大澤寛のタンゴ訳詞集

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  • 大澤 寛
    参加者

    「Ando pato」 (俺は文無し)
    Letra : Eugenio Cárdenas (1891-1952) Música :Juan Maglio “Pacho” (1880-1934)

    今日俺は 
    惨めさの泥にまみれて
    Barrancaを降って行く
    仲間は俺から離れて行った
    あいつらは知ってるんだ
    俺が別の生き方をしていることを
    あんな馬鹿なやつらには判ってない
    俺は文無しでも
    それほど惨めではないことを
    ちゃんと生きていることを
    不良っぽい恋愛騒ぎなしで
    食べるものさえあれば

    あんな奴らが沢山いる 街角を通って
    気の抜けたcorte を踊り歩いて
    通りがかる女たちを眺めながら 金の話をする
    そいつらに向かって醜(ブス)な女が口笛を鳴らす
    こんな連中には判っていない
    俺はそんな馬鹿な見せびらかしはしないぜ
    そんな連中のことは俺にはよく判ってるけど 放って置くさ
    そいつらの夢が膨らむのは

    笑っちゃうぜ あの競馬狂の連中には
    俺が文無しだと
    馬鹿にしやがる
    あいつらは忘れているんだ 救世鍋には
    俺が一番に駆け付けて
    あいつらを助けたことを
    今日あいつらは俺に “文無し” と叫ぶ
    やくざなのか ド貧乏ものか
    間抜けなのか 馬鹿なのか
    俺は1ヵ月(ひとつき)働けば とても楽しく暮らせるんだ
    食べ物と 煙草と 寝る場所はある                            邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Anoche estaba curda」(1978) (昨夜(ゆうべ)は酔っていた)
    Letra y música : Charlo (1906-90)
    俺はいつも 気をつけた振る舞いをしている
    俺の人生(暮らし)が 幸せなのか惨めなのか 誰も知らない
    俺の身に 何が起きたのか 決して誰にも判らない

    だけど 昨夜(ゆうべ)はひどく酔っていて 
    それでお前にあんなに喋ったのだ
    もう古いことなのに 俺の悲しみや苦しみを
    昨夜(ゆうべ)はあれほど酔っていたので 俺が心に抱えている
    悲しい 疲れた 秘めた嘆きが うめき声になって
    心の深いところから 逃げ出して来たのだ

    俺の部屋に 夢に縛り付けて遺(のこ)してきた過去
    隠していた過去の全てにも 
    あれほど俺の身に沁みついている苦しみにも
    俺は嫌気がさしているのではない* 
    *hastío(嫌気、嫌悪感、不快感、退屈さ)の中に入ってくるものではない (impenetrable)

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Anoche」 (1952) (昨夜)
    Letra : Cátulo Castillo (1906-75) Música : Armando Pontier (1917-83)

    昨夜(ゆうべ) なあお前
    昨夜 お前を見たぜ
    気楽そうに 別の愛人(おとこ)と
    幸せそうに通りがかるのを
    フロントグラスを通して
    金*にあかせた衣装(ふく)を着た 金髪のお前を *metal : (口語)金・銭 = el vil metal
    通り掛ったお前の車が 俺にはね掛けたんだ
    お前の泥沼の夜と雨を
    昨夜(ゆうべ) なあお前
    昨夜 お前を見たぜ
    象牙色のお前の肌が 何と蒼かったことか!
    荒んだ生活(くらし)が 
    お前の足元に忍び寄る度に!
    毛皮に包まれた お前の心が
    気遣って震えているのが 俺には判る

    俺は歩道の縁*に居たんだ      *cordón : (南米)歩道の縁石
    絶望(やけ)になって!
    頭はぼんやりして
    ぼろぼろになって!
    象牙色のお前の肌が 何と蒼かったことか!
    普通ではない 焦(じ)れるような蒼さ!
    昨夜 多分
    昨夜 なあお前
    ようやく俺は判った
    お前の不幸と 
    生きること 死ぬことの意味が
    夢を騙しながら ミンク*の毛皮と車に                     *visón : ミンク、 ミンクの毛皮
    お前を売った夢を!
    夜になり 部屋の片隅で泣きながら
    夜が心に語りかけるときに
    昨夜(ゆうべ) なあお前
    昨夜 お前を見たぜ                                        邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Aquella cantina de la ribera」(1926)(海辺のあの酒場)
    Letra : José González Castillo (1885-1937)              
    Música : Cátulo Castillo (1906-75)

