大澤寛のタンゴ訳詞集

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    「Tal vez será mi alcohol」 (Tal vez será su voz) (多分私の酔いのせい)
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Sebastián Piana (1903-94)

    (部分的に異なる歌詞が幾つかある。 ここではLibertad Lamarque が Mario Maurano の orquesta で 25/06/43 に唄っている version を使用する。 第3連の3-4行は他の歌手の歌うものと大幅に異なる。Lamarqueが歌うのだから当然女唄になっていて、彼女が唄いかけている相手は男性。従って関連の形容詞も代名詞も男性形になっている。 注(5)は当時の当局の検閲を避けた典型的な例だろう)

    タンゴ*(1)が聴こえ 灯りはあり余るほど  *(1) el fueye を el tango と唄っている
    フロアーには夜が来て 影は嫌々ながら片隅へ隠れる 
    グリセタを マレナを マリエステルを呼びながら
    タンゴがフロアーに連れ出した影は 私にも呼べという
    踊りましょう 私のサテンの衣装が煌いているのに*(2) *(2) con el brillo de su traje de satén を
    ぼんやり夢だけ見ているのは辛いから mientras brilla mi traje de satén

    バイオリンは誰の悩み? 悩むのに疲れて
    こんなすすり泣きに変わるのは誰の甘い声?
    多分それは貴方の声 いつか不意に消えてしまったあの声
    多分私の酔いのせい 多分 貴方の声であるはずは無い
    貴方の声はもう眠りについた
    私の酔い*(3)が生んだ幽霊に過ぎない *(3) del alcohol を mi alcohol

    貴方の顔が蒼く遠くに*(4) *(4) vos が tú pálida が pálido lejana が lejano
    髪は黒く 目は灰緑色
    やさしくあの手は過ぎ去って*(5) *(5) 大きく変わっている箇所:Y también era su boca entre la luz
    あのバイオリンの唄のように  del alba una triste flor de carmín が Irán suave sus manos y dirán
    貴方の悲しい詩を読むだろう su verso triste como el canto de ese violín
    貴方は或る日帰って来なかった 待ち続けた私
    そして本当のこと*(6)が知らされた *(6) su final が la verdad
    だから私はタンゴの影を連れて
    空しく貴方*(7)への想いを募らせる  *(7) la が lo

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Tapera」 (廃屋) 
    Letra : Homero Manzi (1907-51)         
    Música : Hugo Gutiérrez (1904-72)
    とうとう又一軒 小屋*が見捨てられた rancho あばら家・貧しい家だがここは小屋としておく
    結局 持ち堪えられなかった*から         分割払いが払いきれなかったという解釈
    そこでは 道も途絶えて
    そこでは 草*も嘆く                pasto は南米では芝生だがここでは雑草=草としておく
    そして風は 苦しみを口笛に乗せて
    遠ざかる
    結局 火を熾さない台所がもうひとつ
    そしてガウチョが一人去ってゆく
    行くあてもなく 愛もなく

    私の井戸の鶴瓶は
    いつも喜びを歌ったものだが
    もう決して歌うことはないだろう
    軒のひさしの涼しい陰には
    いつもゴシキヒワがいたのだが
    今はもういない
    雑草*に汚された                    cardal = cardizal は雑草の生い茂る場所
    私の麦畑の蜃気楼
    ある日私が悩み始めたとき
    薊(あざみ)が麦の切り株を
    食いちぎりに来たとき
    私はさすらいに出た

    行っちゃったなと 故郷(くに)の人たちは言うだろう
    行っちゃったな 多分また別の夢を追いかけてと
    残されたのは 主のない小屋がもうひとつ
    残されたのは 見捨てられた廃屋がもうひとつ
    家畜の群れも 水飲み場もない
    住む人も 神もいない
    結局 不幸な竈(かまど)がもうひとつ
    燃やす火も愛もない心を 
    ひとつ残した                                          
    邦訳:大澤 寛

