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「La limosna」(施し)
Letra : Horacio Basterra (Horacio Sanguinetti) (1914-57)
Música : Juan José Guichandut (1909-79)

お城みたいな家の前 施しを乞う男の子
“お腹が空いて寒いのです どうか私にお恵みを”
8月の冬の最中(さなか)のこの雨は(*) か弱い孤児の肌を刺す    
(*)アルゼンチンなど南半球の7~8月は冬の最中
この夜ここでは舞踏会 華やぐ宴に集い来る
富める男とその連れの とても綺麗な女たち
襤褸(ぼろ)を纏(まと)った天使のような 金髪の智天使ケルビム思わせる
哀れな子には目もくれず 心冷たく歩み去る

パンのかけらの硬いのを 苦い心で噛みながら
哀しみこめて繰り返す “どうか小銭のお恵みを”
耳をつんざく樂の音は この子の胸には鞭のよう

通りがかったもうひとり 世間を知った年老いた
物乞いの術(すべ)を心得た
この子に心動かされ 酒臭い息で語るのは
こんな言葉でありました
 
“華やぐ宴のある場所で 物乞いするなど無駄なこと 
浮かれ楽しむ人たちに 苦しみの判る筈も無い 
善い人や 憐憫(あわれみ)を知る人びとは みなが悲しむ墓場とか 
教会にこそ居るものだ”
“今夜のここに集うのは 金持ちばかりなのだから
お前に言って聞かせよう こんなところに居ても無駄
早くここから離れなよ”
“今日は誰にも見向きもされぬ お前にはほらこれやるよ
この小銭でもなあお前 パン買う足しになるだろう”
邦訳:大澤 寛
カトリックの世界では貧しい人たちでも、より貧しい人たちに施しをするのだろう。過去にそうした施しをすることが出来なかった人たちが、豊かになってからそれを悔いて改めて施しをするテーマもタンゴには多い。「Chiquilín de Bachín」(バチンの少年)「El bazar de los juguetes」など。