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返信先: 大澤寛のタンゴ訳詞集

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匿名
無効

「Mi taza de café」 (私のコーヒーカップ)
Letra : Homero Manzi (1907-51)
Música : Alfredo Malerba (1909-94)

ガラス窓の向こうに 午後が終わろうとしている
コーヒーカップを手に 私は物を思う
想い出が 栄光が 悩みが
そして 過ぎ去った時の光りと影が 行列を作る
通りに人影は無くて空っぽだ 私の行く末のように
昔の友を 愛を 諍いを
人生の幻を 出会った嘘を
コーヒーカップを手に 私は思い出す

街よ 或る日私は 楽しくお前を識った
栄光への詩と夢を持って来た
下宿の部屋の高みから お前を眺めた
私の心は 生きることに幻覚(めまい)を感じた
私の故郷は遠かったし 遥かかなたに消えていた
お前の夜は近かったし お前の夜は強かった
お前の通りに連れて行かれて お前の輝きに騙された
誰のせいでもなかった 私の他の誰のせいでも

午後の風が カーテンを揺らす
思い出の手が 私の心を締め付ける
秋の憂いが 靄(もや)を深くして
私の悲しみの割れ目に忍び込む
無駄なペシミズムだ 悲しがるのは
いつも昔を思って歩きまわる癖は
過去の幽霊が 戻って来て居座る
午後に私がコーヒーカップを手にする時

邦訳:大澤 寛