    Rondanilla : rondana = (井戸などの)滑車、釣瓶
    Jilguero : (鳥)ヒワ、ゴシキヒワ
    Trigal : 小麦畑
    Brillazón : 蜃気楼
    *Cardal : =cardizal = Sitio en que abundan los cardos otras hierbas inútiles
    Rastrojo : (麦などの)刈り株、刈り株畑   (ラ米)屑、廃物、残り物
    Aguada : 飲料水の補給、貯蔵飲料水、  水飲み場
    Tropa : 3.群衆、集団  5.(ラ米)家畜の群れ
    Fogón : コンロ、かまど、ボイラー、ストーブ   (ラ米)焚き火

    匿名
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    「Tarde」(もう遅い)
    Letra y música : José Canet (1915-84)

    私には傷がある 昔の恋の一つ一つの
    傷は塞がることはなく 今でも血が流れる
    私の日々の幸せを 無駄に壊しながら
    やみくもに人を愛したことの過ち!
    とうとう気が付いたけど もう遅い
    人は誰も嘘をつきながら 同じように生きていることに
    私の夢は 愛しながら壊れたことが
    判ったけれど もう遅い
    哀れな愛は とてもしつこい苦しみに悩んでいる
    そして今 何をするでもない時に
    あなたのそそるような唇が もう一度私を誘う

    あなたを愛そうとしても もう愛せない
    心の底で怖がっているから
    再た繰り返すのが怖い 私を苦しみに沈めた喜劇を
    何もかも与えた! 
    それを全て失くした!
    何がどうあろうと 恥を忍んで
    いつも真心をこめていた
    そして とどのつまりに
    私は人を信じなくなっていた

    私には傷がある 昔の恋の一つ一つの
    傷は塞がることはなく 今でも血が流れている
    やみくもに人を愛したことの過ち
    嘲りと嘘にまみれて
    私は放浪(さすら)う 希望も無く 愛を探すことも無く
    もう愛は死んだ 悩みが花を散らしたから
    そして今 あなたが泣いても縋っても 私の夢は帰らない
    判らないの?哀れな女が こんなに多くの心の傷に 
    もう疲れて 打ちひしがれて 壊れているのが!
    邦訳:大澤 寛
    多くの歌手が取り上げている。中でもJosé Canet 伴奏のNelly Omar の歌がいい。

    匿名
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    「Te llaman malevo」(悪い奴)
    Letra : Homero Expósito (1918-87)                            
    Música ; Aníbal Troilo (1914-75)

    ゼラニウムが咲き 月が照る町
    そこでは いつも飢えがのさばっていたものだ   
    そんな町で生まれて ガキの頃から
    働き始めた 微笑むためにも
    時が持つ塩辛さが 彼奴(あいつ)の顔に錆びを浮かせた
    ひとりの女が彼奴(あいつ)を捨てたとき
    そして独りになって 全く独りぼっちになって
    働くことを呪い 道を踏み外していった

    悪い奴 お前はお袋の願いを
    酒場に置き捨てたな
    悪い奴 ジンに酔ったお前の武勇伝は
    数を重ねた
    あの女の ただあの女だけのせいで
    苦い後悔の跡を残して
    悪い奴 なんて悲しいんだ 賭けて 負けた
    ただあの女の 決して帰っては来ないあの女のために

    騒がしい太鼓の音が通りを揺るがせ
    イカす娘たちを呼んでいる
    そしてそこには タバコの吸いさしを噛み締める静けさが
    いつも彼奴(あいつ)の虚ろな眼差しを残してゆく
    或る昏い夜に 希望をナイフで切り刻み
    そして独りになって 場末の花のように 
    退屈さを呪いながら 逃げた女を思い 命を絶ったという

