大澤寛のタンゴ訳詞集

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  • 大澤 寛
    参加者

    「¡Qué tarde que es!」 (遅くなっちまったなあ)
    Letra :Aníbal Marconi (1937-2015)
    Música : Osvaldo Sobrero (n/d)
    遅くなっちまったなあ!
    お袋は俺を待ってるんだ
    俺の顔を見るまで
    眠らないで
    遅くなっちまったなあ!
    飲んでると思い出すんだ
    咎められてるみたいに
    古い昔の恋を
    昔の愛が
    欠片も残ってないのかと
    思い始めるから

    お袋はなあ 仲間たちよ あの恋を知ってるんだ
    俺の人生を狂った愛情で満たしたあの恋を
    俺が酔っ払って帰ると 泣きながら唇付けをしてくれて
    俺の苦しさを和らげようとする
    俺はお袋に言いたいんだ あなたの愛する息子のために
    もう悩まないでくれと 全て終わったんだからと
    だけど駄目だ 言えない 言葉が見つからない
    だから俺は 苛立つ気持ちを 夜毎の酒に吐き出すんだ

    (語り)
    遅くなっちまったなあ!
    夜はこんなに暗くて
    俺が愛した女の心に
    似て来るぜ

    遅くなっちまったなあ!
    飲んでるとあの女の顔が浮かぶ
    戻って来たいと言うように
    何の為だ!
    俺が一番愛してるのは
    お袋なのに                                             邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Quedémonos aquí」 (ここに居よう)
    Letra : Homero Expósito (1918-87)
    Música : Héctor Stamponi (1916-97)

    ねえ君 人生は過ぎ去るものだよ
    ここに居よう もうその時なんだ
    ねえ君 ここに居よう
    何の慰めも得られずに 彷徨うことはない
    ねえ君 花は再た咲いたんだ
    けれど孤独の匂いがする ここに居よう         
    我々の倦怠は 終わりの無い詩のようなもの
    ここでそれを終わらせるんだ

    心の窓を開きなよ
    見ろよ あの河の綺麗なことを
    夜が明けるよ 私は君に 
    露の花束を作ってあげたい
    夜も 忘却も もう要らない
    希望の無い酒も もう要らない
    これまでのことを全て
    信じるものの無かったあの昨日に
    葬ってしまおう

    多分君は あんなに暗く心を閉ざしていたから
    太陽に目がくらむのだ だけどそれももう終わる
    そしたら全てに色が見える
    ねえ君 ここに居よう
    ねえ君 花の方へ出ておいでよ
    そしたら 心が求める真実が判るよ
    何かに怯える過去は 泥沼に捨てなよ
    私たちは ここから新しく始まるのだから

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Quemá esas cartas」 (燃やしちまえよ あんな手紙は)1952(歌詞は数年前に書かれていたとされる)

    Letra : Juan Pedro López (1885-45)
    Música : Alberto Cosentino (1904-86)

    燃やしちまえよ あんな手紙は 
    孤独で病んだ俺が 酷い不幸を彫り付けた手紙は
    誰にも知られたくないのだ お前をあれほど愛したことは
    誰にも知られたくないのだ 神様の他には

    燃やしちまえよ さっさと 世間に知られないように
    夢を殺した罪のない男が
    今にも死にそうな若い男が
    苦い苦しみに悩んでいることが

    お前をそれほど愛していたのだ 大事なお袋を
    お袋を忘れるほど お前のことばかり思っていた 
    見ろよ 薄情者め どうやって消えたか
    俺の中に生きていた全ての夢が

    俺はもう お前の白い手が
    あの古い塒に戻って来るとは思わない
    俺はもう お前の白い手が
    俺の胸の傷を塞いでくれるとは思わない

    そしてお前を許そう 愛を知った男は
    昔の唇付けを悪く言ったりはしないのだから
    呻き 這い回るのだ 復讐はしないで
    そして黙って泣くのだ 俺がそうするように

