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「Farol」 (街灯)
Letra : Homero Expósito (1918-87) Música : Virgilio Expósito (1924-97)

お銭(かね)の苦労を抱える家が
沢山ある下町に
タンゴみたいに歌われる伝説がある
人情味のある下町の
そこでは遠くから時計が
午前(あさ)の2時を告げる
働きに出る者たちの下町
街灯が一つと想い出が詰まった町角

街灯よ
今は 沢山の物が見える
街灯よ
もう昔と同じではなくなった
影が
お前に見られるのを避けて
俺の住む短い通り*の半分を   *cortada = calle corta y generalmente angosta (短くて大抵は狭い通り)
余計にもの悲しいものにする
お前の灯りは
タンゴをポケットに入れて
光りと輝きを失くして行った
そして今は十字架になった

その下町には
夥しい数の働く者たちの夢を詰めた空が
残っている
そこでは風がカリエゴ*の親しみやすい詩を                           *下記注参照
口ずさんでいる
そして遠くで時計が 午前(あさ)の2時を告げる時
下町は 街灯に繰り返し語りかけながら 眠る

街灯よ と

邦訳:大澤 寛
(注)
カリエゴ:Evaristo Carriego (1883-1912)
 詩人。タンゴの作詞はひとつもしなかったが、下町の日常生活を描く詩の創始者としてタンゴの歴史の中に地歩を築いている。
この意味で、1930年に彼の伝記を書いたボルヘス(Jorge Luis Borges)の指摘によれば、“ブエノスアイレスの貧しい下町を観察する第一人者、即ち発見者・発明者”であった。カリエゴは1908年に“異端のミサ”(Misas herejes)を発表、そして死後1年経ってバルセローナで発見された“下町の歌”(Canción del barrio)がある。カリエゴの作品は多くのタンゴの作詞家たちに影響を与えたが、中でもオメロ・マンシ(Homero Manzi 1907-1951)に対しては、マンシが作詞したタンゴ“Viejo ciego”(盲目の老人)や“El último organito”(最後のオルガニート)が、この道の先輩カリエゴに直接捧げる形の献辞であることに見られるとおり、特別なものがある。(Horacio Salas “El tango, una guía definitiva” p-63 より)