    邦訳:大澤 寛

    Gambeta : gambetear (バレー)飛び上がって脚を交差させる動作
    (乗馬)騰躍   (スポーツ)ドリブルをする
    身をかわす・避ける・方向転換する   言い逃れをする・口実をつける
    Poner el hombro : (ラ米)(アルゼンチン)助ける・肩入れをする
    Chancletas : ボロ靴・かかとの擦り切れた靴  スリッパ
            Dejar en chancletas (a alguien) = despojarlo de su dinero, dejarlo en la vía
    Ser abndonado un hombre por su mujer
    Redoblar : 強化する・倍増させる  (vi)太鼓を打ち鳴らす
    Desojar : 壊す  特に工具の穴(=ojo)を潰す
    Espera : 2.忍耐・我慢(= paciencia)
    Largar : 1.(不適切に・嫌なふうに)言う  2.(打撃などを)与える  3.追い出す・追い払う
    Largarse : marcharse / irse / partir / desaparecer
          (ル)多義あり
          1.entragar algo a la fuerza 2.rechazr 3. Confesar
    4. Decir algo que surgeespontáneamente
    5.desprenderse de alguien 6.despedir, cesantear
    7.dejar de hacer algo que se hacía

    匿名
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    「Temblando」 (震えながら)1933
    Letra : Charrúa (1876-1962)
    Música : Alberto Acuña (1893-1975)
    あの娘(こ)は綺麗だった あの娘を見た*日の午後    *ver の古形(ラテン語videreから) vi と歌う歌手もある
    あの娘の家の中庭は落ち着いていて                      
    何もかも素晴らしいと思ったけど
    口には出せずに 私はずっと震えていた
    これまでに見たことが無いくらい綺麗だった
    柔らかな更紗の服を着て
    解いた髪を肩に垂らして
    家の中に天使が居るみたいだった

    あの娘も私も どちらも何も言わなかった
    あの娘のつぶらな瞳は 私を燃やし続けていた
    持っていた箒を手から離して
    話したそうにしたけれど ずっと震えていた

    初恋の思い出だった
    幼い二人に芽生えた恋は
    一晩で生えてくる
    野の花のようだった

    あの娘の父親の質素な家の
    煉瓦(アドベ)*造りの中に隠された恋                      *adobe = 日干し煉瓦
    中庭のオンブー*の木の幹に          *ombú = 南米産の大樹 幹は柔らかい メキシコヤマゴボウ
    ナイフの先で彫り付けた恋

    私は背を向けて そっと歩きだした
    落とし穴を怖がるひとのように
    思い出も感情(きもち)も 縞模様の
    ポンチョの中に包んで

    どうしたのか判らない 馬に跨った
    全速力で駆け出した
    思い出も感情も何もかも 包んであった
    縞模様のポンチョから取り出して

    あの娘は綺麗だった あの日の午後
    あの娘の家の中庭は落ち着いていて
    何もかも素晴らしいと思ったけど
    口には出せずに 私はずっと震えていた

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Tengo miedo」(怖いんだよ)
    Letra : Celedonio Esteban Flores (1896-1947)
    Música : José María Aguilar (1891-1951)

    賭けごとみたいな人生でsiete y medio* でやめたんだ   *トランプの手札の種類のひとつ?
    人生でたった一つの俺の自慢
    どうしようもない坂道を 転がるばかりの人生で
    或る日“やめた”と言ったんだ そしてその日にやめたんだ

    悪い仲間と縁を切り 終わりのないうろつき回りをやめたんだ
    踊る場所やら怠惰な浮気 そんなものから手を切った
    夜になったら淋しいが 素晴らしい朝が来る
    墓場みたいな人生を 花咲く庭に変えたんだ

    忍び合う部屋も 競馬も 賭けごとも 
    悪い酒も 浮気な愛も 女の偽の唇付けも
    みんな埋めてしまったさ うるさい過去を忘れるために
    男が手に入れることができる最高の聖い愛のために

    もう判るだろう なあお前 俺は静かに暮らしてる
    だからお前に頼むんだ この心地よい平和を乱しに来るなと
    俺をお袋と一緒に居させてくれと そしたら俺はお袋と
    聖い暮らしを築くんだ やれるだろうと思うから

    来ないでくれよ頼むから お前に会うのが怖いんだ
    俺の中には何かある お前を忘れられないものが
    お前の瞳が怖いんだ 唇付けしたくなるのが怖いんだ
    お前を愛するのが怖いんだ 再た元に戻ってしまうのが