    だけど 他の運のいい男の腕の中で
    快楽と恋に溺れる時
    少しは思い出せよ お前が挫折させたことを
    悩んで死んだ存在(おとこ)のことを

    邦訳:大澤 寛
    この邦訳の歌詞はHéctor Mauré がコンフントの伴奏で歌ったものの聴き取り。
    よく知られたテキストと異なる単語が随所に使われているが、意味には大きな違いは無い。
    多くの歌手が取り上げている。 Alberto Morán + Almando Cupo など。アンデスのワルツを取り入れたものだろうか?
    「Que nadie sepa mi sufrir」 に似通ったムードがある。ピアノ伴奏を殆んど同じにしたアレンジがある。


    大澤 寛
    参加者

    「¡Quién hubiera dicho!」 (誰が言っただろうか)
    Letra : Luis César Amadori (1902-77)
    Música : Rodolfo Sciammarella (1902-73)

    何と言うことだ 仲間よ
    この世で起きることは!
    俺はあの女を愛してはいなかった
    初めて会ったときには
    或る晩 あいつが あっさりと
    俺に言うまでは
    もう何事にもとても疲れたのと
    そしてあいつは出て行った
    何と言うことだ 仲間よ
    この世で起きることは!
    あの時からだ
    俺があいつを愛し始めたのは

    あいつを忘れるために
    俺はどれだけの苦労をしたか!
    どれだけの狂った夜を
    過ごしたことか
    誰が言っただろう
    あんな女*のために *por ese mono = por esa mujer
    俺がしたような苦労が
    したいと!
    俺は人生を投げ出した
    酒場に
    俺はもうあの女を忘れたと
    世間の奴らに判らせるために
    しかしそれは全部 嘘なのだ
    俺は独りになると
    泣いたものだ 仲間よ
    女みたいに

    2年もの間
    俺はあの女と暮らした
    しかし決して 夢の中でも
    あいつを愛しているとは思わなかった
    誰か俺に教えようとしていたか
    俺がどんなに 狂ったように
    何でもするだろうと
    いつかあの女に再た会うためなら!
    何と言うことだ 仲間よ
    この世で起きることは、、、
    俺たちはマンガの主人公*さ
    愛することを始めるなんて!

    *machietta=machieta=maquieta:イタリア語macchiettaから = caricatura = マンガ、戯画、風刺画

    邦訳:大澤 寛

     平明な歌詞で知られるCésar Amadori 作品だが、タイトルの 「¡Quién hubiera dicho!」 とそこから始まる4行が訳し難い。主人公(この歌詞の語り手)が言いたいのは、自分がこの女と関わりを持って(一時期を一緒に暮らして)経験したような苦労は他人は誰も判らないだろう、そんな苦労がしたいなどと誰が言っただろうかという内容だと解する。
     Carlos Saura 監督作品の映画 “Tango” の冒頭でこの曲をAdriana Varela が歌っている。


    大澤 寛
    参加者

    「Quiero verte una vez más」(もう一度お前に会いたい)
    Letra : José María Contursi
    Música : Mario Canaro

    想い出と語るようにと 
    誘いかけて来る午後に
    お前を待って泣くのは辛い
    こんなところに潜み暮して
    苦しみながら どんなにお前を探したことか
    だけど見つけられずに
    何時? なあお前 俺は何時死のうか?
    お前を忘れるために

    もう一度会いたい
    愛しいお前
    そしてお前の瞳に見つめられて
    うっとりしたいものだ
    もう一度会いたい
    お前は言うかもしれないが
    もう何もかも終わったのだと
    愛の燃えかすを掻き回すのは
    無駄なことだと
    もう一度会いたい
    俺はこれほど悲しんでいる
    どうしても思い出せない
    何故お前が去(い)ってしまったのか
    もう一度会いたい
    そしたら俺は 苦しみの中に
    救いを見つけて
    片隅に忘れられて
    静かに死ねるだろう

    お前が 俺の思いを
    包むことが出来る夜
    俺たちの昔を探して
    風が運び去る嘆き

    お前を呼んで
    俺の心が流した血
    お前を忘れられずに
    俺の理性を焼き尽くす熱

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Rebeldía」 (抵抗) 1946
    Letra : Oscar Rubens (1914-84)
    Música : Roberto Nievas Blanco (1916-?)

