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「Brindis de sangre」(血の乾杯)
Letra : José Ramón Suárez (n/d)
Música : Abel Fleury (1903-58)

鳴きやまない蝉の声 真昼
小屋には繋がれた馬が十匹
その雑貨屋には血と恨みの匂い
理由(わけ)はと言えば 今朝早く
あいつが戻って来ていたのだ 
マリアを拉致(さら)って村を出たあの金髪の男が
先住民の血が混じるクルスは
既に知っていた 恋敵が戻ってくることを

とうとう今日がその日になった
繋がれた鹿毛の馬にクルスは気付く
恋人を乗せて連れ去った馬に
クルスは今もマリアを忘れられずに
思い出の中に包んでいる
静まり返った雑貨屋に 
馬から下りたクルスが入る 
先の尖った木の葉のように

(語り)
俺がマリアの男だ
おい店番、カニャ酒を二杯くれ
   なみなみと注がれた杯を挙げ
   昔の恋敵に向かって
乾杯、お前か俺かどちらかが倒れる
決闘(ナイフ)に乾杯だ
そして間髪を入れず 
手荒な突きが始まる 

突いたり引いたりの応酬(やりとり)があり
着ているポンチョや馬の柵には
どちらのナイフも触りはしない
運命の神が決着をつける
厄介者の金髪が倒れ そしてまもなく息絶える
戦いの済んだ雑貨屋の前では
金髪のガウチョの身体が冷えて行くのに
鹿毛の馬が鼻を寄せる
その傍らで身を起こしつつ 
クルスはなおも自分に問いかける
どうして自分を殺(や)らせなかったのか
死ねば忘れられたのに マリアを

邦訳:大澤 寛