    聞き分けてくれよな 俺を探すなよ 俺の行く先から離れていてくれ
    多分誰かと恋をして お前の心は休まるさ
    判るだろう なあお前 俺の話でお前を傷つけたくないんだ
    俺はとても怖いんだ 心が挫けそうだから

    邦訳:大澤 寛

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    「Tiempos viejos」 (あの頃)
    Letra : Manuel Romero (1891-1954)
    Música : Francisco Canaro (1888-1964)

    覚えているかよ? なあ あの頃は良かったなあ!
    俺たちの仲間は 男の中の男たちだったんだ
    コカイン*1もモルヒネも知らなかったぜ                  
    昔の男はポマード*2なんてものは使わなかった
    覚えているかよ? なあ あの頃は良かったなあ!
    25年経ってる もう戻っては来ない!
    25年だ 取り戻せたらなあ
    それを思うと泣けてくるぜ

    あの頃の男たちは 何処へ行った?
    古い昔の悪仲間は 何処にいるんだ?
    俺とお前だけが残っているんだぜ なあ
    俺とお前だけが想い出を追いかけてる
    あの頃の女たちは 何処へ行った?
    実(じつ)のある 心の広い女たちさ
    ラウラ*3の店で踊っていて よく喧嘩をしていたよ
    それぞれが 自分の恋人を奪られないようにな
    覚えているかよ? なあ あの金髪のミレーヤを
    ハンセン*4で俺が 気違いセペーダ*5の野郎から奪(と)ってやった

    或る晩 俺はあいつのせいで 自殺しそうになったものだ
    それが今は 襤褸を着た哀れな物乞いになっている
    覚えているかよ? なあ あいつが綺麗だったのを
    あいつの踊りを見るのに 取り囲んで輪が出来たものだ
    通りで あいつがあんなに老けてるのを見かけると
    俺は顔をそむける そして泣けて来る

    邦訳:大澤 寛
    *1 cocó : コカイン(cocaine) のこと
    *2 gomina : 男性整髪料。接着剤のゴム (goma) が語源。製造会社の名を冠してGomina Brancato という商品名で1910年代から使われたという。
    *3 Lo de Laura : 店 (ダンスホール) の名前。女店主の名前から。名士の集まる高級店だったという。Vicente Greco やGardel-Razzano のdúo も出演した。Rosendo Mendizábal が「El Entrerriano」 を初演したのもこの店。
    *4 Hansen : ドイツからの移民だった初代店主の名前の付いた伝説のレストラン。
    *5 Cepeda: 男性の名前。ガルデルはリベーロ (Rivero) と歌っている。

    匿名
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    「Tiento crudo」(粗い革ひも)
    Letra : Enrique Gaudino (1899-1974)                   
    Música : Víctor Braña (1911-89)

    (語り)
    未だ殆ど髯の無い若者が居て
    竈の火口が見える 
    年老いた*クリオージョがひとり *中南米植民地で生まれた白人を指す言葉だった
    苦いマテ茶と 
    いつも耳を傾けて聞くとよい小言がひとつ
    人生からは経験を貰うもの
    だから そのがさつな*ガウチョは *(主としてアルゼンチンの)牧童・カウボーイ
    粗い革ひもを手で弄びながら
    こんなふうに唄い始めた

    (唄)
    年をとると繰りごとや小言が唇に出る
    マテ茶を回し飲みしていると
    老いた俺の身体が風に耐えている
    辿って来た径からも
    男には学ぶものが沢山ある
    だから 俺は時々唄いながら
    小言を言いたくなる

    餓鬼の頃から高慢ちきで自慢ばかりする奴は
    ――偉そうに言うつもりはないが――
    駆け足で身を持ち崩すものだ
    苦しみから逃れようとして
    決して刃物を抜いちゃいけない
    よく考えて落ち着いている方がいい
    それは確かなことだ

    俺には家も家畜の囲い場もある
    せっせと働いて稼いだのだ
    貧しい暮らしから始めなければいけない
    この話を忘れないで欲しい
    そして何時も覚えているのだ
    遊びと女と酒が好きな奴は
    終いには貧乏になってしまうことを

