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「Garúa」(氷雨)
Letra : Enrique Cadícamo (1900-99)
Música : Aníbal Troilo (1914-75)
なんて退屈な寒い夜だろう
風は奇妙(おかし)な嘆きを運んで来る
夜は 暗闇を集めた穴みたいだ
その暗闇に向かって ゆっくりと俺は歩いて行く
そして氷雨が勢いを強めて俺の心に棘を刺す
こんなに寒くて 俺に似た夜に
俺はいつも 同じことばかり思い
奈落の闇に沈むのだ
あの娘(こ)の面影を消したい 捨てたい
忘れたいと 思うけれど
余計に思いだしてしまう
氷雨よ
悲しみに沈んで 苦しむ俺の心が
お前の氷るような冷たさを感じながら
独り 淋しく 歩道を通って行く
あの娘(こ)は俺を忘れ
今 俺の心に穴を開けたのだ
彷徨いながら
暗闇の中の子鬼のように
俺の心はあの娘(こ)を探し 呼び続ける
氷雨よ
淋しさに 空までが 泣き出したぜ
なんて退屈な寒い夜だろう
角を曲がる人影も無い
通りのアスファルトを
消えそうな街灯の光が照らしている
俺はカードの捨て札のように
いつも独り 離れて 思いだしながら歩く
ずぶ濡れの 冷えた 俺の心の水溜りに
雨は滴り落ちる
そして 俺のこの悩みを嘲りながら
風は今も 俺を押しながら
吹き過ぎて行く
邦訳:大澤 寛
Hastío: 1.(食物への)嫌悪感、 むかつき・吐き気 2.退屈=飽き飽きすること
Púa : とげ、針 (弦楽器の)爪・ピック
Abismarse : + en ~ に耽る、 (奈落・深淵に)落ちる
Transido : (格式)+ de苦しむ、 ぐったりしている
Tapera : 廃墟・廃屋・廃村、 (ル)落ち込んだ気分
Gotera : 雨漏り(のしている場所)、水漏れ
Mortecino : 活気の無い、 消えそうな、弱い、おぼろげな