    寂びれた港の夜を照らしながら
    その酒場は古い灯台のよう
    航路(ゆくえ)を忘れてしまって 帰る港の無い
    魂(こころ)を呼び寄せながら
    海や霧が見たように 澤山のそんな魂を見た酒場は
    灰色の悩みの色の包まれて
    キンケーラ・マルティン* が染めたような
    とても変わった とても悲しい織物みたいに見える

    乾いた草原の眼を持つ金髪の女たち
    ノルウエー産(うまれ)の蒼い肌の狼たち
    ジャマイカ生まれの黒い水夫たち
    シンガポールから来た銅(あかがね)色の男たち
    行く先の無い哀れな小舟たちをみんな
    海は浜辺に連れて来る
    世界の何処からでも吹きよせる風の中を
    ジャズバンドの嵐の中を

    そしてあの酒場に夜が来ると
    灰色の中の一(ひと)刷(は)けの青のように
    ラム酒よりもジンよりもやんちゃで熱い 
    元気なイタリア娘の姿がある
    海よりも風よりも ずっとずっと暴れん坊な
    その娘(こ)の中では何もかも
    カプリ島のワインも ソレントの太陽も
    瞳を焦がし 声を酔わせる炎になる

    悩むタンゴのリズムに乗せて
    その娘(こ)がいつも歌うとき
    あの酒場の心は揺れる
    海に吹く恐ろしい疾風のように

    それはあの狼たちが知っているからだ
    その娘(こ)の歌の奥底には
    心の船を襲う
    暴風雨(あらし)の危険があることを
    邦訳:大澤 寛

    *キンケラ・マルティン Benito Quinquela Martín (1890-1977)
     画家・壁画家。“La Boca の画家たち”の一人。主として船と港湾労働者を描く。少年時代にJuan de Dios Filiberto と知り合った。イタリア滞在時にはムッソリーニに“労働が描ける画家”として気に入られたと言う(Wikipedia から)


    大澤 寛
    参加者

    「Aquellos que se fueron」 (2003 ?)(去(い)ってしまったあの人たち)
    Letra y música : Eladia Blázquez(1931-2005)

    私が心で暖めて 音楽に織り込んだ夢の数々
    人々から教えられ 私の中で脈打っている夢たち
    その夢たちの音楽の 消えることの無い木霊

    あの人たち 去(い)ってしまったけど今も居る人たち
    入り口なんか無い 何処かの空で
    私の知らない魔法や魔術を使って
    毎日 私の許へ帰って来る
    ささやかなノスタルジアを連れて!

    あの人たち 遥か遠くから 私に届けてくれる
    タンゴやジャスミンの匂いのように
    あの人たち 私の心に火を付けて
    私に美しいものを呉れたし 
    何時までも消えない夢を 今も呉れる人たち

    あの人たち 私を肥やした 私の師匠(せんせい)たち!
    いつも私に パンの残りを呉れる人たち
    あの人たち 去(い)ってしまったけど今も居る人たち!

    邦訳:大澤 寛

    Alentar : 励ます・激励する・元気づける、  
    Zaguán : 玄関・入口、  (ラ米)小屋・あばらや
    Sortilegio : 占い、魔法・魔術、魔力   sortilego/a 占い師・魔術師
    Confín : (文語 主に複数で用いる) 境界、果て、遥かかなた


    大澤 寛
    参加者

    「Arrabal amargo」 (1935) (苦い想い出の下町よ)
    Letra : Alfredo Le Pera (1904-35)                            
    Música : Carlos Gardel (1890-1935)

