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「A la luz del candil」 (街灯(ランプ)の灯影で)(1927)
Letra : Julio Navarrine Letra : Carlos Vicente Geroni Flores
失礼しやす 署長さん
ひでえ恰好でやって来やして
あっしは他所(よそ)もんで ロサリオに流れ着いたんでさあ
紐で縛って 大変なものを持っておりやす
ひょっとして署長さん あっしをずるい奴だと思ってやしませんか
あっしは 根っからのガウチョでさあ
酔っ払いでも 悪党でもありやせん
署長さん あっしは罪人なんでさあ

お巡査(まわり)さん あっしを捕まえて
縄をかけてくだせえ
あっしは罪人でも
神さまには許して貰えるでやんしょう

あっしは善良(おとな)しいクリオージョ*でやんした            * criollo:中南米生まれのヨーロッパ人
名前はアルベルト・アレーナスと言いやす
署長さん あいつらはあっしを裏切りやがったんでさあ
そんであっしは 二人とも殺っちまったんだ
あっしの女(すけ)は尻軽で
友達(だちこう)はしみったれた野郎だった
あっしが他所へ行ってた時に
あの不実な女があっしを馬鹿(こけ)にしやがった
その証拠は 
その証拠は袋に詰めて持って来やした
女の髪の毛と 男の心臓を

待ってくだせえ お巡査(まわり)さん あっしは暴れたりしねえから
世間(みんな)に本当のことを知って貰いてえんだ
その夜は暗かった 狼の喉の中みてえに
見てたのは ただひとつ 街灯(ランプ)の光だけでやんした
全部が 殆んど何も無しに ただ暗い中で抱き合ってやがった
後はその二人が倒れて あっしが舌打ちをして
そんで 署長さん 驚かないでくだせえ
あっしのナイフの先に 死体が二つあったんでさあ
お巡査(まわり)さん あっしを捕まえて
縄をかけてくだせえ
あっしは罪人でも
神さまには許して貰えるでやんしょう

邦訳:大澤 寛

 この歌詞には言葉の “d” の音を脱落させている箇所がある。話者=主人公のやくざ風というか都会的教養の低さを表す表現。 順に挙げれば entrazao = entrazado, entripao = entripado, boca’e lobo = boca de lobo
さらに bueno を gueno としている。  印刷時にウムラウト記号を付ける

entrazado = trazado (チリ、アルゼンチンで)
traza = 2.容貌・外観、  様子・気配
         con bien o mal se aplica a la persona de buena o mala traza
entripado : (ラ米)= (ぐっと堪えた)怒り・憤怒、 隠しごと
entripar(ラ米)= 怒らせる・不快にさせる
matrero : 1.ずるい・抜け目の無い・悪賢い  2.(ラ米)逃走中の、 放浪の
a carta cabal = 完全に・完全な、完璧に・完璧な
           un hombre honrado a carta cabal 根っからの正直者
cuatrero : 1.馬・牛泥棒  2.(ラ米)悪党、 出鱈目をいう人間、  裏切りの・不実な
sotreta = m y f 1.老馬・駄馬  2.老いぼれ、 ろくでなし、役立たず
retobarse = 反抗する、 文句を言う、 強情を張る
facón : (ガウチョが携行する)短刀・匕首