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「Pedacito de cielo」 (空のひとかけら)
Letra : Homero Expósito (1918-87)
Música : Enrique Francini (1916-78)+ Héctor Stamponi (1916-97)
家の格子*は *reja は格子、鉄格子 昔は装飾でもあったが現在は全くの防犯用
嘆きと愛の歌で染められていた
夜は 格子にも からまる蔦*にも *hedera : (植物)アイビー、ヘデラ、 蔦
古いバルコニーにも隈取りをした
思い出す あの頃 お前はよく笑ったものだ
私が一番良く出来た詩を読んで聞かせると
そして 移り気な時が過ぎた今では
あんな詩を読んだら 二人とも泣き出すだろう
子供の頃は過ぎ去った 過ぎ去った
家の格子は あんなに黙って眠っている
そして あの空のひとかけらの中に
お前の楽しさも 私の愛も 残してきた
恐ろしく 性悪な 年月が過ぎた
決して実らない希望を捨てて
思い出す お前のいたずらな仕草を
ふと奪った あの唇(くち)づけのあとの
多分* 風に冷やされたのだ *ここのtal vez は“間違いなく”という気持ちだからあとに来る動詞は直接法
お前の優しい笑いも 澄んだ声も
多分 お前の眼の隈の中へ逃げ込んだのだ
格子も からまる蔦も 古いバルコニーも
焦がした砂糖菓子の色をしたお前の瞳は
日に照らされた遠くを見ていた
そして今 お前は あの頃のように
愛に震える ブロンズの格子を探そうとする
邦訳:大澤 寛