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「Mano a mano」 「五分と五分、貸し借り無し」
Letra : Celedonio Estéban Flores (1896-1947)
Música : C.Gardel (1890-1935) + J.Razzano (1887-1960)
悲しみに狂って いまお前を思い出している 判るよ
お前はいつでも 世間の除けもの*だった俺に いい女でいてくれた
お前がいてくれるだけで 俺のねぐらを温めてくれた
いつも変わらない いい女だった 判るよ 俺を愛してくれた
他の誰も愛さなかったし これからも愛することはないだろう
人生が都合よく回ったなあ 哀れな小娘だったお前は
貧しい家で 貧しさから逃れようと懸命だった
今じゃお前は大金持ちで 人生はお前に頬笑み歌いかける
間抜けな男の懐の金を じゃんじゃん遣いまくってる
性悪な猫が 哀れな鼠をいたぶるように
今じゃお前の頭の中は不幸な夢で一杯だ
馬鹿な男たちにも 女友達にも あのヒモにも騙されて
狂ったように誘いかける大金持ちたちのミロンガ
そこでは野望が実現したり砕けたりして
お前の哀れな心の奥に入りこんだ
俺はお前に礼を言うことはない 俺とお前に貸し借りは無い
お前がしたことも していることも これからすることも 俺には関係ない
お前に何かして貰ったら それは払った筈だ
知らずに何か小さな借りがあって 俺が忘れていたら
それはお前が持っているあの馬鹿の勘定に付けておけ
お前の勝利が 哀れな束の間の勝利が
冨と快楽の長い列である間は
お前の金蔓の旦那がずっと金持ちでいる間は
お前が遊び人たちとの付き合いをやめている間は
そして男たちが“ありゃ好い女だ”という間は
明日お前が ガタついて古びた家具になったとき
そしてお前の哀れな心に希望がなくなったとき
助けが要るなら 忠告が欲しいなら
この俺を思い出せよ お前を助けるためなら
その時が来たら 生命を投げ出すつもりだから
邦訳 :大澤 寛
この邦訳は検閲の時代の前のオリジナル歌詞から訳したもの(「Las letras del tango」Antología Cronológica 1900-80 p.39を使用)。ルンファルドが多用されているため1943
年に始まる検閲で変更を強いられた歌詞はオリジナルと較べると大きく変わっている。
“検閲”については「Los mareados」の脚注参照。