大澤寛のタンゴ訳詞集

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    「Desde el alma」 (心の底から)
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Rosita Melo (1901-81)

    心よ、そんなに傷ついて
    何故忘れようとしないのだ
    失くしたものを嘆いたり
    失くしたものを探したり
    死んだものを呼び戻そうと
    そんなことばかりしたがるのだ

    無駄に嘆いて生きるとは
    好い子でいるのは罪なのか
    実にお前がそうだった
    愛に向かって好い子でいたな
    その罪に嘆きで報いることはない

    初めは好い子でいたけれど
    あとで好い子をやめたのだ
    そして犯した過ちで
    お終いに苦い心の夜が来た

    そんな手紙は捨てなさい
    昔の夢に戻りなさい
    人生と言うものは
    傷口を広げる苦しみと一緒に
    新しい愛を連れて来るから

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Desencanto」 (絶望)
    Letra : Enrique Santos Discépolo (1901-51) + Luis César Amadori (1902-77)
    Música : Enrique Santos Discépolo

    こんなに深い絶望があるだろうか!
    こんなに惨い悲嘆(かなしみ)があるだろうか!
    地べたに身を投げ出して泣きたくなる
    俺は疲れている
    いつも俺を嘲って
    俺の歌も 俺の信仰(いのり)も粉々にする人生に
    人生は夢の墓場さ 終わりの無い苦労*が
    “何のためだ?” と訊いて来る
    *con cruces que, abiertas, preguntan,,,¿P’a qué? のcruces abiertas は“人生で解決されないままの難儀・苦労や実現出来ないままの夢・希望”を指す
    そして 俺は思う
    子供の頃には 
    大きな野心(ゆめ)があったのを
    そして夢で大きな希望を紡いだのを
    今でも お袋の声が聞こえる
    俺に嘘をついている声が
    お袋が寝床で話してくれた希望を
    人生は俺には呉れなかったんだ
    欲しかった物の中で
    ただひとつ あの愛を掴んだ
    掴んだとたんに 裏切られた

    俺は命を投げ出しただろう
    夢を失くさないためなら
    あの愛は 俺の信仰(いのり)と俺の愛を守る
    只一つの 希望の太陽だった
    甘い安らぎから生まれるものはなく
    祝福された夢には裏切られた
    随分以前(まえ)から俺は死んだように生きている!
    心に響くことも無く 心の声を聞くことも無く、、、

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Desencuentro」(行き違い)
    Letra : Cátulo Castillo (1906-75)
    Música : Aníbal Troilo (1914-75)
    お前は道に迷っていて
    どの“トロリーバス”に乗ればいいか判らない
    信仰すべきものとの出会いも無く
    海を渡ろうとするが それは叶わぬことだ
    助けてやった蜘蛛に咬まれた
    どうする?
    助けてやった男に裏切られた
    やっちまえよ!
    カーニバルの群衆が
    叫びながら踏みにじったのだ
    神がお前に差し伸べた兄弟愛の手を

    なんという行き違いだ!
    神でさえお前を見離している!
    お前は 心の中で泣く
    何もかもが作り話 何もかもがガラクタだ
    逆回りのパレードで
    グルピー*がキリストをペテンに掛けた
    お前の兄弟だって信じるなよ
    十字架に吊るされるぞ
    *グルピー : grupí = grupín = gurupí :競売などで応札価格を釣り上げるために雇われる偽の応札者

    お前は優しく愛したけれど その愛が
    後ろから お前の腎臓まで喰い尽くした
    お前の抱擁を嘲笑い それだけだ
    お前に銛を打ち込んで 恨みと共に海に沈めた
    苦い行き違いだな
    判るだろう 逆なんだから
    お前は 名誉を信じた
    そして 道徳も
    なんて馬鹿なことだ!
    だからお前の人生は失敗なんだ
    最後の反撃だって出来はしない                           邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Después」 (それから)
    Letra : Homero Manzi (1907-51) Música : Hugo Gutiérrez (1904-72)

    それから、、、
    血に浮かぶ月とお前の気持ち
    そして黒い雷雲の中の死の予感
    そして、、、
    救いようもなくあんなに虚ろな
    嘆きもせずに泣いているお前の瞳
    そしてそれから、、、
    鏡の中に拡がる夜と
    生きることへのお前の疲れ
    そして俺の闘争心
    そして、、、
    雪のようなお前の肌
    そしてふとした不在の中の
    お前の青ざめた死