    呪いの言葉が咎めるように
    私の人生に入り込んだ
    苦い想い出の下町よ
    お前の影が
    眠れぬ私を苦しめる
    お前の夜が
    私の心に閉じこもる
    あの娘(こ)が傍に居た頃は
    お前の悲しみも 泥沼(ぬかるみ)も みじめさも
    私には見えなかった
    あの娘(こ)は私の灯りだった
    そして今 私は捨てられて
    お前の街角に 十字架のように
    打ちつけられた心を引きずっている

    私の好きなお前の中庭では
    星のテント*に覆われて
    *toldo : テント・天幕、日よけ、雨覆い
    なにもかもが輝いている
    下町の小さな街角よ
    あの娘(こ)がお前に会いに来れば
    お前の古いスイカズラは
    お前を愛して花盛り
    去って行く雲のように
    私の夢が行ってしまう
    行ってしまって もう帰らない

    誰にも言うのではないよ
    お前がもう私を愛していないことは
    私が人から訊かれたら
    お前が帰って来ると言おう
    だからお前が帰って来ても
    誰も驚いたりしないと誓うよ
    皆が どれほどやきもきしながら
    お前を待っていたか判るだろう
    私の白い家も 古い薔薇園も
    どれほど悲しみから蘇るか
    祭りの衣装を付けた
    私の美しい下町よ

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Arrabal」(1935)(下町) ミロンガ
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Félix Lípesker (1913-70)
    ピンクの壁の小さな家がある
    ブエノス・アイレスの下町よ
    そこではギターの爪弾きから
    幾つもの夢が生まれる
    土塀の上から無花果の木が顔を出し
    幽霊たちと一緒に壁の飾りになっている


    場末の青い垂れ幕
    そこでは愛が毒を持つとき
    騒動が起きる
    裏切りの苦しさが
    恨みに変わる
    恨みと悩み


    そこでは唇は誓いを交わす
    夜がバンドネオンの音とともに
    呟いている間に

    ブエノス・アイレスの下町よ
    開け拡げたお前の中庭に
    星たちが現れて
    お前を静けさで包む
    そして黄色い月が
    お前の屋根の上を
    つま先立ちで歩きながら
    謎の種をまく

    邦訳:大澤 寛
    Higueraはイチジクの木: ref : higo
    De puntillas – en puntillas : つま先立ちで・忍び足で
    同名異曲にJosé Pascual のタンゴがある。Pedro Laurenz の演奏でtodotango にあり


    大澤 寛
    参加者

    「Arrabalera」(1950) (下町娘)
    Letra : Cátulo Castillo (1906-75) Música : Sebastián Piana (1903-94)

    Mi casa fue un corralón
    de arrabal bien proletario,
    papel de diario el pañal,
    del cajón en que me crié…
    Para mostrar mi blasón,
    pedigree modesto y sano.
    ¡Oiga, che!… ¡Presénteme…
    ¡Soy Felisa Roverano,
    tanto gusto, no hay de que!…

    ¡Arrabelera,
    como flor de enredadera
    que creció en el callejón!
    ¡Arrabalera,
    yo soy propia hermana entera
    de Chiclana y compadrón!…
    Si me gano el morfi diario,
    qué me importa el diccionario
    ni el hablar con distinción.
    Levo un sello de nobleza,
    soy porteña de una pieza,
    tengo voz de bandoneón.

    Si se le da la ocasión,
    de bailar un tango arrespe,
    encrespe su corazón,
    de varón sentimental.
    Y al revolear mi percal,
    márqueme su firulete,
    que en el brete musical
    se conoce, la gran siete,
    mi prosapia de arrabal.

