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大澤寛のタンゴ訳詞集

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    「Mis amigos de ayer」 (1945) (昔の仲間たち)
    Letra : José María Contursi (1911-72)
    Música : Francisco Lomuto (1893-1950)

    今夜俺は 思い出に浸ってぼんやりしたい
    この場所のものごとが持つ 濃い じわっと来る冷たさの中で
    時が経ち変わってしまった古い通りをうろつきたい
    そして 街区(まち)の忘れられた敷石の中に身を沈めたい
    星たちも 藤の花の匂いのするゼラニウム色の町角も
    驚いて俺を見つめる
    多分俺は 年老いて物憂げで だらしなく見えるのだ
    この熱い思いが 両の眼から流れるから

    何処に居るんだ 俺の仲間たちは
    俺の昔の仲間たちは?
    俺が小悪魔みたいにやって来て泣くのを
    帰って来て泣くのを あいつらに見られたらどうする!
    あいつらは消えちまったのか?
    多分 灯りも 決まった行く先も 信じることもない何処かへ
    違う道に
    俺もまた沈んだ
    俺が 小悪魔みたいにやって来て泣くのを
    昔の仲間たちに見られたらどうする!

    何のために今 時が運び去ったものに泣くんだ?
    俺の愛が死んでいるように 俺の過去が死んでいるのに
    声がひとつ 俺の耳に忘れた歌を歌って聴かせる
    そして匂う夜は 全てが歌になる
    通りも 星たちも 藤の花の匂いのするゼラニウム色の町角も
    俺を悲しくさせる
    俺は ずっと年老いて物憂げで ずっとだらしなくなっているんだ
    そして 俺の想いは涙になって 両の眼から流れる!

                                                                 邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Mocosita」 (モコシータ)
    Letra : Víctor Soliño (1897-1983)
    Música : Geraldo Hernán Matos Rodríguez (1897-1948)

    打ちひしがれて 心は痛み
    希望(のぞみ)はなく 生きることに嫌気がさして
    痛む心に安らぎはなく
    哀れなパジャドール*は
    その小部屋ですすり泣いている
    *payador : payada(パジャーダ)=ボリビア・チリ・ラプラタ地域で即興的に歌われる民謡を歌うガウチョのこと。
    吟遊詩人、流しの歌い手、などと訳される。

    ギターは片隅に見捨てられ
    釘に掛けてある
    もう そのパジャドールには
    ギターの音などどうでもいいのだ
    ベッドに横たわって 泣くだけだ
    時々 こんな歌が聞こえるだけだ

       俺のモコシータ*よ
       俺を死なせないでくれ
       この部屋に戻って来てくれ
       俺は生きて行けないのだから
       判るかなあ 俺が何度
       再たお前が傍に居る夢を見たか
       俺のモコシータ*よ
       そんなに邪険にするなよ
       俺を捨てないでくれ
    もう一度お前に会いたい
    モコシータ*よ 俺を捨てないでくれ
       お前に蔑(うと)まれると 俺は少しずつ死ぬのだ
    *mocosita: 女性・女の子の俗な愛称のひとつ。moco は南米の俗語で鶏冠(とさか)とか取るに足りないものを指す。そのmoco の縮小辞

    共同(コンベン)住宅(ティージョ)は静かに眠りについて
    夜の静けさを破るものはなかった
    その時聞こえた 遠くの暗がりで
    一発の銃声が

    隣人たちは 心配して駆け付けた
    あのパジャドールのドラマの結末(なりゆき)を
    予感していたから
    そして見付けた
    あのパジャドールが血にまみれて
    ベッドに倒れているのを
    そして誰かが聴いた
    パジャドールが死ぬ前に
    こんな風に歌うのを

       俺のモコシータ*よ
       俺を死なせないでくれ
       この部屋に戻って来てくれ
       俺は生きて行けないのだから
       判るかなあ 俺が何度
       再たお前が傍に居る夢を見たか
       俺のモコシータ*よ
       そんなに邪険にするなよ
       俺を捨てないでくれ
    もう一度お前に会いたい
    モコシータ*よ 俺を捨てないでくれ
       お前に蔑まれると 俺は少しずつ死ぬのだ

    邦訳:大澤 寛

      

    匿名
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    「Moneda de cobre」(銅銭)
    Letra: Horacio Sanguinetti (1914-57)                  
    Música : Carlos Viván (1903-71)