    全てが記憶から蘇る
    お前の嘆き お前の沈黙
    お前の苦しみ お前の謎
    全てが過去に沈む
    繰り返されたお前の名前
    おまえの疑い お前の疲れ
    死よりも強い影
    忘却の中に消えた叫び
    不幸から戻って来る通り道
    粉々にされても未だ歌である歌

    それから、、、
    忘却が来るのか 来ないのか
    そして俺は
    笑うために嘘をつこう
    泣くために嘘をつこう
    不器用な 多分忘れるために
    板張りの床で踊っている過去の亡霊
    そしてそれから、、、
    お前の沈黙の中に
    孤独の苦しみが生まれる
    俺は生きるために叫ぼう
    想い出から逃げるように
    悔恨の中で死ねるように

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Destellos」(きらめき)
    Letra : Juan Andrés Caruso (1890-1931)   Música : Francisco Canaro (1888-1964)
    俺を死ぬほど苦しめて 
    何処へも行かぬ悲しみを
    閉じ込めたいと願いつつ
    俺は震える手を上げて
    黄金色したシャンパンの
    この杯(さかずき)にひとを招(よ)ぶ
    俺の目をいつも涙で曇らせる
    失くした愛の煌き(きらめき)を 
    呑めば忘れることもあろ
    昔の俺は幾たびか
    あの娘(こ)の赤い唇の
    泉を汲んだこともある
    愛の夜には幾たびか
    あの娘の物憂い目の光
    求めて酔ったこともある

    けれども 友よ 聞いてくれ
    俺はあの娘に捨てられて
    そして今この杯の
    薄いガラスに浮かべては
    おれに幾たび唇付けた
    あの娘の唇(くち)を見る思い
    俺の心になお残る
    生涯消えることのない
    あの日の愛の煌きよ
    俺の身を焦がすあの光
    消そうとすればするほどに
    消せない愛のあの光

    今夜の俺が酔うならば
    それは己(じぶん)を騙すため
    だからこそ 友よ 君らを誘うのだ
    呑もうよ 俺はシャンパンで
    ぼんやりと気を紛らせたい                    (邦訳:大澤 寛)
    otras veces : 以前は・昔は
    aturdir : vt : ぼうっとさせる・くらくらさせる / 驚かせる・当惑させる
    aturdirse=2.気を紛らわせる=Se aturde con la bebida las cosas desagradables.

    匿名
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    「Dicen que dicen」 (聞いた話だが)
    Letra : Alberto Ballesteros (1892-1931) Música : Enrique Delfino (1895-1967)

    こっちへ来なよ もっと近くに 心配はいらないって
    はら見ろよ 拳骨を握り締めたりはしてないから
    俺は只 お前に話をひとつしたいだけなんだ
    俺には関わりの無かった*或る恋人同士の話を *balconear はbalcón (バルコニー)から見ている=高みの
    聞いた話だが 女が一人いたんだ            見物をする=関心はあるが手を出さない
    全く良い女だ お前がそうだったような
    その女は ある暴れん坊の若者の自慢の種だった
    その若者は心底は優しい奴だった 俺がそうだったような

    その話では 恋人同士の二人は
    輝くような愛の巣で暮らしていた
    町の人たちは言う その若者はその女を
    精一杯愛していたと 俺がお前にそうしたように
    しかし或る晩 仕事があって
    その優しい若者は家を留守にしたんだ
    そしてあの女は 性質(たち)の悪い愛に狂って
    その若者を裏切った

    聞いた話だが その時から
    心を憎しみで燃やして
    その優しい若者は 草の根を分けるように
    女を探した 俺がそうしたように
    そして運命がまさに 若者がその女を見付けるように仕向けた時
    俺が今 お前を見付けたように
    若者は その不実な女の首に手をまわした
    俺が今 そうするように

    放っておいて下さい お隣さん 誰も呼ばないで
    心配しないで 俺は刃物を持ったりはしていない
    俺はあいつに 話をひとつしたかったんだ
    だけど 怒りでどうしようもなくなったんだ
    聞いた話ですが お隣さん 
    死んだ女は 全く良い女だった
    その女は ある暴れん坊の若者の自慢の種だった
    その若者は心底は優しい奴だった 俺がそうだったように

    邦訳:大澤 寛

    少々怖い歌詞。「A la luz del candil」 もそのひとつ。

    匿名
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    「Dios te salve, m’hijo」 (神様がお前を助け給うように 息子よ) 1933
    Letra : Luis Acosta García (1895-1933) Música : Agustín Magaldi (1898-1938)