    corralón : 広い囲い場・材木置き場など  (ラ米)空き地・荒れ地
    blazon 1. 紋章・記章、紋章学 2.名誉・栄光 3.家柄・名門
           hacer blazon de ~ ~を自慢する
    pedegriee = pedegré (l.p.) genealogía 家系(図)、 血統(書) linaje
           tener pedigré : ser de raza, de pura sangre
    enredadera : planta enredadera つる植物
           enredo : 1.もつれ・からまり  2.揉め事・紛糾・トラブル  3.後ろ暗い・いかがわしい仕
    事や商売  4.愛人関係・浮気  5.(小説などの)筋立て・プロット
    morfi : (ル)comida morfar = comer
    distinción : 区別・識別・差別の他に  2.栄誉・特典  3.気品・品位  4..敬意・尊敬の念
    pieza : buena (gentil, linda) pieza 悪者、ずるい・ひどい奴
    ser de una sola pieza : (ラ米)まっ正直な
    arrespe : (ル)amamarrachado, defectuoso, extravagante, ridículo
    ref. mamar : emborrachar, embriagar mamaracho  (José Gobelloから)
    encrespar : 1.(髪の毛を)カールさせる  2.(水面・海などを)激しく波立たせる  
    3.(人を).苛々させる・怒らせる
    ref. crespo
    revolear : (ラ米)(綱・ロープ・鞭などを)ぐるぐる回す
    furulete : (ラ米)ごてごてした飾り    ref. (ス)florete
    brete : 1.鉄製の足枷  2.苦境 estar en un brete
    siete : 2.かぎ裂き  3.トランプゲームのひとつ  4.(ラ米)肛門  
          comer/hablar más que siete
          saber más que siete 非常に抜け目のない
    ¡La gran siete! これは驚いた.
    prosapia : linaje 家系・血筋 (名門・帰属などの)(時として軽蔑的に)

    「Arrabalera」 (1950) (下町娘)
    Letra : Cátulo Castillo Música : Sebastián Piana

    私の家は 
    貧しい下町の空き地だったわ
    おむつは新聞紙 
    私が育ったのは木の箱の中よ
    私の家柄だって?
    質素で健康なだけよ
    ねえ ちょっと 紹介してよ
    私はフェリーサ・ロベラーナって言うの
    よろしくね どういたしまして

    下町娘なの
    横町に生えてた
    つる草の花みたいな
    下町娘なの
    私はね 全く本当の姉妹(きょうだい)なの
    Chiclana* の やくざ者*の *Chiclana は地区の名前  compadrón は悪い意味で多義だがやくざな、見栄っ
    その日食べるだけ貸せっげりゃさ            張りの、喧嘩っ早い、商売女のヒモなどタンゴには良く出てくる
    辞書(じびき)なんて要るもんか
    お上品ぶって喋るわけじゃなし
    私には誇りがあるの
    私はね まっ正直なポルテーニャ*なの    *“ブエノスアイレスの”、“湊の“ だから “浜っ子” と言ったところ
    私の声はバンドネオンよ

    滅茶苦茶にタンゴを踊らせたら
    軟弱(やわ)な男を気持ちを苛々させるの
    私のペルカル*がくるくる回る時                  *percal 質素な布地、それで作った衣装、安衣装
    何か飾りを付けてよ
    音楽が止まった時に
    大きな鉤裂きが見えるから
    それが私の下町の血筋なのよ

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Arrabalero」(1927)(下町気質)
    Letra : Eduardo Calvo (1896-1959) Música : Osavaldo Fresedo (1897-1984)

    私は頭の狂った娘 下町暮らしの狂った娘
    あの悪(ワル)に愛されて捨てられた
    だけど私はこの町の誇り 
    ここで生まれて踊りが好きな 夢を信じる女の子
    男には心底惚れる性質(たち)

    私があいつを知ったのは
    ブエノスアイレスの下町の 
    貧しい部屋の夢の中
    あいつに心を捧げたの
    悪い奴だと知ってたけれど
    狂ったように愛したの
    あいつに運がつくように
    清い気持ちで祈ったの
    あの下町の若者は
    今は私を殴るけど
    私の希望の全てをかけて
    あいつを愛していることも     
    私の全てがあいつのもの
    私の愛はあいつのもの
    気まぐれの愛から生まれて来る
    私たちの子供がいることも
    あいつは全部知っている

