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「Acquaforte」(銅版画)(1931)
Letra : Juan Carlos Marmbio Catán (1895-1973)
Música : Horacio Pettorosi (1896-1960)

真夜中だ キャバレーが目を覚ます
女と花とシャンパンに埋もれて
タンゴのリズムに乗って暮すものたちの
終わりのない そして悲しい祭りが始まる
40年*の人生が 俺を縛り付けている *cuarenta años は必ずしもきっちりと数えた40年ではない。
髪は白く 心は老いて cuarenta には“多くの”の意味がある。(注1)
昔憧れて見たものを 今では苦しんで見る

唇付けに浸る哀れな酒場の女たちが
驚いて不審げに俺を見る
もう判らないのだ
孤独な 老いた 目に輝きのない俺のことが
人生は過ぎて行く

ルルーをシャンパンで酔わせるのに
金を費ういやらしい老人が 
パンをもう一切れ買えるように
給料を上げてくれと頼む使用人には断った
そして俺が若い頃に“モンマルトルの女王”だった
あの惨めな花売りの老女が 
微笑みながら俺に菫を勧めてくれる
多分俺の孤独が癒されるように

俺は人生を考える
母親は嘆き 子供たちは彷徨(うろつ)き歩く
住む場所も食べるものも無く
“ラ・プレンサ*”を売って2ペソを稼ぐ           *La Prensa : 新聞の名
みんななんて悲しいことか
泣きたくなる
邦訳:大澤 寛

注1:cuarenta años me encadenan “40年の歳月=人生が俺を縛り付けている”という表現での“40年”はタンゴの歌詞によく出てくる。必ずしもきっちり40年の歳月や年齢を指すのではなく漠然と“長い年月”を意味していることが多い。タイトルの邦訳は「銅版画」(エッチング)として置いたが歌詞の内容は“昔の女”のカテゴリー。しかし昔の女との巡り合いだけではない。時代は1929年の世界恐慌後の不景気の頃。歌詞の最後の部分に不景気の影響を直に受ける庶民の嘆きが歌われる。

注2 : この曲は1930-31年頃に Marambio Catán と Horacio Pettorosi がイタリアのミラノにあるキャバレー Excelsior で出会って作られたものだという。当時のムソリーニ政権はファシズムに反対する勢力・思想を排除していた。この曲も“退廃的”だとされたのだろう。当局に対しては“アルゼンチンタンゴ”なのだという説明・釈明を行ったらしい。しかしタイトルはイタリア語のままでテノール歌手の Gino Franci によってデビューされている。
(Eduardo Romano 編「Las Letras del Tango」などから)

Sobre Marambio Catan y “Acquaforte” . (Radiotango Rosario から)
Enrique Cadicamo ha escrito sobre la forma en que el guitarrista Horacio Pettorossi habría vendido en Paris su tango “Bandoneón arrabalero” por 1.000 francos a Juan Bautista “Bachicha” Deambrogio , quien a su vez confió los versos a Pascual Contursi .   Idéntica situación se habría producido con Juan Carlos Marambio Catan a quien el guitarrista le permitió coparticipar en la autoria de su célebre obra “Acquaforte” en la que Marambio nunca intervino .     
ギタリストのH.Pettorosiが自作のタンゴ ”Bandoneón arrabalero” をパリで ”Bachicha” Deambrogio に1000フランで売りつけ、Deambrogio は作詩を Pascual Contursi の手にゆだねたことをE.Cadícamo が書いている。 似たようなことが「Acquaforte」に関してもJ.C.Marambio Catán とH.Pettorosi の間に起きていたのだろう。PettorossiがCatánにこの作品の共作者(*共同作曲者)になろうと持ちかけたがMarambio Catán は決してその話には乗らなかった。
*(注)恐らく“共同作曲者にするから幾らか払え”という話だったのではないか?
なお「Cien tangos fundamentales」(Óscar del Priore + Irene Amchástegui)の「Bandoneón arrabalero」の項にCadícamo の話として紹介されている。

testa : 頭・額  頭脳・知力
guita : (ル) dinero, centavo