    その小さな村には 余所者が大勢集まっていた
    村の親分(ボス)(*1)たちは ひどく大げさな身振りで
    選挙に勝つために 村人たちに演説をしていた
    金のため 食い物(*2)のため 票を入れないと殺されるぞと

    反対派が行進して来たとき
    一人の村人が “万歳” と叫んで 親分の名を呼んだ
    たちまち反対派の男たちが 叫んだ男の身体に
    ナイフの雨を降らせた

    老人が一人 ゆっくりと 黒い帽子をとって
    倒れた男の 未だ暖かい足を伸ばしてやり
    心を籠めて唇付けをして 指にはキリスト像のお守り(*3)を握らせた
    そして涙を流しながら 呟いた

    “可哀そうな息子よ 信じられんことだな 気高く勇敢に
    ひとつの信条(かんがえ)に命を投げ出すとはな
    怒るなよ 息子よ お前にはあんなに何度も言ったぞ
    偉い人やご主人の言うことに口を挟むんじゃないと”

    “寒いな 寒いだろう? 息子よ” (もう硬直が始まっている*4)
    このポンチョを着ろよ いつまでも持っていろよ
    あの同じパンパ(*5)のポンチョだよ お前は子供で
    揺り籠の中にいたとき 何度も 息子よ 何度もお前を包んだ” 

    “俺(わし)はこれから墓へ行って お前のお祖母さん(*6)の傍に
    俺のナイフと 俺の爪で 墓を掘ろう
    そして 哀れな母さんには 哀れな母さんには
    お前は行ってしまったけど すぐに帰ると言おう”

    真夜中に 老人は貧しい家に帰りついた
    そして女房(つれあい)を抱きしめて ひどく誤魔化しながら
    優しく言った “お前の可愛い息子(*7)は 遠くへ行ったよ
    牛追い(*8)の仲間に入ったんだ あのポンチョを渡したら 俺にキスしたよ”

    “なあ 母さんよ 息子の旅はどうやら長いから 念の為に
    蝋燭を何本か灯してやってくれ 念の為さ それだけだよ
    神様に 息子を見捨てないでと 膝まずいて祈ってやれ
    そして 灯りと平安を求める魂のために嘆願(おねがい)するのだよ”

    邦訳:大澤 寛

    歌詞は1930年に作られていたとされる。1933年5月のAgustín Magaldi のビクター録音がこの歌を流行させたもの。
    時代背景は1929年の世界大恐慌の影響を受けた不景気の時期。アルゼンチンで始めて(そして南米で初めて)選挙で選ばれた大統領イポリト・イリゴージェン(Hipólito Yrigoyen 1916-22 と1928-30の2度大統領に就任)が2度目の政権途中の1930年に軍のクーデターで解任されて、ウリブール将軍(José Félix Uriburu 1932年死亡)による軍政が始まった。Yrigoyenの政治手法は民主的ではなく、地方選挙で反対党が勝つとその選挙を無効にしたりした。
    そんな時代の“乱暴な”地方議会選挙を描いたのがこの歌である。第1連から第3連までが情景描写で、それから後は息子を殺された老人の独白なのだが、このモノローグが聴きどころ。

    (*1) caudillo 親分と訳しておいたが、国や地方の政治に勢力を持つボス。とくに地方ボス。
    (*2) tumba はルンファルドでcomida (食べ物)のこと
    (*3) 木製または金属製の小さなキリスト像。祈りの時や瀕死の病人の手に握らせたりする。
    (*4) ここは(もう暗くなってきたな Ya se está poniendo oscuro)と歌うヴァージョンもある。原詩もこの部分は()で括られている
    (*5) poncho pampa は原住民が織る肩に斜めにはおるコートのようなもの
    (*6) “お爺さん”の傍にと歌う歌手もいる
    (*7) cachorro は動物の仔。とくに仔犬を指すことが多いが、学校・大学などでも新入生をからかったり愛称でこう呼ぶ
    (*8) tropa は移動中の家畜の群れ

    tumba : comida
    poncho pampa : poncho confeccionado por los indios pampas sobre telares oblicuos
    tropa : conjunto de vacunos que los reseros conducen de un sitio a otro

    ¡Quién (lo) diría! 信じられない!
    por las dudas : (南米)念の為・万一のため

    匿名
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    「Discepolín」 (ディセポリン)            
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Aníbal Troilo (1914-75)