    正直言って 男がいるの
    アルシナ橋辺りの暴れ者
    そいつは私に首ったけ
    私を心底知っている
    だけど 男がみんな女にそうするように
    いつか私を騙す日が来たら
    笑って歌う私だって その裏切りには
    血の涙を流す女になるの
    邦訳:大澤 寛
    Rechiflado : loco, enloquecido // trastrocado, perpeturado
    Efe : revés de fe, por prótesis (語頭音添加)e + fe
    Tenerse efe = tenerse fe, tenerse confianza en sí mismo
    Tenerle efe a alguien = creer, confiar en él
    Fajar : castigar, golpear, dar la biaba, Lo fajó hasta que confesó. // herir
    // beber en exceso // comer mucho // drogarse Lo vi cuando se fajaba un nariguetazo
    // tambien se emplea con la acepción de decir, hacer, realizar


    大澤 寛
    参加者

    「Arrepentido」 (1936) (後悔してるわね)
    Letra y música : Rodolfo Sciammarella (1902-73)

    或る日あなたは 私の傍を離れて行った
    別れの 慰めの言葉も残さないで
    あなたの愛を失くして 私は 信じることも 
    心も 生きることの全てを失くしたわ

    あなたは 他の女の後を追って行ったのね
    その人に愛されて幸せだったでしょう
    私の心を 悲しみの淵に沈めて
    私は意地を張って 決してあなたを探さなかった

    私を包んだ孤独は 恐ろしい 死ぬほどひどいものだった
    あなたの愛を忘れようとしたけど 出来なかった
    理性(あたま)では 容赦なくあなたを責めながら
    心は 哀れな心は 悪いあなたを許していたわ
    そして信じていたの 私の美しい愛を求めて
    あなたが再た戻って来るって

    今ではあなたは 生きる苦しみを隠しながら
    独りで 打ちひしがれているわね
    恥ずかしくて 後悔して泣くでしょう
    私を苦しめたことで 良心が咎めてるんだわ
    私の愛の想い出に責めたてられて
    戻って来るには勇気が要るでしょう 判ってるわ
    待ってるわよ 両手を拡げて
    来てよ 昔と同じに 昔よりもっと
    あなたを愛してるから

    邦訳:大澤 寛

    Libertad Lamarque の要請で R.Schiamarella が作ったオリジナルの歌詞はここで使ったテキストの通り、女唄だった。
    Alberto Morán はPugliese 楽団在籍10年目にこの曲を知って歌いたがったが果たせず、後にAlmando.Cupo と組んでレコード録音する際、Schiamarella の許可を得て男唄にしたものという。(以上はRadiotango Rosario の放送から)
    後にPugliese 楽団でJorge Macielも歌っている。


    大澤 寛
    参加者

    「Ausencia」(1920)(お前が居ないと)
    Letra:Francisco Nicolás Bianco (1894-1960)
    Música:Carlos.Gardel (1890-1935)+ José.Razzano (1887-1960)

    お前が居ないと眠れない
    ひっきりなしに傷ついて
    お前の名前を思い出す
    愛の渇きは止めどなく
    泣くことなどは無駄なこと
    悩みの安らぐ術もなく
    打ちひしがれた俺の身に
    愛の玉座を打ち砕く

    早く帰って来てくれよ
    俺の悩みを消してくれ
    お前が居ないと俺は死ぬ、ああ
    お前を求めて俺は泣く
    誰も涙を拭いてはくれぬ
    俺は彷徨うあてどなく
    何を信じることもなく
    ひたすら悩みに立ち向かう
    助けは天にあるばかり
    お前の帰りを待つばかり

    俺の気持ちは昔も今も
    優しいのだがお前の方は
    愛することを知らないで
    なあ、お前、俺はお前に何をした?
    これほど俺を悩ますような
    泣くことなどは無駄なこと
    悩みの安らぐ術もなく
    打ちひしがれた俺の身に
    愛の玉座を打ち砕く

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Ave de paso」(1936)(渡り鳥)
    Letra : Enrique Cadícamo (1900-99)
    Música : Charlo (1906-90)

    別れる時が来た なあお前
    何時また会えるかは判らない
    俺の唇は 別れを告げようと
    震えながらゆがむ
    俺たちの恋は ひとときのもの
    俺の愛は 渡り鳥
    蜜の味の サテンの肌触りのような
    お前の唇付けは 忘れられない聖らかさ*