    心を締め付ける血の色の手で
    声にならない後悔の叫びを押し殺しながら
    抵抗するの 火に立ち向かう水のように
    岩に立ち向かう海のように
    今 私は立ち向かう
    理性を持たない暴君みたいな貴方の愛に
    抵抗するの 私自身の心で
    頼むから出て行って 私を独りにして
    すぐに離れて行って それでいいのよ

    判っているわ
    後で泣くことも 決して貴方を忘れないことも
    判っているわ
    貴方の笑顔も無く 貴方の声も聞こえず
    毎晩 どれほど貴方の愛を求めることか
    だけど 貴方を失う方が良いのよ
    貴方に会うためだけで 
    いつまでも操り人形でいるよりは
    嫌よ 頼むから放っておいて
    今日 私の愛が抵抗したの

    貴方には何も求めずに 私の心をあげたわ
    貴方の愛のかけらと引き換えに
    費い果たしたわ 私の心も 私の喜びも
    あれほど貴方を愛することに狂って
    だけど無駄だったわ あれほどの愛の代償(かわり)に得たものは
    蔑まれ 嘘をつかれ 見下されること
    だから 頼むから出て行って
    すぐに離れて行って それでいいのよ

    邦訳:大澤 寛
    (女性から男性への決別の歌。多くの女性歌詞が手掛けている。Susy Leiva, Virginia Luque, María Graña など)。


    大澤 寛
    参加者

    「Recuerdo」(1924)(思い出)
    Letra : Eduardo Moreno (1906-97)
    Música : Osvaldo Pugliese (1905-90)

    (歌詩には異なるヴァージョンがある。 この邦訳はtodo-tango 掲載のものによる。 1924年に曲が作られた数カ月後にこの歌詞がつくられたとされる。よく知られている Jorge Maciel が歌うものとは後半がかなり異なる)

    昔 詩人たちは歌い
    オーケストラは泣いた
    .快楽の匂いのする 甘い夜の中で
    気ままな暮らしと傷つきやすい青春が
    女の魅力の虜になって
    南の街区(まち)のバーで汚れて行った
    夢に焦がれて死にそうで
    青春の歌を殺しながら

    女よ
    俺の作った最高の詩(うた)の中の
    女よ
    俺は決して恋をしなかった
    許してくれ
    もしもお前が 俺の理想の輝きであるのなら
    許してくれ
    お前が 俺の詩(うた)の書き出しになるのなら

    こうしてバーの中の声は
    永遠に消えた
    その声*が持つ 較べるものの無いモチーフ は  *言葉は易しいが内容は深いのだろう。“声” は詩人を指すものと
    もう決して聞こえなかった                     解釈して置く

    酔っ払いのミミ
    パリからやって来た
    お前の足跡を追って
    あの古いカフェに集まった
    あの若者たちの輝きは
    消えて行った
    ミミの名前は残った
    過去の手で刻まれて
    南の街区(まち)のカフェの古いテーブルに
    そこでは まさに昨夜のことだが 
    昔の影がひとつ
    傷つきやすい青春の思い出と
    女の冷たさのせいで
    知らずに眠りについた
    あのカフェ・コンサートで

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Remembranzas」 (思い出)1934
    Letra : Mario Battistella (1893-1968)
    Música : Mario Melfi (1905-70)
    お前が傍に居ないと
    一週間が何て長いのだろう
    何かこの世のものでない力で
    お前と離れていることに耐えている
    私の希望の光りは消え
    私は海に浮かぶ難破船のようだ
    遠くに消えて行くのだ
    だけど諦められない

