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匿名
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「Balada para un loco」(狂った男へのバラード)
Letra : Horacio Ferrer (1933-2014)
Música : Ástor Piazzolla (1921-92)

(出だしの語り)
 ブエノスアイレスの昼下がりには あの 何と言うのかなあ お前見ただろう?
お前が家を出て アレナーレスを通りかかると いつものことだけど 俺は 街角に お前の中に 木の陰から 突然現れるんだ。不思議な組み合わせの格好だぞ。 終わりから二番目の乞食と 金星へ行く最初の密航者だ。メロンを半分に切って頭にかぶって 縞のシャツは肌に描いたもので 靴下は 足に釘で留めてあるんだ。そして両手には タクシーの空車のランプの旗を持っている。お前 笑ってるな! だけど 俺はお前にしか見えてないんだ。マネキンたちは 俺にウインクしてるし 交通信号は俺には青ばかりだし 角の果物屋のオレンジが俺に花を投げかける。お前 来いよ!俺は 半分踊りながら そして半分飛びながら 頭にかぶったメロンを取って お前に挨拶する。お前にタクシーの旗を一本やるよ。そしてお前に言うんだ。

(歌)
 俺は狂ってる! 狂ってる! 狂ってる! それは判ってるんだ。お前 見えないか?
カジャオ通りを月が転がってるのが。宇宙飛行士と子供たちが ワルツをコーラスで歌いながら 俺の周りで踊ってるのが。踊れよ! 来いよ! 飛べよ! 俺は狂ってる! 狂ってる! 狂ってる! それは判ってるんだ。俺は 雀の巣から見てるんだ ブエノスアイレスを 悲しそうなお前を。来いよ! 飛べよ! 感じて見ろよ!

 狂ってる! 狂ってる! 狂ってる!
お前のブエノスアイレスの静かな夜になると 俺は お前のベッドのシーツの端っこから
一篇の詩と トロンボーンをひとつ持って お前の心を目覚めさせようと やって来る。
狂ってる! 狂ってる! 狂ってる!
俺は 頭の可笑しい曲芸師みたいに お前のはだけた胸の深い淵に飛び込むんだ。お前の心が 自由になってうっとりするのが判るまで。
すぐにお前も判るだろう!

(語り)
 飛び出そうよ 可愛いお前 俺の幻のスーパーカーに乗れよ。エンジンには燕を乗せて
軒ひさしを走り回ろう。ビエイテス通りから 愛を発明した気違いどもが 俺たちに喝采しているぜ “万歳! 万歳!”って。そして天使がひとり 兵隊がひとり 女の子がひとり 俺たちに踊りやすいワルツをくれる。素敵な人たちが 俺たちに挨拶しに出て来る。
狂ってるけど 俺はお前のものだよ どう言えばいいのかなあ! 
俺は 微笑みながら鐘を鳴らし 最後にお前を見て 低い声で歌うんだ。

 こんなに狂ってる 狂ってる俺を愛してくれ 二つの愛を解放してくれ 生まれ変わるための完全に狂った魔術を 二人でやってみるんだから。
来いよ! 飛べよ! 来いよ! タラララララー!

万歳! 万歳! 万歳!
気違いたち! 気違いたち! 気違いたち!
みんな狂ってる!
狂った女と 狂った俺と!
注:cornisa は建築用語で“軒ひさし”“雪ひさし”“コーニス”

邦訳:大澤 寛

Horacio Ferrer とástor Piazzola というコンビ(binomio)の1969年の作品。ややシュールな演劇的な傾向だが語りの部分も素晴らしい。多くの歌手が挑戦する対象にしている。