        *Charloは明らかにbeso sagrado と歌っているが、 vaso sagrado とするテキストが多い。vaso sagradoなら聖盃(キリ  
         スト教)の ことだから邦訳は ”血の盃” とでもしなければならない。素直に Charlo を採りたい。

    さよなら 銅色の人形よ
    日焼けした娘よ お前の熱い*愛からは        *tropical = ”熱帯の”、”熱帯性の”が本義
    塩の味がする笑いの匂い
    思い出の歌のように
    リオ*の月は                                          *Río de Janeiro のこと
    夜になると お前に話してくれるためにある
    俺がお前の傍を通ったことを 疲れを知らぬ旅人の俺が
    お前の傍を通ったことを そしてお前に心を残したことを

    俺の運命は 一生 旅をすること
    お前の傍で夢を見たのは間違いだった
    空が薔薇色に染まった
    お前に別れを告げたから
    俺の約束は 無かったことにしてくれよな
    忘れてくれよな 俺の狂った愛を
    ブエノスアイレスが お前と別れさせるのだ
    あの空の下で お前の夢を見よう
    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Avergonzado」(恥じて) (年代不詳)
    Letra : Carlos Bahr (1902-84)
    Música : Roberto Garza (1912-81)

    許してくれ 母さん 俺は約束を果たさなかった
    あんたが望んでいたような人間にはならなかった
    人生は罠だったんだ 俺に儲け話ばかりした
    そして俺は 中身の無い夢を追いかけたのさ

    人は金にしがみつくんだ 夜になると酒に
    お終いには 己の身の破滅の墓を掘るんだ
    一番いけなかったのは あんたが泣きながら
    俺の過ちを償ってくれたことだ

    だから 会いに来るのが遅くなったんだよ
    あんたに顔を合わすのが恥ずかしいんだ
    つまり 説明するのは難しいけどなあ
    俺には あんたは神様より偉いんだよ
    神様は時々 無慈悲になるもんだ
    俺みたいに過ちを犯す者たちには
    あんたはなあ 母さん 優しくて 俺のお袋で
    赦しを呉れる人の一番純粋(きれい)な姿をしてるんだ

    俺が分別が無かったのには 許しは請わない
    罪は償うつもりだ 償わないといけないのなら
    だけど 判ってくれよな 俺が恥じていることを
    あんたに 酷い暮らしをさせたことを

    悪い人間ではなくても 色んなことを考える
    お終いには 酷いこともする
    そして母さん あんたは全く酷い不幸に向かったんだ
    俺が仕出かしたことのツケを払うという

    邦訳:大澤 寛

    Soga : (l.p.) = ventaja
    De boca : 口先だけで・口約束で
    Fosa : 墓穴、  fosa común : 共同墓地
    Implacable : 容赦しない・仮借の無い・冷酷な
    Inconsciencia : 2.無自覚・無分別
    Perro : (l.p.) cosa ordinaria de mala calidad, trampa, engaño


    大澤 寛
    参加者

    「Bailemos」 (踊ろうよ)1955
    Letra : Reynaldo Yiso (1915-78)
    Música : Pascual Mamone (1927-)

    泣くなよ ねえ さあ 他人(ひと)が見てる
    踊ろう このタンゴを この別れのタンゴを
    こうやってお前を抱いて 目を見つめながら
    俺は別れたい 泣くことも 嘆くこともせずに
    いたずらな運命が 二人を巡り合わせて
    二人の胸に 愛の火をつけた
    だけど今 その運命が 二人から
    愛し合う夢を引き裂くのだ
    判るだろう あり得ないことだが

    踊ろう 
    昔のように さあ
    強く抱きしめ合って
    二人の心はひとつ
    踊ろう
    俺は見たくないから お前の瞳に
    隠された涙を
    影を 嘆きを

    踊ろう
    これからはもう 俺はお前の目を見ずに
    忍び泣きを洩らすのだ
    お前の愛と 俺の愛のために
    いつまでも
    お前は居る 眠れない俺に
    空の星がひとつ
    俺の心で輝くように