    この世で人を幸せにしてくれるのは金ではない
    まともに暮らす方がいい
    誰もこのことには逆らえない筈だ
    友情こそしっかり大切にするべき財産なのだ
    まともに生きる気がある相手には
    いつも俺は僅かでも分かち合うのだ

    邦訳:大澤 寛

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    「Tinta roja」(赤インク)       
    Letra : Cátulo Castillo (1906-75)  Música : Sebastián Piana (1903-94)
    大きな壁よ 
    昨日の暗闇の中に赤いインクは
    お前の 上手くやったコソ泥の気分を
    俺の街の露地には インクの沁みで街角を
    そして 夜の拡がりに
    巡回の口笛を鳴らした夜警のお巡りを
    逃げて行く泥棒みたいに描いてあった
    そして あの赤い郵便ポストも
    そして ワインに心を湿らせて
    遠く別れた金髪の恋人を想って 
    イタリア人がいつも泣いていた
    あの安酒場も

    俺の町は何処にある?
    俺の子供の頃を盗んだのは誰だ?
    俺のお月さんよ 何処の街の片隅で
    あの頃のように 明るい喜びを撒き散らしているのだ?
    俺が歩いた歩道も
    もう今はそうじゃない悪童たちも
    俺の心の一かけらが あの澄んだ空の下で
    夜更かしをする

    大きな壁よ 
    昨日の暗闇の中の赤いインクは
    あの娘を隠したあのバルコニーのゼラニウムに
    俺が泣いて どくどくと流した悲しい血なのだ
    俺には判らない
    俺の黒い悩みだったのか お前の赤い静脈だったのか
    俺の流した無駄な血よ
    何故あの娘は やって来て去って行ったのか 
    赤いポストの裏側に
    そしてあの遠くの暗い安酒場
    故郷への想いをワインに乗せて
    イタリア人がいつも泣いていた                邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Toda mi mida」 (命の限り)
    Letra : Pascual Contursi (1888-1932)                           
    Música : Aníbal Troilo (1914-75)

    長い時が過ぎた今
    お前に会えなくなって 話すこともなくなって
    いつも いつまでも お前を探すのに疲れて
    俺は お前に忘れられて 
    ゆっくりと 死にそうなのだ
    俺の冷たい額に お前は
    唇付けを残すことはない

    お前は俺を とても愛してくれた
    とても とても 俺が愛したように
    だけど その替りに 俺は悩んだ
    もっと もっと お前よりも
    何故 お前を失ったのか解らん
    何時 お前が居なくなったかも
    だけど おれはお前の傍に
    俺の命の全てを置いて来た
    そして今 お前は俺から遠く離れて
    忘れる術を知ったのだ
    俺は お前の人生の通り道なのだ
    それだけなのだ

    俺は死ぬ時に 欲しいものは何もない
    お前を見ることもないだろう 
    決して 決して
    いつかお前が 俺のせいで
    涙を流したとしても
    それは 俺を深く愛してくれたからだ
    必ず俺を許すだろう

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Tomo y obligo」 (交わす盃)
    Letra : Manuel Romero (1891-1954) Música : Carlos Gardel (1890-1935)
    (ここにも「交わす盃」という先人の名訳がある)
    おれも呑みやすから お宅もいっぱいやって下さいよ
    故郷(くに)からは離れ 友達(だち)も居らんし
    今日は思い出を消しちまいたいんでさ
    俺の悩みを お宅の胸にぶちまけさせて貰いてえんだ
    一緒に呑んでくだせえ そして 時々俺の声が曇っても
    それは 俺を騙した女を恨んで泣いてるんじゃねえんだ
    男は泣くもんじゃねえことくらい判ってやすよ