    ああ 思い出すのはなんと辛いことか
    あれほど愛した後で
    過ぎ去ったあの幸せの後で
    夢の花は
    二人の恋は
    萎れてしまった
    ああ 私がつれなくしたのは忘れて
    帰って来て欲しい
    二人の愛に
    そしたら 二人の愛が
    あの日の花のように
    再た咲くだろう

    暖かい 薔薇色の二人の部屋には
    何もかも残してあった 昔のように
    どんな飾り物にも どんな物にも
    私はいつもお前を見ている 昨日のことのように
    小机に置いてあるお前の写真は
    私の嘆きの証明書なのだ
    もう萎れた あの紫陽花の花は
    二人の愛の歌だった
                                                           邦訳 : 大澤 寛
    remembranza (文語)=recuerdo
    valor = 勇気・勇敢さ、 (不愉快なことに対する)忍耐心


    大澤 寛
    参加者

    「Rendido」(打ちひしがれて)1945
    Letra : Alberto Leiva (n/d)
    Música : Alfredo Cordisco (1916-2016)

    苦しみ、、、その指は私をつねる
    怖れ、、、和らぐことのない
    苦しみは お前の思い出と私が昔を想うこと
    そして この絶望的な愛が私にこんなに悪いことをする
    私の心に 呪いのように入りこんだ
    お前の瞳の魔力への怖れ
    苛立ちは 自分が捨てられたことを知り
    手を縛られてお前の愛の思い出に身を投げること

    お前に帰って来て欲しいとは言わない
    憐れみを乞うことはしない
    お前を呼んでも お前が来ることがないのを
    知るのが怖くて震えているのだ
    お前を忘れることが出来ない苦しみを
    静かに泣いているのだ
    もう決してお前に会わないという
    強い苦しみが私を痛めつける

    嘆き、、、私を打ち負かし膝まずかせる
    独りで、、、厳しい現実を前に
    誰も聞いてはくれない私の嘆きと苦しみを
    叫んでも無駄なことだと思う
    お前の酷い冷たさは
    情け容赦なく傷つける運命の手だと思う
    そして 打ち負かされるのは私の心なのだ
    許されること無く 守られること無く 愛の咎めを受けて

    邦訳:大澤 寛
     この歌の内容も間違いなく男の嘆き節だろうから “俺” と訳したいのだが、何となく “大人しい” “優しい” 言葉遣いなので邦訳にも “私” を使った。1945年の作だとされるが、当時は未だ “検閲” の時代の影響が強く残っていたのだろうか? この歌詞には全くルンファルドは使われていないし、教科書的(?)な固さが感じられる。


    大澤 寛
    参加者

    「Ríe, payaso」(笑えよ、道化)
    Letra : Emilio Falero (1887-1953)
    Música : Virgilio Carmona(1895-1948)

    顰めっ面と高笑い 道化は誘う俺たちを
    カーニバルの賑わいに
    君たちは気が付かないか 笑いで隠す悲しみを
    厚い化粧のあの顔の 奥に隠した真実を
    来なよ 道化よ 奢るから 
    俺のテーブルに来て酔わないか
    悲しみを友とする仲間なら
    お前にゃお前の悲しみが そして俺にも同じこと
    シャンパン飲んで忘れよう

    笑ってくれよ お前が笑うと俺にも伝染(うつ)る
    較べようもない可笑(おかし)さで 神の使いの魔法のように
    飲もう一緒に 飲もうぜ 俺は
    俺のためのカーニバルに 有り金全部を費(つか)いたい

    泣くのかい よき友 道化
    お前の悩みを知らない奴が 居ても 泣くことなんかない
    涙拭きなよ 笑いなよ どうだい さあ 
    「ちょっと ボーイ もっとシャンパン持って来てくれ」

    悲しい笑いをする道化 俺も道化と同じこと
    打ちひしがれた心を抱いて そんな心を忘れたい
    羽目を外した馬鹿騒ぎ 歌と酒との間には
    金で誘った女を連れて 喜びに酔い痴れるのだ

