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匿名
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「Viejo rincón」(1925)(古い町の片隅)
Letra : Roberto Cayol (1887-1927)         
Música : Raúl de los Hoyos (1898-1989)

俺が初めてタンゴを知った頃の古い町の片隅
そこであいつが俺を好きだと告げた
今も俺の心に残る幾夜もの狂ったような騒ぎを
隠してくれた部屋
ああ いかがわしいヒモたちがいる横町
あいつらも昔はバンドネオンを弾いていたな
今は何処にある? 俺の隠れ家は
俺の愛と あいつの裏切りの証人(あかし)は

今 俺は捨てた街区(まち)へ戻って来て
ひと眼見て悲しくなる
優しいお袋はもう居ない
俺の家は廃墟(こわれて) 何もかも無くなった
気の狂った俺は
あいつに人生の全てを捧げた
神を信じる心もボロボロになった
そして只 廃墟(こわれたもの)が俺の中で息づいている

タンゴが一つ 浮き沈みして
ひとつの愛に命を与える
タンゴが一つ 浮き沈みして
俺たちは裏切られる

お前が俺に顔を埋めて
sentada を踊る時 俺は感じる
タンゴの情熱の中で
俺の血が燃え上がって行くのを           
いかがわしいヒモたちがいる古い町の片隅
あいつらも昔はバンドネオンを弾いていたな
今は何処にある? 俺の隠れ家は
俺が身を滅ぼしたあの貧しい小部屋は
バンドネオンから歌へ
酒場の舞台でバイオリンが響く
そして あの角を曲がったところの小部屋では
ヒモたちが 誘いかけるようなタンゴをうまく使っている
俺は何のために夢を見るのか? 何のために昔の恋の数々のこの横町に戻って来たのか
あの女たちの性悪さを 笑い声を 愛撫を 気まぐれな愛を 思い出すためか

タンゴが一つ 浮き沈みして
ひとつの愛に命を与える
タンゴが一つ 浮き沈みして
俺たちは裏切られる

邦訳:大澤 寛