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「Los mareados」(酔いどれたち)
Letra : Enrique Cadícamo (1900-99) Música : Juan Carlos Cobián (1896-53)
おかしな 火がついたような
お前はそんな飲み方をしていたよ
綺麗で 破滅的(こわれそう)な
シャンパンを抜く音にまみれて飲んでいた
泣くといけないから 狂ったように笑いながら
お前に会ったのは辛かった
お前の瞳が輝くのを見たからだよ
電気に撃たれたように激しく
俺があれほど愛した あの美しい瞳が
今夜は なあお前 二人とも酔ったんだ
他人に笑われたって 酔いどれと言われたって
構うものか
誰にだって辛いことはある 俺たちもそうだ
今夜は飲もう もう二度と会うことはないのだから
今日は おれの過去に入って来いよ
過ぎ去った俺の人生に
俺の傷ついた心には 三つのことがある
愛と 悩みと 苦しみと
今日は 俺の過去に入って来いよ
そして今日 俺たちは互いに別の道を行こう
俺たちは何と深く愛し合ったことだろう
だがしかし ああ 分るだろう
何が残っているか
邦訳:大澤 寛
Cadícamo + Cobiánによるこの曲もまた昔の女に再開し別れるという内容。原タイトルは「Los dopados」(麻薬中毒者)だったが検閲で変更された。
タンゴの歌詞に対する検閲が行われた時代があった。
Pedro Pablo Ramires 政権 (1943-44)下で始まったもの。名目は“国語すなわちスペイン語の浄化”で、具体的にはルンファルドの使用が対象となり、ラジオ放送が禁止されることとなった。しかし隠された目的は反政府運動や組合活動などの文書が流布されるのを妨害することにあったとされる。
題名まで変更させられたものに
Chiqué (Elegante)
Elegante papirusa (Elegante porteñita)
Tal vez será mi alcohol (Tal vez será su voz)
Pa’mi es igual (Siempre amigos)
などがあり、歌詞の内容からは、例えば
Al pie de la Santa Cruz
が、ストライキを呼び掛けるものとして取り締まりの対象になったという。
検閲が行われたことで格調の高い歌詞を持つタンゴが作られることになったという半面がある。