    ちょうど一年前のこと 未だ明けやらぬ朝まだき
    休みたくなり家路を辿る そして着いたら女の部屋に
    明りが点いていたものだ 思い出さない方が良い
    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Romance de barrio」(下町のロマンス)
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Aníbal Troilo (1914-75)

    始まりは あの遠い4月の約束
    あなたの家の暗いバルコニー 古い庭
    それから 熱く脈打つような手紙の数々
    違うと嘘をつき そうだと誓う

    下町の恋 あなたの愛 私の愛
    初めは愛 その後は悩み
    決して二人が持っていた罪ではなくて
    二人して悩まねばならなかった罪による悩み

    今 あなたは暮らしているだろう 私を蔑みながら 
    あなたが居ないので 忘れられない苦しさを 
    私が嘆いていることを
    多分夢にも気が付くことはなく

    今 あなたが居るのは 私からずっと遠く離れたところ
    私のこれほどの涙から 離れたところ
    そうだったのだ 
    あなたも私も悔しくて目が眩んでいて
    別れることを恨んで あなたがあなたの心をひどく責めていたことに
    気付かなかった

    そうだったのだ
    忘れられずに生きるより
    捨てて別れることのほうが易しいと
    二人は すぐには分からなかった

    あの4月の約束は 時が過ぎて灰色
    あなたの家の暗いバルコニー 古い庭
    熱く燃える手で書かれた手紙の数々
    違うと嘘をつき そうだと誓う

    打ちひしがれたあなたの声と私の声が戻って来る
    恐れを抱いた声が連れてくる
    決して二人が持っていた罪ではなくて
    二人して悩まねばならなかった罪による悩みを

    邦訳:大澤 寛

    Cegar : 失明させる・目を眩ませる、  分別をなくさせる
    Rencor : 恨み・遺恨   resentimiento(恨み・怒り),   aversión(嫌悪・反感)
    Despecho : 悔しさ・恨み・忌々しさ resentimiento, tirria(敵意・反感), desilusión
    Renegar : 強く否認・否定する、 信仰などを捨てる・棄教する、 嫌う・家族として認めない
            Renegado/a = 背教者
    Ceniza : 「灰色」の意味あり

    Porque sí, Porque no, 用例 断定的な肯定・否定
    “どうしても” “どうって” “だってそうなんだから” “嫌と言ったら嫌なんだ”
    ¿Por qué lo dijiste? Porque sí. ¿Por qué no vas? Porque no.


    大澤 寛
    参加者

    「Ropa blanca」(白い服)
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Alfredo Malerba (1909-94)

    ムラータ*よ 服を洗いなさい
    一緒に恋も悩みもね
    泡は白くて 綿のよう
    靴墨みたいに黒い手で
    ムラータよ 服を洗いなさい
    一緒に恋も悩みもね
    *mulato/ta は白人と黒人の混血児のことだが適当な訳語がないのでそのままにした。mulataは女性を指す。
    ひとは言う
    南の風が河に吹き
    お前の恋しいフランシスコ
    青い小舟で出て行ったと
    お前は泣き泣き洗ってる
    お前は悩んで嘆いてる
    恋人が去(い)ったあと
    愛し続けるのは辛い
    ひとは言う
    河から 窪地から
    そして長い通(とおり)から
    お前の心が奪われたと

    洗った服は 風に揺れ
    悲しく大きく 見開いた
    お前の瞳に出来るのは
    泣くことだけ
    誰なんだ こんな昼間に泣かせるのは
    ムラータよ 服を洗いなさい
    一緒に恋も悩みもね
    涙とシャボンで 洗ってこすって
    心の傷を流しなさい
    ムラータよ 服を洗いなさい
    一緒に恋も悩みもね

    靴墨みたいに黒い手で
    白い服を洗いながら
    お前の心が織り上げた
    あのハンカチを思い出す
    川辺で服を洗っていると
    波がお前に教えてくれる
    恋というものは何時の日か
    来た日のように去って行く
    泣かないで 
    南の風が河に吹き
    フランシスコは青い小舟で
    帰って来るだろうから