    運命に抗うなよ 二人のことはどうしようもない
    決して花を咲かせなかった 手に入れられない夢だった
    どうでもいいことだ 同じ思いが二人を結びつけて 
    二人の心に愛の炎を燃やしても
    達者でいろよな 神に見捨てられないようにな
    俺には判る 永い孤独が俺を待っている
    腕の中で泣くなよ 俺を許してほしい
    タンゴがもう終わる 外に出て泣こう

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Balada para un loco」(狂った男へのバラード)
    Letra : Horacio Ferrer (1933-2014)
    Música : Ástor Piazzolla (1921-92)

    (出だしの語り)
     ブエノスアイレスの昼下がりには あの 何と言うのかなあ お前見ただろう?
    お前が家を出て アレナーレスを通りかかると いつものことだけど 俺は 街角に お前の中に 木の陰から 突然現れるんだ。不思議な組み合わせの格好だぞ。 終わりから二番目の乞食と 金星へ行く最初の密航者だ。メロンを半分に切って頭にかぶって 縞のシャツは肌に描いたもので 靴下は 足に釘で留めてあるんだ。そして両手には タクシーの空車のランプの旗を持っている。お前 笑ってるな! だけど 俺はお前にしか見えてないんだ。マネキンたちは 俺にウインクしてるし 交通信号は俺には青ばかりだし 角の果物屋のオレンジが俺に花を投げかける。お前 来いよ!俺は 半分踊りながら そして半分飛びながら 頭にかぶったメロンを取って お前に挨拶する。お前にタクシーの旗を一本やるよ。そしてお前に言うんだ。

    (歌)
     俺は狂ってる! 狂ってる! 狂ってる! それは判ってるんだ。お前 見えないか?
    カジャオ通りを月が転がってるのが。宇宙飛行士と子供たちが ワルツをコーラスで歌いながら 俺の周りで踊ってるのが。踊れよ! 来いよ! 飛べよ! 俺は狂ってる! 狂ってる! 狂ってる! それは判ってるんだ。俺は 雀の巣から見てるんだ ブエノスアイレスを 悲しそうなお前を。来いよ! 飛べよ! 感じて見ろよ!

     狂ってる! 狂ってる! 狂ってる!
    お前のブエノスアイレスの静かな夜になると 俺は お前のベッドのシーツの端っこから
    一篇の詩と トロンボーンをひとつ持って お前の心を目覚めさせようと やって来る。
    狂ってる! 狂ってる! 狂ってる!
    俺は 頭の可笑しい曲芸師みたいに お前のはだけた胸の深い淵に飛び込むんだ。お前の心が 自由になってうっとりするのが判るまで。
    すぐにお前も判るだろう!

    (語り)
     飛び出そうよ 可愛いお前 俺の幻のスーパーカーに乗れよ。エンジンには燕を乗せて
    軒ひさしを走り回ろう。ビエイテス通りから 愛を発明した気違いどもが 俺たちに喝采しているぜ “万歳! 万歳!”って。そして天使がひとり 兵隊がひとり 女の子がひとり 俺たちに踊りやすいワルツをくれる。素敵な人たちが 俺たちに挨拶しに出て来る。
    狂ってるけど 俺はお前のものだよ どう言えばいいのかなあ! 
    俺は 微笑みながら鐘を鳴らし 最後にお前を見て 低い声で歌うんだ。

     こんなに狂ってる 狂ってる俺を愛してくれ 二つの愛を解放してくれ 生まれ変わるための完全に狂った魔術を 二人でやってみるんだから。
    来いよ! 飛べよ! 来いよ! タラララララー!

    万歳! 万歳! 万歳!
    気違いたち! 気違いたち! 気違いたち!
    みんな狂ってる!
    狂った女と 狂った俺と!
    注:cornisa は建築用語で“軒ひさし”“雪ひさし”“コーニス”

    邦訳:大澤 寛

    Horacio Ferrer とástor Piazzola というコンビ(binomio)の1969年の作品。ややシュールな演劇的な傾向だが語りの部分も素晴らしい。多くの歌手が挑戦する対象にしている。

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