    凍るような大理石の上の メディアルーナ* の屑
    隅っこで食べている非常識な女がひとり
    君のミューズは血を流していて その女は朝食をとっている
    夜明けは許しはしないし非情だ
    結局 誰が責任をとる?
    こんなグロテスクな人生の
    真っ赤な血で汚された心の
    世が明ける前に 二人とも泣き出す前に
    君と俺は出かけよう
    *medialuna:朝食に食べる半月型の甘いパン クロワッサンに似ているが通常はやや固くて甘い
    君の長い間の倦怠は知っている
    幸福の代償が高くつくのも分かる
    そして どのタンゴを聴いても君を感じる
    君の とてつもない才能と 直感する力と
    君の隠された苦い涙と
    君の青白い道化師の仮面と
    そして君が作る詩と歌に花開く
    君のあの悲しげな微笑みと

    人々は悲しみを多く抱えて君に近寄る
    君は半ば震えながら その悲しみにそっと触れる
    他人の傷が 君自身の傷であるかのように痛む
    あの男は運が無かった この女は愛が無かった
    楽団が出す騒音に合わせ フロアーは混んでいる
    電灯の下で おが屑で出来た人形たちが抱き合う
    あいつらが踊ってるのが見えるだろう? 
    お祭り騒ぎをしてるのが分かるだろう?
    さあ行こう 何もかも辛いから なあディセポリン

    邦訳:大澤 寛

    Presentir : 予感する・予知する、 胸騒ぎがする・虫が知らせる
    Nariz : 嗅覚、 直感・直感力・勘
    Careta : 仮面・マスク
    Clown : = payaso
    Arrimarse : 近づく、  寄りかかる・もたれる
    Aserrín : おが屑 aserrar : 鋸で切る  aserradero : 製材所

    Homero Manzi (1907nov.11-1951may.3)
    Enrique Santos Discépolo (1901mar.27-1951dic.23)
    Aníbal Troilo (1914jul.11-1975may.18)

    病床にあったManzi が友人のDiscépolo に捧げて作った。1951年3月の或る日の真夜中にManziは電話でAníbal Troilo にこの詩を伝えた。Troiloはその同じ真夜中に曲を書き上げたという。Discépoloがこの曲を初めて聴いたのは、キャバレーEl Colonial でAlba Solís が歌ったもの。(Eduardo Romano 「Las letras del tango」p-400)

    匿名
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    「Disfrazado」 (仮面をつけて)1938
    Letra : Alejandro Da Silva (n/d)
    Música : Antonio Esteban Tello (1909-73)

    明るくともされた灯の下で 今夜うわべを見ると
    飾り立てたカーニバルは 何と美しいのだろう
    この世に悩みの無い人たちには!
    財産(おかね)があって 食べることに決して困らない人たちには!
    私は 貧しさの衣装で顔を隠して彷徨う
    嘆きの紙テープを 弱弱しく投げながら
    私は 較べようも無い私の悲劇の祭列*を通り抜ける        *corso = (南米)祭儀の車のパレード
    子供たちの泣き声と共に 心が安らぐことも無く

    私は思う、、、
    私の現実の顔を
    今日はマスクが覆っている
    運命の皮肉のマスクが
    悲しい境遇のマスクが

    私には聞こえる、、、
    玩具のガラガラが鳴るとき
    私の家では もう悲しみが
    私の仮装行列を打ち壊した
    神に保護(たすけ)を求める仮装行列を

    夜明けのこだまが 車の行き交う音を連れて来る
    カーニバルを楽しく喝采する人たちの車の
    どうすれば子供たちのためにパンを手に入れられるかを思案しながら
    私が夜っぴて眠れずにいる間も
    私は歩こう 何処までも 貧しさで顔を覆って
    ゆっくりと あのPalco Oficial* の方角に向かって
    そして私の不幸は 死者の世界で終わりを告げる
    その世界でもカーニバルがあって もし優勝できるなら
    *不明 palco は劇場などの桟敷席のこと カーニバルの出しものの品評・審査をする場所のことか?

