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「Por una cabeza」 (首の差で)
Letra : Alfredo Le Pera (1904-35)
Música : Carlos Gardel (1890-1935)

por una cabeza (首の差で)は競馬用語。 しかしここでは賭け事の対象としての競馬(とその馬)だけではなく、愛、情事の対象としての女性に “首ったけ” であることが表現されている。

首の差だったなあ
よく躾けられた*1若駒*2だが    *1 noble : (動物が人間に)忠実な *2 potrillo : 通常3歳以下の馬を指す
まさにゴールへ向かう直線で
息を抜いてしまう
帰り道で俺に話しかけるみたいだ
忘れるんじゃないよ さあ
あんたも判ってるだろう 
賭けはやるもんじゃないって

俺は首ったけなんだ
或る日 惚れちまった*                   *metejón 1.情事・火遊び 2.賭け事で大きく負けること
男たらしのふざけたあの女に
あいつは笑いながら
嘘っぱちの愛を誓って
俺の愛の全てを
火あぶりにしやがる

俺は首ったけなんだ
とち狂っているのさ
あいつの唇付けは
悲しみを消してくれるし
苦しさを和らげてくれる
俺は首ったけなんだ
あいつが俺を捨てるなら
俺の命なんて 幾らでも
投げ出していい
何のために生きるかだ

どれほど俺は騙されたことか
あの女に
俺は何度誓ったことか
もう しつこく追いかけないと
だけど もし通りすがりで
眼差しが俺を刺すなら
もういちど あの燃える唇に
唇付けしたいものだ

競馬は もういいや
賭けは終わったんだ
苛々する結末を
再た見ることはしないさ
だけど もし良い馬*が居て            *pingo : (愛情を籠めて)馬=友、仲間、道連れとしての馬
今度の日曜に そいつが本命*だとしたら       *fija : 確実に起きることの意だが、競馬用語として “本命”
俺は そいつに有り金全部を賭けるぞ
他に何が出来る?* *¿Qué le voy a hacer? 脚注参照

*¿Qué le voy a hacer? 文字どおりに訳せば “私は彼に何をしようか” だが、ここでは前の行の “有り金全部を賭けるぞ” を受けて “そうすることの他に何をするというんだ” ¿Qué otra cosa le voy a hacer? という意味に解する。

邦訳:大澤 寛

noble : (動物が人間に対して)忠実な
potrillo : (3歳以下の)仔馬
metejón : metedura : apasionamiento amoroso // pérdida importante en el juego
hoguera : 焚き火、 火刑・火あぶり
timba : 賭け事、賭け事の勝負  賭博場
pingo : caballo (en voz afectiva), caballo, como compañero, amigo