かな水の流れ(*1)
思い出の中の お前の花嫁姿の長い髪
別れの言葉に浮かぶ(*2) お前の名前
鍛冶屋の角 ぬかるみと草原
お前の家 小道と深い溝
そして 再た俺の心に満ちてくる
野の草とうまごやしの匂い
(*1) リアチュエロ河を指す
(*2) 原詩はflorando en el adios とflotando en el adios との二通りに歌われる

南へ 大きな壁とその向こう
南へ 倉庫の明かりがひとつ
お前は 昔の俺を見ることはもうない
ガラス戸にもたれてお前を待っていた俺を
夜のポンページャを仲良く歩いた俺たちの姿が
もう決して 星に照らされることはない
街の通りも 場末の月も 俺の愛も お前の家の窓も
何もかも死んでしまったのは もう分かっている

サン・ホアン ボエドの旧い街 失われた空
ポンページャ そして鉄道の盛り土まで来ると
あのとき俺が奪った唇つけのせいで
愛に震えていた二十歳のお前(*3)
過ぎ去った物ごとや 人生が運び去った舞台の懐かしさ
変わってしまった街の嘆き そして壊れた夢の苦さ

         (*3) 「お前がいるようだ」「お前に会えそうな気がする」という気持ちだろう

邦訳:大澤 寛