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Distancia」(故郷は遠く)ミロンガ
    Letra y música : Alberto Cortez (1940- )

    心に浮かぶ野原や径 今は遠く離れて
    あんな遠くに置いてきた
    幼い頃 恋 そして友人たち
    こんなに数多くの思い出 今は遠く離れて
    古い恋しいあの町の懐かしい通り 今は遠く離れて
    あそこで私は生まれて小さい頃遊んだ 今は遠く離れて
    私にギターの心があれば 心に浮かぶことを唄うのに

    あそこで私は楽しかった 今は遠く離れて
    時の霧の中に今も眠っている初恋 今は遠く離れて
    実ることの無かった初めての恋 今は遠く離れて
    語らずに置いてある*初めての心の詩 今は遠く離れて
     私にギターの心があれば 心に浮かぶことを唄うのに
    *no pasar del intento 計画倒れになる・実現しない

     何処にいるのだろう友人たちは 今は遠く離れて
    遊び仲間たちは 何処へ行ったのだろう 今は遠く離れて
    今はどうしているのだろう
    帰ろう 私の星たちのところへ 今は遠く離れて
    星たちに語ろう 私の秘め事を
    ずっと想い続けている私の故郷(ふるさと) 今は遠く離れて
    こんなに遠く離れているけど
     私にギターの心があれば 心に浮かぶことを唄うのに

    邦訳:大澤 寛
    「Distancia」というタイトルの同名異曲が他に2曲ある。

    匿名
    無効

    「Domani」(イタリア語で 明日)
    Letra : Cátulo Castillo (1906-75)
    Música : Carlos Viván (1903-71)

    酒場の灯り
    リアチュエロ河の霧は
    空の下で拡がり
    青白い縮緬のよう
    酒場のテーブルでは
    慰めも無く 悲しみの重さに
    ドン・ジョバンニが泣いている
    アコーディオンを聴きながら
    遠く聞こえるその繰り返す音色は
    絶望に変わり 棘になる
    殺しはしないが傷つける
    惨い不運の棘になる
    そして繰り返し告げるのは
    明日は娘が帰って来ると
    海に向かって飛び去った
    嘘つきな蝶々のような娘が

    明日!
    娘が帰って来ると
    遠い
    過ぎ去った悪夢
    哀れなドン・ジョバンニは繰り返す
    明日あの可愛い娘が帰って来ると
    悪酔いさせるグラスの中に
    いつも空しく響くのは
    明日!
    酒が言わせる嘘なのだ

    だけどそれは無駄なこと
    希望の欠片も残ってはいない
    ドン・ジョバンニの悲しみに
    ざらつくような苦しみが住み着くだけ
    そして 年月の霧の中には
    そして やがて来る死の影の中には
    海のかなたから帰って来る
    泣き声のような歌がある

    その声は 霧が連れて来た帆船からのもの
    遥か遠くの見捨てられた古い港からのもの
    ドン・ジョバンニをぼうっとさせる木霊
    哀れな娘が帰って来ると叫ぶ時
    その娘の姿を消してしまう酒

    邦訳:大澤 寛

    Cantilena : ゆっくりした抒情的な旋律、 (詩などの)繰り返し
    Despenar : とどめを刺す、 絶望させる

    匿名
    無効

    「Dos corazones」 (二つの心)
    Letra : Ivo Pelay (1893-1959)
    Música : Francisco Canaro (1888-1964)  

    夜が来ると 音も無く唇づけをする
    ふた粒の透きとおった露の滴のように
    川岸に来ると ひとつに溶け合ってゆく
    ふたつの波頭のように
    遅い夏が包み込んでいる熱情のように
    雲が重なり合うように
    こんな風に 君と僕との夫々の愛は
    ひとつの思いに溶け合ってゆく

    君の心が僕の中にあるとき
    青く明るい星は 輝きを増すだろう
    君の心が僕の中にあるとき
    庭全体が 愛を語るだろう
    澄んだ調べが 君の耳を満たすだろう
    そして美しい光が僕たち二人を包むだろう
    僕の目で 君の黒い瞳を見つめよう
    僕の唇を 君の紅い唇に重ねよう
    君の心を 僕の中に持ち続けると
    僕の想いは 空を駆けるだろう

    よく響く鐘の音が 重なってひとつに解け合うように
    太陽の光の筋が 輝かしいその日を生み出すように
    心地よい音が 求め集い合うように
    影が影に重なるように

    こんな風に 君と僕との夫々の愛は
    ひとつの思いに溶け合ってゆく

    邦訳:大澤 寛
    タンゴには珍しく明るい内容が歌われている。この明るい歌詞の系列には「El día que me quieras」(想いの届く日)「Quedémonos aquí」(ここに居ようよ)などがある。

    匿名
    無効

    「Duelo curda」 (酔っ払いの通夜)
    Letra : Ernesto Cardenal (n/d)
    Música : Jaime Vila (n/d -1970)