    パンパの草が口をきけたら 
    お宅に話してくれるでしょう
    俺がどんなにあいつを愛し 
    どれほど熱くあいつを想っていたか
    葉を散らした木の下で 
    昔あいつにキスしたあの木の下で 
    何度俺は 震えながら跪いていたことか
    そして今 落ちぶれたあいつが
    他の男の腕に身を任せているのを見ると
    嫉妬に目の眩んだ俺のナイフの
    ほんの一刺しでよかったんだ
    誓って言いいやすが 俺には今でも判らねえ 
    どうやって思い留まれたのか
    あそこであいつを殺っちまわなかったのか

    俺も呑みやすから お宅も一杯やって下さいよ
    女のことは話さないようにしやしょう
    女ってのは皆、兄さん、酷いことをするものでさあ
    今になると それが経験(とし)で判るんでさあ
    言うことを聞いて下さいよ、兄さん、女に惚れちゃいけねえ
    もしそういうことになったら 頑張るんですぜ、兄さん
    悩んで だけど泣くんじゃねえ
    男らしい男は泣くもんじゃねえんだ
    邦訳:大澤 寛
    ガルデルが航空機事故で亡くなる前夜,最後に歌ったのがこの曲。(todotangoから)

    匿名
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    「Tortazos」(平手打ち)1930
    Letra : Enrique Pedro Maroni(1887-1957)
    Música : José Razzano (1887-1960)

    作曲はJosé Razzano とSADAIC に登録されているが異説があってウルグアイ人のLuis Casaravilla Sienra によるものだと言う。また詩には多くのヴァージョンがある。ここではガルデルが1930年6月17日に録音したものを訳した。

    お前は金に負けたのだ
    駆け足やって来たお前に 悪い中央(まち)の灯が
    道を誤まらせたのだ 
    お前は何も構わずに なあ 恩知らずめ
    何もかも台無しにした*      *echar a rodar = 激情に駆られて全てを台無しにする
    目立つことへの憧れが
    お前の心を蝕んだ
    そして今では お前には亭主がいる   
    “辛抱が肝心だぞ!”

    なあ 笑わせるぜ
    お前の新しい戸籍は
    お前が貴族の出だと信じた馬鹿を
    騙したんだから
    お前は鼻ぺちゃの馬鹿娘*だ *pancracio/a = 馬鹿な= bobo, gil, tonto
    イタリア人のジェラルトの娘だよ
    ラ・ボカで働いていた
    あの痩せてのっぽのイタ公*の *goruta = tarugo をひっくり返したもの=イタリア人
    “覚えてないのかい 狂った女よ
    中央(まち)*にやって来た頃を” *ここのasfalto は舗装された中心街を指す。敷石道・石畳と較べて蔑称として使うこともある

    そして今じゃあ 車*を持って *vuature はフランス語のvoiture
    リス*の毛皮を着ているな *petit gris フランス語で (動物) リス grisだけでも“リスの毛皮”
    だけどフランス語でうまく騙されて
    馬鹿を見るぞ
    “どうしますか 何度も聞くけど* どうしますか     *tres veces=repetidamente繰り返し
    クレソン・ラバージュ夫人?”
    腕につける何とかいうもので
    格好付けているのを見ても
    ぶん殴ったりはしないさ
    町なかで喧嘩はしたくないからな

    奥さん “だけどあんたの大人の浮気に
    気を付けないといけないぜ!”
    ラモーナを覚えているなら
    家賃を払ってやりなよ
    成金ぶってはいけないぜ
    金を撒き散らしてさ
    頭を下げろよ なあ
    金のある恰好をしていても
    “だけど お前がタンゴのラ・クンパルシータより
    有名だ*とはなあ!”              *manyado/a = ルンファルドで“知られている”=conocido

    邦訳:大澤 寛

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    Trago amargo (苦い酒)
    Letra : Julio Plácido Navarrine (1889-1966)
    Música : Rafael Iriarte (1890-1961)

    かまどに近寄って下さい さあ ここの俺の傍の
    そしてマテ茶を濃く淹れて下さい
    その木切れをこちらに 火が消えているから
    あの燃えさしを動かして とても濃く淹れて下さい
    そこにある埃まみれのギターを取って下さい
    あの娘が何度も何度も指板に唇付けをしたギターを
    そしてそのリボンは取り外して下さい あの娘が
    血も涙も無く無情に 俺のガウチョの心を騙して
    縫い取りをしたリボンは

