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匿名
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「Organito de la tarde」(黄昏のオルガニート)
Letra : José González Castillo (1885-1937)
Música : Cátulo Castillo (1906-75)

哀れな老人のゆっくりした歩みに合わせて
飾りガラスの壊れた手回しオルガンが
黄昏時の下町に 
音楽(うた)を届ける
オルガンの取(ハン)手(ドル)を回しながら
足の悪い男が一人 その後をついて行く
固い木の義足が
タンゴのリズムを刻んでいる

その音楽(うた)の調子には
何か不思議な感じがあって
町の人たち皆(みんな)の心に
沁みわたるのだ
そして その歩みが呼び醒まして行く
思い出が多過ぎて
人たちの心を
ひどく泣きたい気持ちで埋めるのだ

その歌の
悲しい調子に合わせて
手回しオルガンのゆっくりした歩みが続く
その歩みに合わせて まるで
思い出の辛さと 落日の痛みを
増やす種を蒔くかのように
そして通り過ぎて行く
そのタンゴの音(ね)に合わせて まるで
その歌を終わらせる夜を
探し求めるかのように

老女(おんな)たちは語る 全てを知っているから
ピアノの音につられて 喋りに集まって来たのだ
あの老人には 娘がいたのだと
その娘は 町の華だったのだと
あの足の悪い男はその恋人だったのだと
並ぶもののない踊り手だったのだと
ミロンガでは あの娘とあのタンゴを踊って
喝采を浴びたのだと

ところが或る日 踊り手で 好い男で 喧嘩好きな
他所者(よそもの)がひとり現れて 
或るミロンガで
恋人だった男から その娘と 片方の足を奪ったのだと
その時から 娘の父親の老人と 恋人だった男は
薄情な娘を探して
あの運命のタンゴのリズムに合わせて
町を探し回っているのだと

邦訳:大澤 寛
この曲はSebastián Piana に捧げられたものだと言う。 劇場での初演はAzucena Maisani によるもので1925年にSan Martín 劇場で行われた。(Eduardo Romano 「Las letras del tango」 Antología Cronológica 1900-80からA)