    そんな事件が起きたのは
    ヘナロ・ポレンタさんが持つ
    安アパートの40号室
    そこでイージョの若者が死んだ
    頭の先から足の先まで
    安ワイン浸りだったのが
    これにはみんな驚いた
    一昨日の真昼のことだった
    冷たいミルクを注文し
    ばったり床に崩折れた

    ワイン製造組合も
    そして区域の酒飲みも
    彼の他界*に怒り出し   *parca (文語)死
    何たる不当な運命か
    隣人たちも集まって
    グレゴリオの安酒場では
    悔やみの言葉の数々も
    グラッパ酒も尽きたとき
    仕切る女がひとり居て
    通夜の準備にとりかかる

    さて40号室を出たときは
    ドンちゃん騒ぎに千鳥足
    酒樽を二つ繋いで遺体を乗せて
    しっかりものの未亡人
    哀れな夫に祈りを捧げ
    故人に対する想いをこめて
    遺体の両手に握らせたのは
    ギンダ酒*の壜を一本と         *チェリー・ブランデーの一種(高場将美さんによる)
    もうひと壜は*“8人兄弟”       *昔有名だったアニスの銘柄(これも高場将美さんによる)

    音に聞えた酒飲みたちも
    やはりお義理で顔を出す*      *hacer acto de presencia (儀礼的にちょっと顔を出す)
    弔問客は次々と 
    サンホアンからチリーから
    メンドーサからもやって来た
    親族たちは熱心に 
    なじみの顔に次々と
    安いワインのおもてなし
    セミリョンに白にクラレット
    赤ん坊がおしゃぶりに飛びつくように
    皆は飲むのに忙しい

    やがて夜明けが近付いて
    酔いに任せた無礼講
    大馬鹿騒ぎは文字通り
    嘆く涙も哀しみも
    ドンちゃん騒ぎに様変わり

    余りに騒ぎがひどいので
    仏はアタマに来たらしく
    酒樽の棺を抜け出して
    別のお通夜に出かけたと

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「Ebrio」(酔いどれ)
    Letra : José Rial (1896-1954)
    Música : Rafael Rossi (1896-1982)

    女ってのは何て悪いんだろう
    夢を殺すんだから
    俺が悩みを忘れようとしても
    胸の痛みを和らげようとしても
    いつも俺に付き纏うんだ
    あの裏切りものの瞳が
    眩暈(めまい)のするような
    妖しい輝きの力で

    俺の悩みは治しようがない
    俺の苦しみなんて 
    俺の心の底まで傷つけた
    あの不実な恋が生んだものだと
    決め付けるのは容易(たやす)い
    俺を捨てたあの女の道徳心(モラル)の低さを
    くだくだ言いたくはない
    あいつがどんなに悪くても
    俺はあいつを許すけれど
    もう決してあいつには会いたくない

    酒浸たりの暮らしをしながら
    俺は居酒屋を巡り歩く
    俺の夢を掻き立てるような
    気晴らしが欲しいのだ
    だけど憎いあいつの面影が
    俺の頭にこびり付いていて
    忘れるためにはもっと酒が要る

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「El abrojito」 (薊)
    (L) Jesús Fernández Blanco (1892-1963)
    (M) Luis Bernstein (1888-1966)

    心の中に 根を生やした薊のような痛みを
    俺は持っている
    不実なお前が 家から出て行ったからだ
    そして俺のこんな静かな暮らしを 苦しみで満たした
    俺は 俺の胸から刺のある薊を
    決して抜き取ることは出来ないだろう
    そして俺は歩く 
    お前が俺にしたあらゆる悪い仕打ちのせいで
    苦しむ心を抱いて
    神もなく 家も無く 愛もなく

    俺には判らない 何故お前が俺から去ったのか
    募る思いで俺がお前を愛していたのに
    俺には判らない 何故お前がそうやって騙していたのか
    嫌いなそぶりも見せないで
    お前の愛があれば 俺は幸せな男だった
    そして考えもしなかった お前の燃えるような愛が
    俺の心に傷口を開くことになる刃だったとは

    お前の移り気な暮らしの中で
    俺はお前に判ってほしい
    俺が一人淋しく 
    畠の薊のように根付いた想い出みたいに 
    世間の道を辿り歩いているのを
    何時か二人が出会えることを願う
    お前が無邪気に夢見ていたものの全てを
    とうとう見付けたかどうかを知るために
    そしてその後なら多分 俺たち二人は
    やり直せるだろう
    邦訳;大澤 寛

    abrojo アザミ、ハマビシ
    cardo カルドン、cardo blanco アザミ
    alcachofa 朝鮮アザミ

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