    お前の親爺は金髪で呑んだくれの悪党だった
    お袋は紅い唇(くち)した黒人女
    ムラータ(混血の女性*)に生まれたお前には   *mulato(男)/mulata(女) は白人と黒人の混血
    空色の眼と黒い縮れっ毛
    ひどく貧しい裏町で泥にまみれて育ったお前
    二十歳なったのは キャバレーで働きながら
    そして今 お前は悲しく年老いて
    もう要らないからと “銅銭*”と呼ばれてる   *価値の低い小銭

    “銅銭”とはなあ
    俺は お前が昔綺麗だったことを知っている
    お前がバラ色の羽の蝶みたいに飛ぶのを見た
    そしてお前が墜ちるのも
    泥の銭だなあ
    お前のタンゴの踊りは上手かった
    あの頃のお前はとても綺麗だった
    ブロンズの女王みたいに
    あのフォーリー・ベルジュール*で        *同名のキャバレーがあったのだろう

    泥と小銭しかないあの悲しい裏町も
    お前と同じように 消えてしまった
    二十年が過ぎて なあ ムラータよ
    お前の両親(ふたおや)ももう居ない あの街灯も
    多分お前は あの町角の辺りを
    生まれた家を探して迷うだろう
    それでいい 立ち止まるなよ 傷跡を見せるな
    混血であることを嘆くな そんなことはみんな
    何の為にもならない

    邦訳:大澤 寛

    Malevo : (ラ米)(古)悪人、悪党、犯罪者(の)   malevaje :悪い連中
        Malévolo (=悪意のある・敵意に満ちた・底意地の悪い)の短縮形 
    male = mal volo = quiero
    Propenso o inclinado a hacer mal
    Malvón : ゼラニウム
    Mota : 毛玉 (ラ米)1、縮れっ毛 2、絡まった毛 (北米)マリファナ
    Fango : 1、泥・泥水・泥沼 2、不名誉・不面目 llenarle a uno de fango
    Mulato/a : 白人と黒人の混血児  
    (皮膚の色が)淡い褐色の (物の表面が)暗い、黒ずんだ

    匿名
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    「Mundana」(娼婦)
    Letra : Manuel Barros ( -1982)
    Música : José Basso (1919-93) + Floreal Ruiz (1916-78)
    飲もうぜ泣こうぜ夜は招く
    昔に戻った二人のように
    心を曝け出すために
    我々二人の傷ついた
    深い心の傷跡を
    生身で抉りだしながら
    お前が夢見たあの空は
    お前の手には届かずに
    俺の心の荒野には
    花ひとつさえありもせず

    男の怒りがお前を責める
    娼婦よ お前の身体には
    泥と木屑が纏い付く
    俺は 罪に撃たれた巡礼者
    お前は 割れたガラスの身
    そこから顔を覗かせて
    マグダラのマリアは指し示す
    女身の深い疲れを

    俺たちが
    同じ運命の罪人二人なら
    愛の亡霊よ
    俺と一緒に死のうじゃないか
    アルコールの緩い流れに身を失って
    疲れ苦しみ苦労した二人なら
    飲もうぜ泣こうぜ 涙と酒が
    もう一度お前を騙すのだ
    白い嫁入り道具の夢で
    そして俺には貸してくれ
    暮らしを紡ぎ出す夢を
    この泥沼の外では決して暮せぬ俺だから
    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Nada」(何も無い)
    Letra : Horacio Sanguinetti (1914-57)
    Música : José Dames (1907-94)

    君の家までやって来た
    どうやってたどり着いたかは判らない
    私は人から告げられた 君はいないし
    もう決して戻っては来ないのだと
    君は行ってしまったのだと
    私の心には雪が降り積もる
    君の家の入り口はなんと静かなことだろう
    玄関に近づいて見ると
    悲しい鍵が掛っている
    私の心は立ち止まる
    candado = cerradura 錠前・南京錠
    何も 何も残ってはいない 君の生まれた家には
    雑草の茂みにクモの巣があるだけ…
    あの薔薇園もない
    きっと君がいなくなったので枯れてしまったのだ
    あるのは十字の鍵ばかり
    何も無い 悲しみと静けさの他には
    君がそこに住んでいるとは誰も言わない
    君はどこに居るんだ? 君に告げたい
    私が今日 後悔しながら 君の愛が欲しくて
    帰って来たのだと
    yuyal : 雑草地・雑草が生えている・生い茂っているところ
    私はもう 君の家から遠ざかる
    何処へ行くのかも判らない
    言いたくないさよならを 君に告げて
    君の声が木魂になって
    何も無いところから 私に答える
    君の家の十字の鍵に
    君の嘆きを思って 私は祈っている
    君の家の大きい扉に
    涙が一粒 花になって流れる
    哀れな私の心の                       邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Naranjo en flor」(花咲くオレンジの木)
    Letra : Homero Expósito (1918-87)
    Música : Virgilio Expósito (1924-97)