    邦訳:大澤 寛

    betún : 瀝青、 靴墨
    betún de Judea アスファルト  negro como el betún : 真黒な
    cañadón : (ラ米)低地・窪地
    fregar : (汚れなどを)こすり落とす、 磨く・洗う
    tizón : 1.燃えさし  2.(名誉・体面などの)傷・汚点  3.(麦等の)黒穂病
         negro como un tizón 真黒な


    大澤 寛
    参加者

    「Rosalina linda」(美しいロサリオ娘)
    Letra : Emilio Fresedo (1893-1974)
    Música : Osvaldo Fresedo (1897-1984)

    俺に言ってくれよ
    回りくどくしないで はっきりと
    顔を上げて 
    心を開いて
    本当に俺のものになるか
    いつか俺に言ったように
    愛されていないと悲しいと言うのが
    本当なのなら

    美しいロサリオ娘よ
    お前の唇 お前の目
    神様が天(そら)から俺に届けてくれた
    俺の命への贈り物
    美しいロサリオ娘よ
    お前の眼差しにある何か
    見詰めたくさせる何かが
    お前のためなら 喜んで死ぬよ

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「Rubias de New York」(ニューヨークの金髪娘たち)
    Letra : Alfredo Le Pera (1904-35)                           
    Música : Carlos Gardel (1890-1935)

    ペギーに ベティに ジュリーに メアリー
    ニューヨークの 金髪の娘たち
    愛の嘘つく 飾った髪で
    空の星さえ 羨むほどの
    あの娘たちが居なかったなら
    私は生きて行けるだろうか
    メアリーに ペギーに ベティに ジュリー
    花のような唇の

    ジュリーの笑いは 水晶のよう
    それは泉の唄のよう
    私の眠りの邪魔をするのは
    ペギーの甘い あの魅力
    瞳は深い海の青

    匂い立つ 甘い生き物たちよ
    口紅掃いた 小さな唇(くち)の
    その唇付けが欲しいもの 
    忘れっぽくて嬉しくて 壊れやすい人形たちよ
    鈴のように 喜び笑う

    ひとを酔わせる茶色のカクテル
    メリーは まさにそんなふう
    お前の輝く長い髪を
    私のものにしたいのだ
    お前が私にくれた愛が
    ほんの一日限りのものでも
    燃え盛る炭火みたいだ
    お前の愛は なあ ベティ

    邦訳:大澤 寛


    大澤 寛
    参加者

    「San José de Flores」(サン・ホセ・デ・フローレス)
    Letra : Enrique Miguel Gaudino (1899-1974)
    Música : Armando Acquarone (1891-1975)

    今お前に会うのは辛いなあ フローレスの街よ
    うろつき回る餓鬼の俺が 遊んだ街角も
    古びた想い出も 果てしないロマンスが
    生まれる恋物語も
    俺はこの街で生まれ この街の舗道で育って
    ある日巣立ちをしたのだ 勝つことを夢見て
    そして今戻って来た 貧しく敗れて 
    悲しみを背負い 長い彷徨(さすらい)に疲れて

    幸せも運も俺を避けて通った
    多くの不幸と苦しみの中に
    夢の破片(かけら)を撒き散らして 
    もう一度お前に会いたいという 聖(きよ)い希いを抱いて
    見知らぬ土地で 俺は運命と戦った
    真っ直ぐに 後戻りせず 嘘をつくことを知らずに
    そして疲れ果て この上なく貧しくなって
    故郷へ向かったのだ そこで死ぬつもりで

    これほど帰りたくなったことはない
    もう一度お前に会って 今 俺は泣き出し
    俺の唇は 震える祷(いの)りのように言い出した
    “これは俺の街ではない どこかへ移(い)ったのだ”と
    ここに留まって 昔の名残の中で死にたいけれど
    仲間たちも 家庭も 何もかも失くしたのだ
    何もかも 
    だからもう一つ傷を負っても構いはしない
    彷徨(さすら)うのが俺の運命なのだろう

    邦訳:大澤 寛
     

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