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「Adiós, Nonino」 (1959)(さよなら 父さん)
Letra : Eladia Blázquez (1931-2005)
Música : Ástor Piazzolla (1921-92)
瞬く星のひとつから
俺に“来いよ”という合図
永遠の光に導かれて
呼ばれたら 俺は行く
あの男の子を探しに                        
死んで俺から離れて行った子
俺は親父もその子も失くした
“ここへ来いよ” と言われたら
俺は生まれ変わるだろう 何故なら、、、
注:ese niño “あの男の子” は語り手=ピアソラを指す
注:Nonino はイタリア語で “祖父” (スペイン語のabuelo) のことだがピアソラは父親を “Nonino” という愛称で呼んでいた。

俺は 親父が粘土をこねて作った国に根付いた根っこなのだから
俺は 俺という種を蒔いてくれた あのイタリア人の血と皮膚なのだから   
さよなら 父さん  あなたの居ない道のりはひどく長いだろう
苦しさ 悲しみ  テーブルとパンと
そして俺の訣別(わかれ)  ¡ああ 俺の訣別だ! あなたの愛と あなたのタバコと あなたの酒との
¿誰なのだ?  父さん あなた連れ去り 俺から 情け容赦なく 半身を奪ったのは
多分 いつか或る日 俺も後ろを振り向きながら
あなたと同じように “さよなら これが最後だ” と言うだろう

注:el tano aquel “あのイタリア人” は父親のこと。tano はイタリア人=italiano の愛称 (蔑称であることもある)。
ピアソラの家系はイタリア人。

(語り)
そして今 俺の親父は一本の木になり
光になり 風になり 川になった
そして俺は滝の流れになって 親父に取って代わるのだ
親父の挑戦(たたかい)を 俺の中に受け継いで
俺は親父の血を受け継ぐ 親父が見える
そして俺の声には 紛れもない親父の木霊が聞こえる
あの時 虚ろに響いた声
俺が親父に さよなら  さよなら父さん と言った時
注:sonar al hueco は “虚ろに響く”
俺は 親父が粘土をこねて作った国に生えた根なのだから
俺は 俺に種を蒔いてくれた あのイタリア人の血と肌なのだから
さよなら 父さん 俺の行く道に あなたの太陽を残してくれた
怯えを知らぬあなたの情熱を あなたの愛の信念を
そしてあの熱意   ¡ああ あなたのあの熱意! 行く道に希望の種を蒔くための
俺は あなたの甘い蜜 そして今 あなたを思って泣く涙 父さん
多分 俺の命の糸が切れる日に
あなたに会って 知るだろう 終わりなんて無いことを

注:panal は “甘い蜜” と訳したが “蜂が蜜を作る場所” のこと。比喩的に “蜜” “砂糖菓子” さらに “可愛がる対象” “寵愛の対象” を指す。
注:gota de sal は “涙” のこと.
邦訳:大澤 寛

Acudir : (呼ばれて・いるべきところに)行く・駆けつける
Amasar : こねる・練る  amasar el pan
Arcilla : 粘土
Suplantar : (不当に)~に取って代わる・なりすます
Ardor : calor, pasión
Sonar al hueco : 虚ろに響く