    水よりも 柔らかな水よりも柔らかく
    川の流れよりも 清らかだったあの娘(こ)
    花咲くオレンジの木よ
    あの夏の町に 今は無い街に
    人生の一(ひと)欠片(かけら)を残して
    行ってしまった

    人は始めに悩むことを知らなければならない
    その次に愛すること 又その次に別れることを
    そして最後に 何も考えずに歩くことを
    花咲くオレンジの木の匂い
    風に乗って逃げて行った 空しい約束の数々
    そして次に、、、 その次なんかどうだっていい!
    私の人生なんて みな過ぎたこと
    私を過去に繋ぎとめる
    永遠の 老いた 青春
    私を 光りを失った小鳥のように怯えさせた、、、

    私の手は あの娘(こ)に何をしたのだろう
    何をしたのだろう
    私の胸に あんな苦しみを残して
    古い木立の苦しみを
    街角の唄 人生の欠片(かけら)
    花咲くオレンジの木
    邦訳:大澤 寛

    Estío : = verano (文語)
    Alboleda : 木立、林、小さな森

     タイトルには「花咲くオレンジの木」という先人の綺麗な邦訳がある

    この曲でのHomero Expósito の詩は、言葉遣いは平明だが、内容は深いものがあるのだろう。
    第1連の冒頭の era の主語は何か? 後に続く形容詞が blanda, fresca という女性形だから男性名詞のNaranjo ではない。同じ主語がdejó, se marchó と続く。
     そして第3連の ¿Qué le habrán hecho mis manos? の le は誰・何を指すのか。恐らく第1連の era の主語と同じもの、即ち“別れた彼女・あの娘”と解釈するのが妥当だと思われる。

    habrán hecho は現在完了 (han hecho) への推量

    匿名
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    「Negra María」(黒いマリア)
    Letra : Homero Manzi (1907-51)
    Música : Lucio Demare (1906-74)

    (出だしのbruna は“黒い”の意の形容詞bruno の女性形 ここでは掛け声と考えてもよいでしょう)

    マリアが生まれて揺り籠に
    昼間に生まれた子のマリア
    運の良い子になるでしょう
    母さんは長いドレスを編んで呉れる
    15歳になったら 白いドレスに身を包み
    ダンスパーティに出かけたら
    たちまちマリアは女王様
    15歳になったらね
    お前を黒いマリアと呼びましょう
    黒いマリア カーニバルに生まれたマリア

    ぱっちりした瞳 真珠の歯並び 褐色の肌に
    なるでしょう
    とても赤い唇に とてもしなやかな身体に
    なるでしょう
    踊りに行こうよ さあマリア
    黒い母さん 黒いマリア 黒い
    ギターも バイオリンも バンドネオンの呟きも
    みんなお前に唄いかける
    お前を黒いマリアと呼びましょう
    黒いマリア カーニバルに生まれたマリア

    マリアが死んで揺り籠に
    昼間に死んだ子のマリア お月さまを知らないね
    お前の眠りを白い布で包みましょう
    そしてお前はこの世から 長いドレスでお別れだ
    決して 決して 黒いマリア
    お前が15歳になることはない
    悲しいねえ 黒いマリア
    黒いマリア カーニバルに死んだマリア

    なんて悲しい運命なのか
    縮れっ毛の天使 褐色のカーネーション
    お前のベッドは暗いだろう
    お前の眠りは深いだろう
    天国へ行く黒いマリア
    嘆く母さん 眠るマリア 黒いマリア
    ギターも バイオリンも バンドネオンの悲しみも
    お前のために血の涙
    悲しいねえ 黒いマリア
    黒いマリア カーニバルに死んだマリア
    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Nido gaucho」 (ガウチョの塒)
    Letra : Héctor Marcó (1906-87)
    Música : Carlos Di Sarli (1903-60)
    希望の色を輝かせて
    平原は 羽飾りを纏う
    吹く風は 牧草や花の中で
    馬を繋ぐ綱を揺らす
    俺は丘の上に小屋を持っている
    そこでは渡り鳥が歌い 
    ヒナゲシや薔薇が
    お前のために芽を出している
    そこはいつか 二人のための
    ガウチョの塒になるのだから