    あなたは覚えていますか ああお母さん 
    俺がどんなにあの娘を想い どんなに愛していたかを
    俺はあの娘に命も 短剣(ナイフ)も ポンチョも捧げたのです
    だけどお母さん あの恩知らずは逃げて行ったのです
    その薪を消して下さい 俺の目に悪いので
    涙が出るのです 何故だか判らんのですが
    多分あの娘を忘れたくて 酒に溺れたくて
    そしてあなたの近くに ずっと近くに居たいのです

    泣かないで下さい ねえお母さん
    俺がもっと辛くなるから
    涙を拭いて下さい あなたの涙は俺を苦しめるから
    そしてマテ茶をもうひとつ淹れて下さい 新しい葉を入れて
    そしたら俺は 酒を呑む口に蓋をするから
    暫くして 大平原の沼地に夜が来て
    遠くの方で 祈りの声が聞えるとき
    見捨てられたものたちのマリアさまを拝んで下さい
    そして 俺の哀れなギターには布をかけてやって下さい

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「Traiga otra caña」(カニャ酒をもう一杯)
    Letra y música : Antonio Scatasso (1886-1958)

    もう一杯持って来てくれ
    火の出るようなカニャ酒を
    俺の喉は渇いている
    あの娘(こ)を思い出すたびに
    悩みと怒りで死にそうだ

    もう一杯持って来てくれ
    胡椒を入れたカニャ酒を
    涙流した男のために
    俺の悩みを鎮めるために

    俺は愛など信じはしない
    いわんや他人(ひと)も 喜びも
    まして女の*涙など
    そして誓いの言葉さえ
    *歌詞はruego だが、ここでは lágrima と歌っている

    俺が生まれた世の中に
    値打ちなんぞはありはせぬ
    優しい母を永遠に
    失う時が来たならば

    ずっと続けて注いでくれ
    けちけちしないで なあ店主(おやじ)
    酔って悩みを消すためだ
    俺には金は余ってる

    カニャ酒を呉れ もっと呉れ
    俺には終わった何もかも
    なんで生きてる甲斐がある
    優しい母が死んだのに

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「Trasnochando」(夜更かし)
    Letra : Santiago Adamini (1895-1969)
    Música : Armando Baliotti (1907-82)

    何が起きるか考えず
    どこへ行くのか知りもせぬ
    *放蕩ものはみな同じ        
    夜更かししながら断った
    よき友よ お前の忠告を
    *calavera : (男性名詞として)“放蕩者”、“道楽者”
    まるで敵(かたき)であるかのような
    俺とお前の仲だった
    お前が真実を告げるから

    何時も最高の仲間たち
    踊りと遊びの仲間たち
    それだけではないものがある
    そんな仲間と来る夜毎
    酒と踊りと馬鹿騒ぎ
    過ぎゆくこの世を費い捨て

    お前の知ってるあの女
    夜更かししながら知りあった
    昨夜お前に語ったことを
    繰り返すのは嫌だけど
    俺は全てを失くしてしまい
    あいつのことで残るのは
    それそこにある写真だけ
    俺はもう見たくもない写真
    お前にゃ全て判るだろ
    明日お前が来たときに 
    捨てるか破るか納っておくか
    お前の好きにやってくれ
    俺にはどうでもいいことだ
    見たくもないしあいつのことは
    考えることもしたくない
    俺の眠れぬ夜な夜なに
    俺の悩みを癒すべく
    届くはお前の慰めばかり
    それに応える術もなく
    敗れた俺は今はもう
    探し求める忘却だけを
    俺の終わらぬ夜更かしに

    来た径を引き返すにはもう遅い
    過ぎゆく俺の人生の
    運命(さだめ)に従わねばならぬ
    だけど何時でもお前には
    感謝の思いを募らせる
    判ってくれよ 我がよき友よ
    俺の不幸は癒されぬ

    邦訳:大澤 寛

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