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「Flor de Lino」 (亜麻の花)1946
Letra : Homero Expósito (1918-87) Música : Héctor Stamponi (1916-97)

あの娘(こ)は 私の唇付けを待ちながら
空しく 夜を摘み取っていた
だけど私は 匂い立つ大地の
大きな唇付けを夢見ていた
亜麻の花よ*            *恋人を亜麻の花=Flor de Lino と呼んでいるもの
何と不思議な運命が
亜麻の花咲く道を塞いだ* *truncar = (一部を)削除する、挫折させる、切り取る・刈り取る
あの娘は あの小道で私を待ちながら
夜を摘み取っていた
とても恥ずかしそうに
新しい服を着た子供のように
どんなに 物事が過ぎて行ったことか
そんな物事が それでも今 執拗(しつこ)く
私の孤独の夜に戻って来る

私は あの娘が花開くのを見た
太陽の恵みのアルゼンチンの野原の亜麻のように
もしあの娘の気持ちが判っていたら
私の小屋*は愛に満ちていただろう             *rancho = (ラ米)粗末な・質素な家、貧民街
私は あの娘が花開くのを見た だけど或る日
私からあの娘を連れ去った黒い*足跡 *mandinga = (ラ米)黒人の、 悪魔・いたずらっ子、老練な・老獪な・
亜麻の花は去(い)ってしまった                           ずるい人間
そして今 野原は花盛り
何たることだ!* 俺にはあの娘の愛が無い                *malhaya = くそ! こん畜生!

木の扉がある そこを通って思い出が
家*に戻って来る                  *querencia = (文語)家・故郷
あの娘を愛することをしなかった後悔が
いつもその扉を開けているから
亜麻の花よ
あの星に お前が見える
私の孤独の足跡を
照らしてくれる星に

あの娘は 私を待ちながら 夜を摘み取っていた
私が今 あの娘を待つように
あの娘は 沢山の希望を持って
貧しいガウチョが 村に辿り着くように
もう居ない花よ お前の思い出は
それでもなお 執拗(しつこ)く追いかけて来る
私の孤独の夜を

邦訳:大澤 寛