    俺の夢が花開く
    そして二人の心が結ばれる
    “うん”と言ってくれよ
    平原に夜が来て 月の光が
    お前の瞳に 愛の灯をともすから

    “いや”と言わないでくれよ
    悩みが 俺の薔薇たちを枯らすから
    渡り鳥が 小屋の十字架で
    お前の愛を求めて 死んで行くから
    明日の朝 太陽が輝く時
    露の滴に混じって 俺のこの愛の涙が
    クローバーに伝い落ちるから
    覚えて置いてくれ お前を思って
    俺が流した涙を

    そして 燕よ
    俺の苦しみが判ったら
    風に向かって 
    お前の二枚の羽根を拡げてくれ
    そして ひと飛びで
    俺の悲しみを消してくれ                                   邦訳:大澤 寛
    同じような気分が歌われているもの
    「Prisionero」 F.G.Jiménez + A.Aieta
    「Ahora soy casado」 (L)Luis Despaux (M)Mario Mascaró Alberto Gómez + O.T.V.

    Plumaje :羽飾り
    Cordaje : 綱・ロープ類  (船舶)索具  (ラケットの)ガット
    Loma : 丘・小山

    匿名
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    「Niebla del Riachuelo」 (リアチュエロ河の霧)1937
    Letra : Enrique Cadícamo (1900-99)
    Música : Juan Carlos Cobián (1896-1953)

    濁った水の船着き場 そこには船が辿り着く
    繋がれて もう永久に 船出することのない
    悲しみの夜に拡がる影になって!
    心を失くして 世間を避ける難破船
    波止場の橋にも索具にも そこには風が泣きに来る
    もう決して船出することのない石炭運びの船
    そこは怖ろしい船の墓場 やがて死ぬ船たちが
    それでも夢を見る 海に向かって船出する夢を

    リアチュエロの霧よ!
    思い出に繋がれて 
    俺は待ち続ける、、、
    リアチュエロの霧よ!
    お前が俺から遠ざける
    あの愛を いつまでも
    あの娘(こ)は二度と帰らなかった
    俺は二度とあの娘を見なかった
    青の娘が二度と俺の傍で俺の名を呼ぶことはなかった
    …“さよなら!”と言ったあの声で…

    船乗りは夢を見る お前に浮かぶ二本マストのブリガンティンの夢を
    静かな酒場でお前の郷愁(ノスタルジア)を飲み干している
    港に雨が降る 俺の歌がゆっくりと お前の悲しみに降りかかるとき
    もう決して 決して巻き挙げられることのない錨
    もやい綱のない大きなランチの船側
    行く先も夢も無い 悲しい船隊
    “安酒場の瓶” に閉じ込められた船のような

    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「Niño bien」(お坊っちゃん)
    Letra : Víctor Soliño (1897-1983) + Roberto Fontaina (1900-63)
    Música : Juan Antonio Collazo (1897-1945)

    “Niño bien” は文字通りの “お坊っちゃん” 即ち “良い家柄・家系に属する” “金持ちの家の” 子供たちを指すのだが、この歌詞は “お坊っちゃん振りをするなよ(そうではないのに)” という内容。

    なあ 坊や 気取り屋で 甘やかされた
    格好ばかり付けたがる
    なあ 坊や 家柄をよく見せかけて*           *llevar dos apellidos = 父方も母方も名家であることを
    Petit Bar を自分の書斎みたいに使って                  見せびらかすため両家の姓を名詞などに書く
    エライ人の振りをする* 馬鹿な奴            *ir + la + ~ =(ル) ~の振りをする
    いつも親父の別荘の話をするけど
    親父は 喰い扶持を稼ぎに
    毎日 fainá* を売り歩いてる             *鍋に煮込んだ安い豆料理

    自惚れてるなあ 他人には “お前” で話しかけ
    紙巻きタバコ*なんか吸いながら *tabaco inglés = 昔は高級輸入品だった煙草が国産
    Sarandíをぶらつきやがる                       されるようになり、やや侮蔑的に使われる言葉
    バレンティーノの真似をして揉み上げを剃って
    お前は馬鹿だよ
    紅い色したネクタイ締めて
    あのChantecler* では     *有名なキャバレー1924年の開店にはJulio De Caro が出演
    ダンサーの振りをする                        1960年の閉店までD’Arienzo などが出演した
    ポマードを塗りたくって
    自分では賢いつもりだが
    お前は哀れな馬鹿ものさ

