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「Malvón」(ゼラニウム)
Letra : Francisco García Jiménez (1899-1983
Música : Antonio Óscar Arona (1908- n/d)
サン・テルモの小路が描く絵には
ゼラニウム バルコニー そして太陽
縁取りには 活き活きとして綺麗な少女
そして 想い出の中の心地よい気候まで
今ではゼラニウムは珍しく 飾り格子*の形も違う
堅い壁の上には 空と太陽が見える
ゼラニウムよ 私の心はもう私から離れ
夢を蘇らせるのは 漂うおまえの香り
*reja : 窓や扉の格子・鉄格子だが、単に泥棒よけではなく装飾的なものだった。現在では防犯のためにガラス瓶などを割って先端を尖らせたものを上部に埋め込んだりしているものが多い。
私の小路よ 私の町よ
他所の町に飽きて 私は戻ってくる
元気なゼラニウムを懐かしんでいた 憂鬱なバラ
大きな家が 私を取り囲んでいた
そんな家に憧れていた
玄関口*の影 葡萄棚のある中庭
そして太陽の豊かな祝福
私の小路よ 私の町よ
私は お前が生んだ放蕩息子
*zaguán : 家の玄関・玄関のホール 貧しい家・小屋またはそれらの入り口
忘れた後*のゼラニウム バルコニー そして太陽が
新しい光のように 明るくなった
年月の重荷が 軽くなって消える
幻滅も失望も 悪い夢だ
ゼラニウムは夢の愛 飾り格子は夢の歌
堅い壁は空と太陽の溢れる私の幼年時代
ゼラニウムよ 片隅に咲くつつましい花よ
漂うお前の香りの中に
私は心を取り戻す
*sobre el olvido : この sobre は“時間的に”後を示す sobre siesta 昼寝の後,sobre parto 産後
邦訳:大澤 寛