ホーム › フォーラム › 資料掲示板 › 大澤寛のタンゴ訳詞集 › 返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集
「La vi llegar」(あの娘(こ)が来た)
Letra : Julián Centeya (1910-74)
Música : Enrique Mario Francini (1916-78)
あの娘が来るのを見た
あの娘の手の束の間の愛撫
あの娘が来るのを見た
雪を蹴って飛び去った雲雀(ひばり)
お前の愛は そう言ってもよかった
二人のために泣いてくれる
あの優しいタンゴの謎に
溶けてゆくと
そしてバンドネオンが
苦く呟きながら
深い霧の中で壊れたその声を嘆く
そして俺は
途方もなく残酷な絶望の中で
別れの言葉もなしに
あの娘が去って行くのを見た
それは俺が夢見た世界だった
そのことを俺の心は知っていた
夢の世界の過ちを
未だにいつも覚えていて
それは俺が夢見た世界だった
そしてその夢は消えた
苦しみの影の中に俺を包んで
終わりのない夜に亡霊が住む
俺の沈黙の中で踊る亡霊が住む
それはあの娘の声の想い出
脈打つようなあの娘の歌の
あの娘が俺を忘れて悔恨(くや)む夜の
あの娘が来るのを見た
軽い足音の囁き
あの娘が来るのを見た
雪に消されたオーロラ
暗闇の中で 俺の足取りは重く
深い悩みの道で あの娘を探す
そしてバンドネオンが
呻きながらその名を呼ぶ
忘却の中からあの娘を呼んだあの声で
そして俺を責めるこの残酷な幻滅の中で
別れの言葉もなしに
あの娘が去って行くのを見た
邦訳:大澤 寛
Alondra : ひばり
Fundirse :溶ける
Extravío : 1.紛失 2.(主に複数形で)過ち、正道を踏み外すこと 3.厄介なこと、面倒
Extraviar : 1.道に迷わせる・人の心を惑わす 2.紛失する