    なあ 坊や 生まれた下町の部屋は
    灯りは灯油(ケロセン)だったなあ
    お前の血筋はいい加減なものさ
    お前は良い家の出だと言うがなあ
    判ってないなあ* お里が知れてる**ことが   *このmanyarse = saber
    勝ち誇ったように歩いていても         **着飾っていても糸くず・ぼろ(hilacha)が見えている
    世間はお見通しさ お前が目立つためには
    カウンターの後ろで学ぶことが沢山あることを                            邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「No aflojés」 (1933) (気を落とすなよ)
    Letra : Mario Battistella (1893-1968)
    Música : Pedro Maffia (1900-67) + Sebastián Piana (1903-94)

    お前は 皆の中でも一番出来る男*だった *púa : persona sutil, astuta y taimada
    俺は考えた 世間がどんな手段(て)で *ganzúa: (ス) ピッキング=錠前を開ける道具、
    お前の評判を落とした*のかと 泥棒、他人の秘密を巧みに引き出す人
    お前が居なくなって 行きつけのバー*では *piantar : ここでは=quitar, sacar, arrancar
    酒の棚の趣味が変わった *borrachería : bar frecuentado por borrachos
    あの頃の仲間よ
    俺は嘆きのタンゴになって
    お前の格好よさ*を真似て歩こう *pintón : que tiene pinta, elegante
    お前と同じ悩みを悩もう

    お前は踊りの王様だった
    ラウラの店でも ラ・バスカでも
    考えてみたか いい女たち*が *churrasca : mujer hermosa, apetecible
    お前の後を追ってどんな夢を見ていたか
    誰もが呟きを洩らしたものだ
    お前が格好良く靴音を立てるのは
    Yuyoの花みたいだったな
    いつも人の心を酔わせるような

    嫌な時代*が お前をゴミ扱いした  *maula:(単・複同形) miedoso, cobarde (muy despectivo)
    お前の街区(まち)の通りを
    アスファルトで塗装(ぬ)る時に
    俺はそれほど腹を立てたいわけじゃない* *tomar (se) pecho a ~ = ~に固執-執心する、腹を立てる
    だけど あっていいのか 今頃
    そんな馬鹿なことがまかり通って* *tallar : destacarse, predominar en medio de otros
    いい雄(おとこ)だったよ あの頃のお前は // dominar, imponerse a otros
    俺は淋しく*お前に話しかける *desconsolado : 沈んだ、悲しげな
    お前の気持ちの奥に
    人生の最後の曲がり角を回る気持ち**を吐きだすのだから
    **この部分は、競馬用語の volcar el codo (最終コーナーを回ってゴールまでの直線に入ること)にひっかけた俗語的な表現で “歳を取ったこと” “人生の末期に差し掛かっていること” を言うのだろう
    邦訳:大澤 寛

    匿名
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    「No hay barrio como mi barrio」 (我が町に勝るところなし)

    Letra : Carlos Bahr (1902-84)          
    Música : Orestes Cúfaro (1906-72) + Francisco Lorenzo (n/d)

    忍冬(スイカズラ)の生えている中庭と
    呼び売りの歌の節と
    星が一杯の空を
    慎ましく この土地の風情で守っている町
    わたしの想い出を呼び覚ます
    苦しみには 逃げ場を
    冬には ひとつの懐かしい名前を

    帰っておいでとわたしを誘う
    わたしの町みたいな町はない
    だけど私を近づけないように
    向かい風が吹いている

    無関心を装い蔑むように吹く風
    わたしの思いよりも強いのだ
    わたしの町みたいな町は無い
    だけど私はもう帰ることはない

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「No hay otro Carlos Gardel」(ガルデルがもう一人居るわけがない)
    Letra : Alfredo Santos Bustamante (n/d)             
    Música : Ángel Mazzola (n/d)

    俺は怒って悲しんでいる
    こんな話があるものか
    そんな原因(わけ)で俺の心は
    苦い思いに満たされる
    誓って言うぞ 馬鹿げたことだ
    あんな話を真に受けるのは
    アルゼンチン人の風上には置けぬ
    そんな話を造った奴は
    俺に届いた馬鹿な話は
    もうひとりカルロス・ガルデルが居ると言う

    ガルデルがもうひとりだと! 糞喰らえ!
    何たる嫌みか 向こう見ずなのか
    面白くもなく根拠(いわれ)も無くて洒落にもならん
    もしガルデルが現在(いま)生きてたら
    もしカルロスが死んでなかったら
    俺は迷わず断言するぞ
    真似をしている連中は
    今頃港でひしめき合って 
    荷物担いでいるだろう

    ガルデルは 慰めにもならんけど
    あんな賢い男だったんだ
    だから或る日契約を結んで
    天国へ歌いに行っちゃたんだ
    俺たちゃ喪に服しているけど
    安心しても居られるんだ
    何故ならあの威勢のいいモローチョは
    溢れんばかりの笑顔を見せて
    天国へ運んで行ったんだ
    我が下町のガウチョの歌を

    小首かしげた鍔広帽子
    胸には白いハンカチ挿して
    そしたら権利があるものと
    あのモローチョを押しのける
    フランス風のパンタロン
    いとも易しく軽やかに
    ポスター観ながら真似するように
    考え違いをするじゃない
    たとえ千年経ったとしても
    ガルデルがもうひとり生まれはしないんだから 
    (斜体部分が Tangueando en japón 第32号掲載の拙訳「カルロス・ガルデル」第3章に引用されている)

    だから俺は怒ってるんだ
    このしょうもない作り話に
    縋りつきたい気持ちもあるが
    ぶっ壊してやるぞ俺は本気だ
    かなりの出来だとしても偽物ってのは嫌なんだ 
    ガルデルに立ち合い人になって貰って
    俺の怒りが正しいことを
    お袋にかけて誓うぞ
    ガルデルがもう一人居るわけがない!

    邦訳:大澤 寛

    CD Jorge Vidal “Recordando Exitos” EMI-DBN 7243 4 77594 2 0杉山さんからご教示を受けた)

    匿名
    無効

    「No llores por mí, Argentina」
    (私のせいで泣かないで欲しい アルゼンチンよ)

    判って貰えないかも知れないけれど
    今日私は *1)こんな場所に居るけれども
    私は国民の皆さんのものなのです
    決して皆さんを忘れることなどありません
    私を信じて欲しいのです
    私がきれいに粧って居るのは ただ仮の姿なのです
    上流社会のしきたり 儀式の際の決め事に過ぎないのです

    それらを受け入れて 私は自分を変えねばならず
    質素な暮らしから 離れねばならなかったのです
    いつも陽の当たらない窓越しに 自由になりたいと願いました
    だけど 夢見ることは決してやめませんでした
    そうすることで 皆さんと分かち合える信念を持つことが
    可能になるのです

    *2)アルゼンチンよ 私のせいで泣かないで欲しい 
    私の心は あなたと共にあるし
    私の命の全ては あなたに捧げるのです
    私から離れないで欲しい あなたが必要なのです

    *1) 大統領府のバルコニー(日本風にいうなら“高いところ”に)
    *2) ここはもちろん“国民の皆さん”ということ

    邦訳:大澤 寛

    匿名
    無効

    「No me escribas」 (俺に手紙はよこすなよ)
    Letra : Juan Andrés Caruso (1890-1931)
    Música : Agustín Bardi (1884-41)

    俺に手紙を呉れるなよ お前のことは知りたくない
    怖いんだ とても怖いんだ お前の手紙で惨めになるのが
    いつかお前は言うだろう 俺のことなど忘れたと
    お前の唇付けも愛撫も 他の男のものになったと
    お前には判らんだろう お前が居なくなってから 俺がどれほど悩んだか
    お前が居なくなり 俺が独りになった時
    怒り嘆いて 何をしたかも覚えていない
    そしてあの夜 悲しみ悩んで酔い痴れた

    あれからずっと俺は お前の思い出を消そうと
    俺の胸からお前を引き抜こうと この激しい愛を殺そうとして来たんだ
    だけど無駄だった お前を忘れようとすればするほど
    お前は 釘*みたいに俺の哀れな心に突き刺さった *grampa = grapa ホッチキスの針 (ラ米)安ものの蒸留酒
    俺は お前の写真を部屋の壁いっぱいに張り付けている
    そして あの頃呉れたお前の手紙を残してある
    そこではお前は俺の愛を決して忘れないと言ってるから

    俺に手紙を呉れるなよ お前のことは知りたくない
    怖いんだ とても怖いんだ お前の手紙で惨めになるのが
    いつかお前は言うだろう 俺のことなど忘れたと
    お前の唇付けも愛撫も 他の男のものになったと
    昨日の午後 お前の思い出に浸って
    ひどく悲しんでいたら 手紙が一通届いた
    それがお前からだと判った時 読むのが怖くなって
    震えながら 開けずに破った

    邦訳:大澤 寛

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